やわらかな未来の考古学 — Soft Archaeologies of the Future

出展作家:
岸裕真、熊倉涼子、小林健太、平田尚也

会期:2025年11月25日(火)-2025年12月13日(土)
レセプション:2025年11月25日(火) 18:00-20:00

会場:CADAN大手町
住所:〒100-0004 東京都千代田区大手町 2 丁目 6-3 銭瓶町ビルディング 1 階
営業時間:火〜土 12-19 時 展覧会最終日-17 時
定休日:日・月・祝
MAP

企画:Satoko Oe Contemporary(東京)、WAITINGROOM(東京)
協力:√K Contemporary

CADAN大手町では、2025年11月25日(火)から12月13日(土)まで、Satoko Oe ContemporaryとWAITINGROOMによる企画展『やわらかな未来の考古学 — Soft Archaeologies of the Future』を開催いたします。(協力:√K Contemporary)

私たちはいま、テクノロジーという「機械」と、身体や感覚、記憶といった「人間的なもの」が、これまで以上に複雑に結びついた時代を生きています。日々触れているスクリーンやネットワークは、記録と忘却、過去と未来を横断しながら、新たな「遺物」や「痕跡」を生み出し続けています。そこでは、硬質に思えるテクノロジーの層が、人間のやわらかな感覚とまざり合い、未来の考古学とも呼べるような、新しい観察の方法が立ち上がります。

本展では、岸裕真、小林健太、平田尚也、熊倉涼子の4名が、それぞれの視点と技法を通して、テクノロジーとイメージの「層」を掘り起こし、情報・身体・視覚・記憶のあいだに潜む微細な断片を浮かび上がらせます。

彼らの作品は、デジタルの冷たさと有機的なぬくもり、記録媒体の堅牢さと人間の感覚の儚さとが交錯する領域に、繊細な揺らぎと新たな物語の気配をもたらします。それは、未来からの遺構を発掘するかのように、テクノロジーと人間の関係を再考し、知覚や存在の在り方を更新しようとする試みです。

作家プロフィール

岸裕真 Yuma Kishi
1993年生まれ。慶應義塾大学理工学部電気電子工学科、東京大学大学院工学系研究科(電気系工学専攻)を経て、東京藝術大学大学院美術研究科(先端芸術表現専攻)修了。人工知能を「道具」ではなく「Alien Intelligence(エイリアンの知性)」と捉え、人間とAIの協働による新たな表現の可能性を探求しています。自ら開発したAIモデル「MaryGPT」を制作や展示構成に組み込み、絵画、彫刻、インスタレーションなど多様な手法を横断しながら、美術史的モチーフや文化的コードを再解釈する実践を展開するアーティストです。近年の個展に、「Oracle Womb」(√K Contemporary、東京、2025)、「The Frankenstein Papers」(DIESEL ART GALLERY、東京、2023)など。グループ展に、「DXP2」(金沢21世紀美術館、石川、2024)など。

©Yuma Kishi 岸裕真、The Brides (divided and rebuilt)、2020、2チャンネル・ビデオインスタレーション、ステレオ音声、ループ

熊倉涼子 Ryoko Kumakura
1991年東京生まれ。2014年に多摩美術大学美術学部絵画学科油画専攻卒業。歴史の中で人々が世界を理解しようとする過程で生まれたイメージを元に、絵画を制作。あるひとつの事柄に対して多面的な視点で図像を集め、それを元に作品を構成している。そのようにして同じものに関する性質の異なるイメージを等価に扱うと共に、写実的な描写や落書きのような線などの複数の描写法を混ぜたり、画中画やだまし絵の手法を用いたりして描くことで、視覚的にも揺さぶりをかけ、目に見えるものとは何かを問う作品を制作している。
主な個展に、「Tange, movebis」(三越コンテンポラリーギャラリー・2024)、「汀の椰子、対蹠のグラスフロート」(Quadrivium Ostium・2024)、「Pseudomer」(RED AND BLUE GALLERY・2024)、グループ展に「二人展:熊倉涼子、平田尚也」(Satoko Oe Contemporary・2025)、「人物と静物」(ギャラリー小柳・2024)など。2021年「第34回ホルベイン・スカラシップ」奨学生、2019年「群馬青年ビエンナーレ」に入選。

熊倉涼子, Strangers, 2024, キャンバスに油彩, 53×45.5cm

小林 健太 Kenta Cobayashi
1992年生まれ。2016年東京造形大学造形学部美術学科絵画専攻卒業。幼少期からMacintoshやプリクラなどのGUI環境に親しみ、自身を「GUIネイティブ」と位置づける小林は、写真とデジタル編集を通じて「真を写すとは何か?」という問いを追求してきました。代表作《#smudge》シリーズでは、Photoshopの指先ツールを用いてピクセルを引き延ばし、「編集行為そのもの」を視覚表現として確立。近年では、写真の記録性とAIの生成性の境界を横断しながら、現代におけるイメージの流動性と人間存在の在り方を問う実践を続けています。
近年の個展に『#copycat』(WAITINGROOM、東京、2025)、『EDGE』(アニエスベー ギャラリー ブティック、東京、2022)、『Live in Fluctuations』(Little Big Man Gallery、ロサンゼルス、2020)など。

小林健太、flowers、2025、レンチキュラー、スチール、750 × 500 × 45 mm

平田尚也 Naoya HIRATA
1991年長野県生まれ。2014年に武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒業。
空間、形態、物理性をテーマに、インターネット空間で収集した既成の3Dモデルや画像などを素材とし、主にアッサンブラージュ(寄せ集め)の手法でPCの仮想空間に構築した彫刻作品を現実に投影し、発表しています。仮像を用いることによって新たな秩序の中で存在するもう一つのリアリティを体現し、あり得るかもしれない世界の別バージョンをいくつも試すことによって現実の事物間の関係性を問い直す。近年では、アバターの身体的フィードバックに加えて、VRSNS上での存在基盤にも注目しています。
主な個展に、「仮現の反射(Reflections of Bric-a-Bracs)」(資生堂ギャラリー2025)、「Moonlit night horn」(Satoko Oe Contemporary・2024)、「さかしま」(Satoko Oe Contemporary・2021)、など。2019年「群馬青年ビエンナーレ2019」ガトーフェスタ ハラダ賞受賞。2022年パブリックコレクション 愛知県美術館。

平田尚也, 十把一絡げ #4 (Shell Flute), 2025, 3D print / PLA plastic, 45x100x32cm, 撮影:加藤健

Transcending Borders 越境

10 月 31 日(金)、新スペース「CADAN 大手町」が始動します。記念すべき第一回目の展覧会は、関⻄を拠点にする4軒のギャラリーがそれぞれの視点から「越境」をテーマに選んだ 8 人のアーティストの作品を紹介します。

出展作家
井上廣子、笠原恵実子、黒田アキ、谷本真理
福岡道雄、藤安淳、藤原康博、松谷武判

企画
Yoshiaki Inoue Gallery(大阪)The Third Gallery Aya(大阪)
MORI YU GALLERY(京都)FINCH ARTS(京都)

会期:2025年 10月 31日(金)〜11月 21日(金)

オープニングレセプション:10 月 31 日(金)18:00-20:00
*18:30 より出展ギャラリー及び一部出展作家よりご挨拶がございます。ぜひご参加ください。
*隣接するスペース「YAU CENTER ぜにがめ」も同日オープニングイベントを実施します。合わせてご参加ください。

展覧会趣旨
「Transcending Borders 越境」は、国や地域といった地理的な境界を超えることにとどまらず、素材や技法、世代、精神性、文化的背景といった多様な枠組みを横断する創造的な行為としての「越境」に焦点を当てる展覧会です。世代や地域、文化の枠を超えて交錯する多様な実践を通じて、「境界を超える」アートの力を来場者に体感していただくことを目指します。

会場:CADAN 大手町
住所:〒100-0004 東京都千代田区大手町 2 丁目 6-3 銭瓶町ビルディング 1 階
営業時間:火〜土 12-19 時 展覧会最終日-17 時
定休日:日・月・祝
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作家プロフィール

井上廣子 Hiroko Inoue

井上廣⼦ 《Being in the Face #3_Yaroslava (Ukraine)》 2025, archival pigment print, wax, 22.5×16cm, Courtesy of Yoshiaki Inoue Gallery

大阪府生まれ。大学時代に文化人類学を学び、沖縄で出会った琉球藍の染色文化に惹かれ、1974〜75 年に現地で染織を学ぶ。1995 年の阪神淡路大震災を契機に、社会的な視点を取り入れた制作へと転換し、孤立や隔離をテーマとした《不在 Absence》(1997–2001)で注目を集める。1998 年、大阪トリエンナーレで特別賞を受賞し、以後はドイツと日本を拠点に国際的に活動。2023〜24 年にはベルリンで難⺠女性たちと出会い、信頼関係のもとに撮影した肖像シリーズ《Being in the face》を制作。人間の尊厳や境界の問題に光を当て続けている。 [presented by Yoshiaki Inoue Gallery]

 


笠原恵実子 Emiko Kasahara

©︎Kasahara Emiko, Plaids-brown-#6, 2013-2014, False eyelashes on board, 1020 x 828 x 328mm, Courtesy of Yoshiko Isshiki Office and The Third Gallery Aya

1988 年多摩美術大学大学院美術研究科修了。彫刻、オブジェクト、写真、映像、パフォーマンスなどのメディアを用い、女性や身体、性差といったテーマから、宗教性や制度、植⺠地主義といった社会構造を問う表現を展開、主なプロジェクトに、85 か国の教会の献金箱を記録した《OFFERING》や、戦時中の陶器製手榴弾を扱った《K1001K》などがある。第 3 回光州ビエンナーレ(2000)、横浜トリエンナーレ(2001・2014)、シドニー・ビエンナーレ(2004)、PARASOPHIA: 京都国際現代芸術祭(2015)など国内外で発表、収蔵先に東京都現代美術館、京都国立近代美術館、栃木県立美術館、クイーンズランドアートギャラリー(ブリスベン)、バークレー美術館(UC バークレー大学)、フォグアート美術館(ハーバード大学)、カンターアーツセンター(スタンフォード大学)、ドイツ銀行などがある。[presentedby The Third Gallery Aya]

 


黒田アキ Aki Kuroda

黒田アキ 《COSMOGARDEN》 2025, mixed media on canvas, 91×116.7cm, Courtesy of Mori Yu Gallery

1944 年京都生まれ、1970 年よりパリ在住。1980 年パリ国際ビエンナーレ以降、世界各国で個展を開催。1989 年ポンピドー・センターにて展覧(PASSAGE DE LʼHEURE BLEUE),1993 年東京国立近代美術館において個展。翌年、国立国際美術館にて個展開催。1995 年サンパウロ・ビエンナーレ参加。1993 年『パラード』のパリオペラ座の舞台美術を手がける。ヨーロッパ写真美術館にて写真と絵画での個展。建築家リチャード・ロジャース氏との京都府南山城村立小学校のアートワーク,東京ドーム MEETS PORT HALL などのパブリックアート『COSMOGARDEN(宇宙庭園)』を制作(9m のオブジェを制作)。近年は、以前から描き続けてきた人型 figure 作品はもとより、ミノタウロスと自画像を綯い交ぜ
にした Self portrait や宇宙に浮かぶ都市 organic city breaking など荒々しい筆致のペインティングを描くなど、80 歳を超える今尚、絵画とオプジェ、インスタレーションと常にメディアを越境し、変容し続ける希有な作家です。[presented by Mori Yu Gallery]


谷本真理 Mari Tanimoto

谷本真理 《Pansies》 2024, ceramic, φ100×H165 mm, Courtesy of FINCH ARTS

1986 年兵庫県生まれ。2012 年京都市立芸術大学大学院美術研究科彫刻専攻修了。『遊び』や『偶然性』を孕んだ作品を制作。主な個展に、2023 年「デイリー・セラピスト」(NADiff A/P/A/R/T、東京)、「Story Time」(PETER AUGUSTUS 、アメリカ) など。主なグループ展に、2022 年「ON-ものと身体、接点から」(清須市はるひ美術館、愛知)、2021 年「Slow Culture」(@KCUA、京都)、2011 年「新・陶・宣言」(豊田市美術館、愛知)などがある。[presented by FINCH ARTS]

 

 

 


福岡道雄 Michio Fukuoka

福岡道雄 《私達は本当に怯えなくてもいいのでしょうか(椿)》 2000, 木、FRP, H120 x W30 x D30 cm, Courtesy of FINCH ARTS

1936 年、大阪府堺市に生まれる。生後まもなく中国北京に渡り、終戦後に帰国。中学2年まで滋賀県海津で過ごす。早くから彫刻家を志し 1955 年大阪市立美術研究所彫刻室に入所。1958 年海辺の砂に石膏を流し込んだ「SAND」シリーズを初個展で発表し注目される。以降、反芸術的作品「何もすることがない」、ため息を彫刻素材として捉えた「ピンクバルーン」、黑い箱状のアトリエや周辺の光景、波の表情による彫刻、平面に言葉を刻み込んだ「僕達は本当に怯えなくてもいいのでしょうか」など戦後の日本における現代美術を代表する彫刻家の一人として国内外で多数の展覧会に発表をつづけるが、2005 年、想像力の回帰を自覚し「つくらない彫刻家」となる。主な展覧会として「現代美術の新世代展」(東京国立近代美術館、1966)、「第 16 回サンパウロ・ビエンナーレ」(1981)、「ヨコハマトリエンナーレ 2014」、「福岡道雄 つくらない彫刻家」(国立国際美術館、大阪、2017)などがある。[presented by FINCH ARTS]


藤安淳 Jun Fujiyasu

©︎FUJIYASU Jun, Layered Lights #010, Courtesy of The Third Gallery Aya

東京都出身。同志社大学経済学部卒業。「他者との関係性」をテーマに、自身が双子である事実と向き合いながらアイデンティティを掘り下げ、「見る」とは、あるいは「在る」とはについて考察した作品を、写真を主として発表を続けている。近年の主な展覧会に、「人間より大きな世界へ」榕异(ロンイー)美術館(上海 2021)、「至近距離の宇宙 日本の新進作家 vol.16」東京都写真美術館(東京 2019)、「double trouble/double grins/is it so with/twins」Lothringer13 Halle(ミュンヘン 2019)、個展「かさなるひかり」高松市美術館 1 階図書コーナー(香川 2025)、個展「かさなるひかり」光兎舎(京都 2023)、個展「Sense of Wonder」元淳風小学校(京都 2019)、個展「empathize」The Third Gallery Aya(大阪 2017)などがある。主な作品収蔵先として東京都写真美術館、Shanghai Duolun Museum of Modern Art など。[presented by The Third Gallery Aya]


藤原康博 Yasuhiro Fujiwara

藤原康博 《迷宮〜記憶の稜線を歩く〜》 2025, oil on canvas, 53×45.5cm, Courtesy of Mori Yu Gallery

1968 年三重県生まれ。1992 年多摩美術大学美術学部絵画科油絵専攻卒業。2002 年 Chelsea College of Art and Design MA Fine Art, London 修了。主な展覧会に「Y2 project 藤原康博 -記憶の稜線を歩く」(三重県立美術館柳原義達記念館、2023)、「感覚の領域 今、『経験する』ということ」(国立国際美術館、大阪、2022)、「パラランドスケープ“風景”をめぐる想像力の現在」(三重県立美術館、2019)など。銀座メゾンエルメスや Hermès Hong Kong など国内外のエルメスウィンドウのディスプレイも手掛ける。平面に加え、自身が夢をみた記憶を絵画ではなく箱に閉じ込めてしまうオブジェシリーズや記憶の稜線と題して現実と夢の線引きを越境するかのような絵画を描き続けている。パブリック・コレクションに国立国際美術館(大阪)、三重県立美術館(三重)、Hwajeong Museum(韓国)、Hana bank(韓国)、THYSSEN – BORNEMISZA ART CONTEMPORARY(オーストリア)など。[presented by Mori Yu Gallery]


松谷武判 Takesada Matsutani

松谷武判 《Deux Cercles -09/ 円》 2009, Vinyl adhesive, graphite pencil, Japanese paper on canvas,mounted on plywood board, 21×15cm, Courtesy of Yoshiaki Inoue Gallery

1937 年大阪府生まれ。日本画を学んだのち、1963 年に戦後日本の前衛芸術を牽引した「具体美術協会」に参加。木工用ビニール接着剤(ボンド)の物質性を生かした有機的なレリーフ作品を発表し、膨らみや垂れといった官能的な形態で絵画の可能性を拡張した。1966 年に第 1 回毎日美術コンクールでグランプリを受賞し渡仏、S.W.ヘイターのアトリエ 17 で研鑽を積み、1970 年に版画工房を設立。その後再び絵画制作を開始し、ボンド造形面を鉛筆で黑く塗りつぶす独自技法を確立。絵画と彫刻の境界を越える実験的表現は高く評価され、2017 年ヴェネツィア・ビエンナーレや 2019 年ポンピドゥー・センター個展など、国際的に活躍を続ける。[presented by Yoshiaki Inoue Gallery]