「M・THERESIA・D・G・R・IMP・HU・BO・REG・ARCHID・AVST・DUX・BURG・CO・TYR・1780・X」by Satoko Oe Contemporary × TALION GALLERY

展覧会期間:10月11日(火)〜10月30日(日)
会場:CADAN有楽町
営業時間:火-金 11.00-19.00/土・日 11.00-17.00
定休日:月曜日
企画:Satoko Oe Contemporary × TALION GALLERY

参加アーティスト:大岩雄典、平田尚也、髙柳恵里、White Waters [玉山拓郎、C2D]

展覧会タイトルの文字列は、かつてオーストリアで発行され、奇妙なことに東アフリカとアラビア半島の一部で広く流通し、コーヒー豆の取引などに1970年代まで使用されることになったマリアテレジア銀貨と呼ばれる硬貨に刻印されていたものです。この銀貨は、貨幣が貨幣として流通するために、価値を裏付ける物質や政治体制は必ずしも必要がないということを示す一例とされています。

本展は、2020年にCADAN有楽町で開催された「形式と形状」展での髙柳恵里の作品《裏返し》にまつわる出来事がきっかけとなって企画されました。会期中に訪れた観客の一人から、これは木彫なのかと問われ、会場に居合わせた「形式と形状」展の企画者は驚きました。

観客はなぜ《裏返し》を木彫だろうと思ったのか、また、企画者はなぜその質問に驚愕したのか。このエピソードから様々な問いや解釈を導くことが可能ですが、ここですでに明らかなことの一つは、現代美術において、一人のアーティストが制作にどのような素材や形式を選択するかは、およそ不確定であるということです。

絵画や彫刻といったジャンルの棲み分けが明瞭であった状況と比較すると、そうした共通の参照体系に基づく制作と鑑賞の安定的な場は、現代美術においては久しく存在しないとも言えます。つまり、髙柳恵里も木彫による作品を制作することは十分に有り得るが、それにも関わらず、なぜ《裏返し》は木彫であるはずがないと言えるのかという、新たな問いに私たちは直面することになります。

マリアテレジア銀貨の刻印とともに、本展では、こうした領域的なジャンルに対する脱領域的な作家性の対比を端緒として、目的論的な必然に対する、時間を含み込んだ蓋然性をテーマとするために、貨幣と芸術のアナロジーを梃子として提示されます。貨幣と芸術は、ともに人工物であり価値を保存するとされているにも関わらず、再帰的な性質をもつという点で非常に似通っているとも言えます。つまり、芸術も貨幣も、それがどのようなものであるかは、個別具体的な通用例を見ることでしか分かりません。

言い換えると、経済学が貨幣をつくるのではなく貨幣が経済学をつくるのであり、これと同様に、美学が美術作品をつくるのではなく美術作品が美学を生んでいます。ここではもちろん、貨幣と芸術がどのように異なるのかということも重要な視点となります。商品とお金を交換するとき、貨幣は(芸術が及ぶべくもないほどの)透明な価値の媒体となっています。貨幣はアイコニックな対象として、美術の歴史においても繰り返し制作のモチーフとなってきましたが、本展が主題とする価値の蓋然性は、この種のシンボリズムとはまったく異なるものです。

出展アーティストのメディアは、インスタレーションや彫刻、映像など多様です。髙柳恵里は《裏返し》を再び展示し、インスタレーションとフィクションについて制作・研究する大岩雄典は「可能な行為の空間」を感覚するカードゲームなどを提示します。バーチャルな造形操作を用いる平田尚也は、新たな秩序の中で彫刻を問い直し、玉山拓郎とC2DによるWhite Watersは概念上の支持体として、社会的な二分法の間隙を縫う作品を発表します。

商業の中心地であり、また街作りの一環として国際的な銀行や証券などの金融機関を誘致した歴史をもつ丸ノ内仲通りに面したCADAN有楽町のスペースで、交換と価値の蓋然性を問う本展「M・THERESIA・D・G・R・IMP・HU・BO・REG・ARCHID・AVST・DUX・BURG・CO・TYR・1780・X」は開催されます。どうぞご期待ください。

大岩雄典「無闇」2021, TALION GALLERYでの展示風景, 撮影:屋上

大岩雄典
1993年埼玉県生まれ。東京藝術大学大学院映像研究科博士後期課程在籍。
インスタレーションとフィクションについて制作・研究。時空間とその経験のもつ形を考え、作品やテクストとして提示する。
近年の主な展覧会に「渦中のP」十和田市現代美術館サテライト会場 space (2022/青森)、「margin reception」渋谷スクランブルスクエア プラスアートギャラリー (2021/東京)、「見逃し配信|Catchup」The 5th Floor (2021/東京)、「無闇」TALION GALLERY(2021/東京)、「バカンス」トーキョーアーツアンドスペース本郷 (2020/東京)などがある。

髙柳恵里, 「αMプロジェクト2022 判断の尺度 vol. 1 髙柳恵里|比較、区別、類似点」2022, gallery αMでの展示風景, 撮影:守屋友樹

髙柳恵里
1962年神奈川県生まれ。1988年多摩美術大学大学院美術研究科修了。多摩美術大学絵画学科教授。
事物や状況と結びついた認識のテクスチュアリティを重視する態度により、インスタレーション、写真、ドローイングなどの制作を行う。
近年の主な展覧会に「判断の尺度 vol.1 髙柳恵里|比較、区別、類似点」gallery αM (2022/東京)、「デモンストレーション」TALION GALLERY (2021/東京)、 「コレクション現代日本の美意識」国立国際美術館 (2020/大阪)、「それは、正確であるか」See Saw gallery + hibit (2019/愛知)、「百年の編み手たちー流動する日本の近現代美術」東京都現代美術館 (2019/東京)などがある。

平田尚也, 「さかしま」2021, Satoko Oe Contemporaryでの展示風景

平田尚也
1991年長野県生まれ。2014年武蔵野美術大学彫刻学科卒業。空間、時間、物理性をテーマにネット空間から収集してきた既成の3Dモデルや画像などを素材とし、主にアッサンブラージュ(寄せ集め)の手法でpcのバーチャルスペースに構築した仮想の彫刻作品を発表する。仮像を用いることによって新たな秩序の中で存在するもう一つのリアリティを体現し、ありえるかもしれない世界の別バージョンをいくつも試すことによって現実の事物間の関係性を問い直し、彫刻史の現代的な解釈を考察する。主な展覧会に「メディウムとディメンション:Liminal」柿の木荘(2022/東京)、「VOCA展2022」上野の森美術館(2022/東京)、「さかしま」Satoko Oe Contemporary(2021/東京)、「TAMPA」The 5th Floor(2021/東京)、「∃, Parallels, Invulnerability」トーキョーアーツアンドスペース本郷(2018/東京)などがある。

White Waters [玉山拓郎、C2D],「I ALONE CAN FIX IT」2021, ANOMALYでの展示風景
White Waters [玉山拓郎、C2D]
玉山拓郎と C2D(シー・ツー・ディー)によるユニット。社会的・言語的な二分法のあいだや透き間に入り込み、 その両側に浸潤していくコンセプチュアル・サポートとして活動する。近年の主な展覧会に「I ALONE CAN FIX IT」ANOMALY(2021/東京)などがある。
玉山拓郎は1990年岐阜県生まれ。2013年愛知県立芸術大学美術学部油画専攻卒業。2015年東京藝術大学大学院美術研究科絵画専攻油画研究分野修了。近年の主な展覧会に「Static Lights : Unfamiliar Presences」Sony Park Mini (2022/東京)、「Anything will slip off / If cut diagonally」ANOMALY (2021/東京)、「開館25周年記念コレクション展 “VISION Part 1 光について / 光をともして”」豊田市美術館 (2020/愛知)、「VOCA展 2020」上野の森美術館 (2020/東京)などがある。
C2Dは1981年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒業。2011年頃より、多数のアーティストとの会話や共同作業を重ね、作家や作品などの固有名を表象・代理することについての考察・研究を行う。「一番良い考えが浮かぶとき」TALION GALLERY (2020/東京)においてコラボレーション参加。

入江早耶「東京大悪祭 ~Happy Akuma Festival~」by 東京画廊+BTAP

《青面金剛困籠奈ダスト》 (2020) 薬箱、薬袋、消しゴムのカス、樹脂 40×25×21 cm

入江早耶「東京大悪祭 ~Happy Akuma Festival~」by 東京画廊+BTAP
2022年9月22日(木)− 10月9日(日)
会場:CADAN 有楽町 (東京都千代田区有楽町 1-10-1 有楽町ビル 1F)
営業時間:火-金 11:00-19:00 / 土・日・祝 11:00-17:00
定休日:月曜日
企画:東京画廊+BTAP|東京

●トークイベント
9 月 22 日(木) 18:00~18:30
出演: 入江早耶(アーティスト)、山本豊津(東京画廊+BTAP 代表)
参加無料、予約優先(15 名)
ご予約はこちらから:https://cadanarttalktokyogallery.peatix.com/view

●レセプション
9 月 22 日(木) トーク終了後〜20:00まで

CADAN 有楽町では、東京、銀座を拠点にする東京画廊+BTAPの 企画による入江早耶個展『東京大悪祭 ~Happy Akuma Festival~』を開催いたします。

入江は 1983 年岡山県生まれ。2009 年に広島市立大学大学院芸術学研究科博士前期課程を修了し、現在広 島を拠点に活動しています。2009 年に岡本太郎現代芸術賞に入選、2012 年には第 6 回 shiseido art egg 賞を受賞しました。主な近年の個展に「純真遺跡 〜愛のラビリンス〜」(2019 年、兵庫県立美術館)、 「大悪祭」(2021 年、広島芸術センター)があります。平成 31 年度ポーラ美術振興財団在外研究助成を 得て、今年ニューヨークの ISCP レジデンスプログラムに参加しました。本展は帰国後の初個展となりま す。

入江は印刷物などの日用品に描かれたイメージを消しゴムで消し、その消しカスを用いて彫像を制作する アーティストです。掛け軸の中から消えた観音像が現実の空間に立体として立ち上げられ、紙幣を用いた 作品では肖像画が胸像となって目の前に現れます。イメージとして流通し、日常的な存在となっている図 像を自らの手で一旦消し去り、二次元の情報を三次元の物体に再構築する入江の作品は、我々と表象の関 わりを巡る現代的な問題をユーモラスに提起しています。

超立身出世 Super Cult of Success (Ed.1/30) 2021 / 33 x 45 cm / フレーム: 39.3 x 50.8 cm 和紙、消しゴム版画、彩色
Japanese washi paper, acrylic

本展ではコロナ禍への応答として、近年入江が取り組んでいる神話や民間信仰にまつわる新作を展示いた します。江戸時代における神仏と祈りに関する伝承からインスピレーションを得た《青面金剛困籠奈ダス ト》は、疫病を払うとして祀られてきた青面金剛に由来します。本来は病を撒き散らす悪鬼をあえてまつ ることで、病の拡散を防ごうとした独特な風習に着目し、消した薬箱などから現代版・青面金剛を導き出 しました。彫像の手には、感染予防用のマスクや消毒液がモチーフとして取り入れられ、足元には邪鬼と なったウイルスが懲らしめられています。

その他、古い薬袋を用いた《薬魔地蔵ダスト》や消しゴム版画による護符の絵画など、いずれもユニーク な手法で制作された作品群が一挙に展示されます。また《地獄みくじ》や、過去の作品を掲載した部数限 定のカタログなど、さまざまなグッズも販売いたします。皆様のご来場を心よりお待ち申し上げます。

Shigeru Nishikawa – Sealed Temples – by Taguchi Fine Art

"Sealed House 147 -金峯山寺蔵王堂-" (2022) 油彩・グラファイト・金属粉・キャンバス・パネル、oil, graphite and metal powder on canvas, panel, 91.0 x 91.0 cm

Shigeru Nishikawa – Sealed Temples –
2022年8月30日(火)- 9月18日(日)
会場:CADAN有楽町
営業時間:火-金 11:00-19:00 / 土・日 11:00-17:00 定休日:月曜日
企画:田口ファインアート

初日にレセプションとアーティストトークを催します。是非お立ち寄りください。
8月30日(火)18:00-20:00 レセプション / 18:30-19:00 アーティストトーク

このたびCADAN有楽町では、東京、日本橋本町を拠点とする田口ファインアートによる西川茂個展「Sealed Temples」(覆われた寺院)を開催いたします。

西川茂(にしかわしげる)は1977年岐阜県生まれ。1997年に近畿大学理工 学部土木工学科環境デザインコースを中途退学、2002年大阪芸術大学附属大阪 美術専門学校芸術研究科絵画コースを修了。2007年から1年間アメリカ・ ニューヨーク州の障がい者と健常者の共同生活体「トライフォーム・キャンプ ヒル・コミュニティ」に滞在、絵画コースでアシスタントを務めました。これまでに奈良、京都、東京で個展を重ね、現在は奈良市と京都木津川市を拠点に活動しています。

西川は近年、都市に突然出現する布状のシート、仮囲いに覆われた、建設中、改築中、あるいは解体中の建築物や構造物を題材に、抽象的表現を試みています。シートの向こう側では、短期間のうちに建築物が出現したり、更地に戻されたりと風景が一変します。私たちはそれにより、眼に見えている総ては堅固に安定したものではなく常に変化している、ということに気付かされま す。西川の「シールド・ハウス」の作品は、「万物の流動性」や、「生成と消 滅」、「時間」を表現しようとする試みであり、写実性、再現性から離れ、テー マに相応しい動きのある大胆な筆触で描かれます。

今回は「シールド・ハウス」の作品のなかから、改修工事中の寺社仏閣を描 いた作品を中心に、CADAN有楽町の空間を展示構成致します。西川の活動拠点である奈良や京都には多くの寺社仏閣があり、それらを構成する建築物、伽藍は千年の時を超えて私たちの暮らしを見守ってきました。この場合には変化 するのはシートの内側よりもむしろ外側の世界であるということが、他の 「シールド・ハウス」の作品からの逆転であり、興味深いところです。

CADAN有楽町では、先日のアート大阪で初めて発表された清水寺本堂、法隆寺中門を描いた作品に加え、金峯山寺仁王門、金峯山寺蔵王堂、さらには最新作の薬師寺東塔を描いた作品が展示されます。また、お釈迦さまを表わすとともに宗教的空間を象徴する五色幕をモチーフとする、カーテンを取り扱う新しい展開も見られます。ぜひご高覧ください。

http://www.taguchifineart.com/artists.html

Distorted Images by SNOW Contemporary

top image: 雨宮庸介 展示風景 / 個展「H&T. A,S&H. B&W. (Heel&Toe. Apple,Stone&Human. Black&White.)」2021, SNOW Contemporary 撮影:木奥恵三

2022年7月20日(水)- 8月7日(日)
参加作家:雨宮庸介、飯沼英樹、ヒシャム アキラ バルーチャ、日野之彦、布施琳太郎 HITOTZUKI 他
会場:CADAN有楽町
営業時間:火-金 11:00-19:00 / 土・日 11:00-17:00 定休日:月曜日
企画:SNOW Contemporary

■オープニングパーティー
7月22日(金)18:30~20:00

■トークイベント「若手アーティストにとって『成功』とはなにか?」
7月22日(金) 17:30~18:30
出演: 布施琳太郎(アーティスト)、窪田研二(SNOW Contemporary共同ディレクター)
参加無料、予約優先(15名)
*Peatixからご予約ください。
https://cadanarttalksnowcontemporary01.peatix.com/
*CADANのインスタアカウント(@cadan_insta)からもライブ配信します。(アーカイブなし)

この度、CADAN有楽町は、西麻布を拠点とするSNOW Contemporaryによるグループ展「Distorted Images」を開催いたします。

出品作家の1人である雨宮庸介は自身の作品を、「最も毒の無いテーマを扱っている体裁を丁寧に整え、気付かれずに軽量の爆弾を持ち帰らせるような仕組みを常に考えている」(2018年SNOW Contemporary個展・ステートメントより抜粋)と言明しています。例えば彼の代表作でもある溶けたりんごの彫刻作品「apple」は、日常における普遍的な形状のりんごに「溶ける」というズレを加えることで、鑑賞者に対し、この世界の多重な認識の在り方を感知させます。

本展にて発表する作家はいずれも、この世界における生活から小さな歪み(Distorted Images)を感じ取り、それぞれに独自の視点で作品に昇華しています。本展「Distorted Images」を通じて、多様でありながら現実世界に対する鋭い批評性と想像力を兼ね備えたSNOW Contemporaryの作家たちを知っていただく機会となれば幸いです。

雨宮庸介 展示風景 / 個展「H&T. A,S&H. B&W. (Heel&Toe. Apple,Stone&Human. Black&White.)」2021, SNOW Contemporary 撮影:木奥恵三

●雨宮庸介
1975年茨城県水戸市生まれ。1999年多摩美術大学美術学部油画専攻卒業後、2011年に渡欧し、2013年にサンドベルグインスティテュート(アムステルダム)修士課程修了。主な展覧会に「六本木クロッシング2010展;芸術は可能か?」(2010/森美術館)、「国東半島芸術祭-希望の原理」(2014/国東半島、大分)、「Wiesbaden Biennnale」(2018/ヴィースバーデン、ドイツ) 、「未来を担う美術家たち 20th DOMANI・明日展」(2018/国立新美術館)、「Reborn-Art Festival 2021-22」(宮城県石巻市)などがあり、彫刻や映像インスタレーション、パフォーマンスなど、さまざまな手法を用いて日常では意識されない普遍的な事象における境界線の再考を促すような作品を制作しています。

飯沼英樹 展示風景 / 個展「闘ウ女神タチ」松本市美術館(長野)2016

●飯沼英樹
2002年愛知県立芸術大学大学院卒修了後、ナント国立美術大学(フランス)に入学し、2006年までヨーロッパ各地を拠点に活動。日本帰国後の近年は、六甲山に屋外展示をした「六甲ミーツ・アート 芸術散歩2013」や新宿LUMINE内を彩った「LUMINE meets ART AWARD 2015」、木彫作品約120点を出品した松本市美術館での大個展「戦ウ女神タチ」(2016)など、既存のアートスペースにとらわれない様々な場所と機会で作品を展示。最新のファッションに身を包みしたたかに現代を生きる女性の強さを一貫して表現する飯沼の華やかで都会的な世界観は、発表の度に大きな話題となってきました。時代の空気感も含めて表現された作品からは、社会に対する独自の解釈が提示されています。

ヒシャム アキラ バルーチャ「Mind Expansion」 2022

●ヒシャム アキラ バルーチャ
現在、ニューヨークを拠点に活動するHisham Akira Bharoocha (ヒシャム アキラ バルーチャ)は、日本人の母とビルマ人の父を持ち、幼い頃から家族とともに東京、トロント、ロサンゼルス、サンディエゴと、様々な街を移り住んできました。その後、1998年にニューヨークのロードアイランド・スクール・オブ・デザインを卒業します。在学中から音楽やビジュアルアート、デザイン、ファッション、写真など様々なフィールドで活躍してきたバルーチャの作品は、インスタレーションから壁画、ペインティング、コラージュ、写真、パフォーマンスと多岐にわたります。緻密にコントロールされた色彩の重なりと線が作りだすスペースによって構成されるパターンを背景に、意表をついた自由な空想世界のモチーフが独自の躍動感を持ち、観る者の身体感覚にリズムを刻むバルーチャの世界観は、無意識のイメージや過去の体験、夢と現実が混在しており、自身の幼少時の思い出や、音楽や写真、ウォールペインティングなど身体性を伴う様々な分野で活動している経験から培われたのであろうことが伺えます。

日野之彦「透明の膜」2022

●日野之彦
1976年に石川県輪島市に生まれ、2001年に筑波大学大学院を修了した日野之彦は、2005年のVOCA賞受賞を機に、インパクトの強い人物像が多くの人に知られることとなりました。うつろに見開いた大きな瞳、半開きの口、幼児的なポーズ、白いブリーフを着ただけの裸体など、言いようのない不安定な人物像を、技術に裏付けされた精緻な描写で描き出すことで、静謐な狂気を孕んだ濃密な絵画作品を制作しています。近年は、自身の作品のアイコンとも言える人物像を排除した静物画や風景画、ドローイング、水彩、色鉛筆など様々なメディアやブロンズでの立体作品など様々な表現に挑みながら、独自の表現世界を発展させています。主な個展に、2022年「窓辺」(SNOW Contemporary)、2010年「Wandering and Questioning」(上海美術館)、2011年「日野之彦 ー そこにあるもの」(上野の森美術館)など。

布施琳太郎「Retina Painting」2022

●布施琳太郎
1994年、東京都生まれ。2019年、東京藝術大学大学院映像研究科(映像メディア学)修了。急速に発展するメディア環境下に生きる人間の認知や慣習、それによる社会と人の距離やコミュニケーションのあり方など、可視化されないが実存する意識変容や違和感を、絵画や映像、iPhoneや印刷などの多岐に渡るメディアを用いながら、巧みに顕在化させた作品を発表。また、展覧会企画、批評などの他分野において意欲的な活動を行っています。
主な個展に「名前たちのキス」(SNOW Contemporary、2021)、主な展覧会企画に「惑星ザムザ」(小高製本工業跡地、東京、2022)、「沈黙のカテゴリー」(クリエイティブセンター大阪、2021)、「隔離式濃厚接触室」(ウェブページ、2020)、「iphone mural(iPhoneの洞窟壁画)」(BLOCK HOUSE、2016)など。参加展覧会に「Reborn-Art Festival 2021」(荻浜、2021)など。『美術手帖』や『現代詩手帖』、各種Webメディアに寄稿多数。

 

HITOTZUKI 展示風景「水戸駅前壁画プロジェクト」2019

●HITOTZUKI
HITOTZUKIは、独自に作家活動をしていたアーティストのKAMIとSASUが1999年に結成したユニットです。2000年にニューヨークを拠点として活動するアーティスト集団「Barnstormers」での壁画制作のプロジェクトに招聘され、その後はヨーロッパ各国のミュラルムーブメントに参加。ストリートカルチャーの中で育ち、スケートボードの軌跡にインスパイアされて生まれた力強く明快なKAMIのラインと、80年代のサブカルチャーや人間性心理学に影響を受けたSASUのポップな色彩とシンメトリーな形状がミックスされたHITOTZUKIのスタイルは、華やかでダイナミックな個性と、親密で暖かみのある世界観が共存し、確固たる存在感を持って日本のストリート・アートシーンを牽引してきました。HITOTZUKIが主に制作拠点としているのはビルの外壁や、建築物の内部空間です。周辺の風景と一体化する彼らの作品は、壁画が芸術として受容されている欧米を中心に、アジアをはじめ世界各地で高い評価を受け、多くの新たな風景を創出してきました。

石塚元太良 / 小林万里子 / 田窪恭治 by KOTARO NUKAGA

2022年6月28日(火)-7月17日(日)
出展作家:石塚元太良、小林万里子、田窪恭治
会場:CADAN有楽町
営業時間:火-金曜日 11:00-19:00 / 土曜日・日曜日 11:00-17:00 定休日:月曜日
企画:KOTARO NUKAGA

■ART TALK supported by CVJ
2022年7月2日(土) 11:30- 約30分間
出演: 石塚元太良(アーティスト)、額賀古太郎(KOTARO NUKAGA)
会場:CADAN有楽町
参加無料、予約優先(15名)
Peatixからご予約ください。https://cadanarttalkkotaronukaga02.peatix.com/
*@CADANのインスタアカウント(@cadan_insta)からもライブ配信します。

この度、CADAN有楽町では、六本木と天王洲を拠点とするKOTARO NUKAGA による展覧会「石塚元太良 / 小林万里子 / 田窪恭治 by KOTARO NUKAGA」を開催します。

Gentaro Ishizuka

大型フィルムカメラを手にアイスランドやアラスカといった極地方へ足を運び、自然やそこに在る人工物や遺構を撮影してきた石塚元太良。世界の全てをイメージとして平面的に見るデジタル写真の時代に、石塚は別の目で見る世界の姿を私たちに経験させてくれます。本展では、ル・コルビュジエが設計したフランス、リヨン郊外に聳えるラ・トゥーレット修道院の回廊と採光部のルーバーを捉えた作品を展示します。このルーバーの意匠は現代音楽家で建築家でもあるヤニス・クセナキスによって手掛けられ、その不均等なデザインをクセナキスは「オンドュラトワール(波状の)」と名付けました。ルーバーが落とす光の影は、静かな祈りの空間でクセナキス独特の旋律を奏でるのです。

 

Mariko Kobayashi

小林万里子は、織る、染める、編む、刺す、といったさまざまなテキスタイル技法を組み合わせた作品を制作し、世界に存在する様々な結びつきを表現します。有機的な形と自然に還る素材を用いて植物や生き物を描き出すことで、再帰性に溢れた自然世界の循環を色鮮やかに描き出し、我々が「人」として生きる「今」という時間を繙きます。本展では、循環の一部を成す生き物たちとそれ取り巻く宇宙を表現したテキスタイルと立体作品を初展示します。些細な気づきを大きな物語へと繋げる小林の作品から、私たちは生命の本質的な姿を感じるでしょう。

 

 

 

Kyoji Takubo

ポストもの派世代を代表するアーティスト・田窪恭治は、作家が制作を終えた後も表現の現場として存続する「風景芸術」をテーマに発表してきました。約10年の歳月をかけたプロジェクトである、フランス、ノルマンディ地方の小さな村に500年前に建てられたサン・ヴィゴール・ド・ミュー礼拝堂(通称 林檎の礼拝堂)の再生では、「林檎の礼拝堂」完成後フランス政府から芸術文化勲章オフィシエを授与され、芸術作品としての重要性のみならず、地元地域との長期にわたる共同作業が高く評価されました。本展では、《林檎の礼拝堂》(1996年完成)以降、田窪の代表的なモチーフとなった「林檎」を和紙に描いた平面作品とモザイク作品を展示します。風景のなかに自然と溶け込む林檎は、和紙の繊細さと大胆な筆が重なることによって姿を変え、豊かに実ります。

UNDULATIONISM by MORI YU GALLERY

2022年6月8日(水)-6月26日(日)
出展作家:黒田アキ、河合政之、藤原康博、小栁仁志、西山修平、世良剛、浜崎亮太、AKI LUMI
会場:CADAN有楽町
営業時間:火-金曜日 11:00-19:00 / 土曜日・日曜日 11:00-17:00 定休日:月曜日
企画:MORI YU GALLERY

【オープニングパーティー】
6月11日(土)16:00〜18:00
作家を囲んでささやかながらオープニングパーティーをいたします。
お時間ございましたら足をお運びください。

【ヴィデオアート上映 Video Art Screening】
MORI YU GALLERY 出品のヴィデオ・アーティストによる作品上映。
Video art works by artists presented by MORI YU GALLERY.

2022年6月24日(金) 開場19:00、開演19:20
June 24th, 2022, Open 19:00, Start 19:20

入場無料/定員15名/予約優先
こちらからご予約ください。
https://cadanyurakuchomoriyugalleryscreening.peatix.com/

上映作品 Works/作家 Artists→Screening_Program

*作品によって明滅や政治的な内容を含む場合があります。
*Some works may contain flashing lights or politically sensitive contents.

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この度、CADAN有楽町では、京都を拠点とするMORI YU GALLERYによるグループ展、「UNDULATIONISM」を開催いたします。

「UNDULATIONISM」は造語です。翻訳するとすれば、「波動」主義とでも訳せましょうか。「UNDULATION」とは、真っ平らでflatなものではなく、揺れており、起伏があり、そこには「NOISE」が含まれ、否、「NOISE」から生まれてきたといえるでしょう。

「NOISE」という難解な言葉から始めましょう。「Noise(ノワーズ)」という言葉は、マーグ画廊の創業者であるエメ・マーグ(Aimé Maeght, 1906-1981)の死後、1985年に、デリエール・ル・ミロワール誌を引き継ぐ形で創刊されたマーグ画廊の新しい美術誌のタイトルとして使われていました。編集長には、マーグ画廊の黒田アキ(Kuroda Aki, 1944-)。「ノワーズ」は黒田の友人であるフランスの哲学者、ミッシェル・セール(Michel Serres,1930-)の「NOISE」論に依拠し、黒田自身が名付けました(1985年5月発行の創刊号から1994年の18/19合併号まで全17冊発行)。

さて、中沢新一氏によると、「ノワーズ、それは古いフランス語で「諍(いさか)い」をあらわしている。バルザックはこの古仏語の語感を利用して、「美しき諍い女 la belle noiseuse」という存在を創造した。しかし、ノワーズのさらに古い語感を探っていくと、異質領域から押し寄せてくる聴取不能な存在のざわめきのことを、言い当てようとしているのがわかる。不安な波音を発する海のしぶきとともに出現するヴィーナスの像などが、そのようなノワーズの典型だ。ヴィーナスは海の泡から生まれたとも言われるが、またいっぽうではその泡は男女の交合の場所にわきたつ泡だとも言われる。いずれにしても、それは世界の舞台裏からわきあがってくる不気味なざわめきにつながっている」 (中沢新一『精霊の王』-第五章 緑したたる金春禅竹-より)。

前置きが長くなりましたが、所謂ノイズと言われるものと全く「NOISE」は違うのです。そうした「NOISE」が変化したものを我々は「波動」、「UNDULATION」と名付けてみましょう。

Masayuki Kawai

例えば、今回出展する作家である河合政之は、アナログのシステムを駆使する映像作家です。デジタルでは有用なシグナルのみを用いるが故に、捨象されてしまうノイズをもフィードバックという運動で展開される閉回路に取り込み、シグナルとノイズという二元論を超越した「たんなる物質とは違うもの」へと見事に変換させてしまいます。河合はフィードバックという手法によって、モダニズム的な自己言及性では無く、内在と超越の両者を切断しつつも接続する「NOISE」という概念を体現している作家と言えるでしょう。アナログにしかなし得ない、非連続の連続とでもいえる可能性を初めて開いた思想を携えた作品群がART BASEL HONGKONGで高く評価されたことは記憶に新しいでしょう。「NOISE」は、 存在論的には所謂シグナルとノイズとの間にあり、時に接続し、また時に切断されるのですが、その中で「NOISE」は違う状態へと超越するのです。それは主体と客体、個人と社会、過去と未来、シグナルとノイズといった両者を接続しつつ切断し、たんなる物質とは違う、先の例えのようなビーナスへと変容していきます。そして、それはまた日本の文化的特長とも言える空間的、時間的な余白、空白といった「間」(ま)の意味も纒うといえるでしょう。

 

藤原康博

藤原康博は、様々な山を描くことで知られた作家です。「私の作品は、崇高なものには程遠いものですが、自分の記憶から何かを少しずつ加えつつ、何かを削ぎ落としていくように描いていきます」と語ります。山がまだ山という名称さえなかった太古の時代に存在していたそれと、藤原自身の記憶の底から導かれた山の表象と、その「間」(ま)に存在するimage、つまり「NOISE」から生み出された「UNDULATION」を描いていると言えるのではないでしょうか。それは、現実と人の記憶の間と言ってしまえば、写実絵画の説明のようなあたりまえの話になってしまいますが、藤原の絵画に在る「間」とは大きな違いがあります。彼の絵画はactualな山と潜在的な山との「間」にある山であり、質の違いを獲得しつつ、空間だけでなく、時間を含んだものとしても描かれています。山の白いimageは、時間の「間」で浮遊するかのように、物質性を強調する支持体としてベニヤ板の上に描かれた時、記憶よりactualな山に近づきつつもその「間」を保ち、映像のように揺蕩っています。また一方、山のimageは、キャンヴァス上に描かれた時、自身の記憶により近いものですが、actualな意味からも離れすぎないimageとして、時間と共に「在る」と言えるでしょう。我々鑑賞者は、誘われるように、空白としてのその「間」にいつしか没入し、自らの記憶における山と藤原の描く山とを比較し、彼の潜在的な思考と、現実的な自然における山との対峙によって、さらなる迷宮へと誘われます。

藤原は、国立国際美術館(大阪)で開催中の展覧会「感覚の領域  今、経験するということ 」に出品していました。ここでの作品の多くには、2020年に網膜剥離を発症した彼自身の経験が盛り込まれています。部屋の中のベッドや布団といったものと窓から見える外の風景が綯い交ぜになったような絵画には、今まで存在していた家という内部と外部の境界が脆くも崩れ去ったような風景が描かれています。遠くにあるはずの山のimageが家の中の布団の山のimageと重なり、違和感なく鑑賞者の眼前にあって、そこにあった山とここの布団の山が同時に立ち上がり一つになっている絵画と受け取れます。これは、藤原が網膜剥離を患う以前から制作してきたベニヤ板に描かれた山と、キャンヴァスに描かれた山とが重なったようなものともとれるでしょう。治療、療養後に描き出した作品が、さきほど説明したimageの難解さを理解し易いものにしたとも解釈できるでしょう。我々鑑賞者が理解可能で写実的、つまりactualなものと藤原自身の潜性的なものの「間」にあるimageは、藤原が「記憶の奥行き」と語る「眼には見えない記憶の谷」にこそ「在る」のです。そのimageこそが、「NOISE」から生み出されたところに在る「UNDULATION」ともいえるでしょう。

Aki Kuroda

そして黒田アキ。彼は、日本では1993年には東京国立近代美術館にて個展を開催しました。彼は、1970年代後半、パリ・ビエンナーレにおいて発表された「conti/nuit/é」(連続の中の夜)という絵画において、モダニズムを超えていこうとする新しき絵画として評論家に評されました。キャンヴァス上において、描かれた黒い線がすっと伸びていくその先で、時に線が縺れ、その縺れた線があるかたち(figure)となって現れてきます。「連続するもの」(「conti/nuit/é」)という「間」(ま)にあって、フランス語は「夜」(「nuit」)を意味する言葉を含みます。連続する時間と線が、ふと縺れて「夜」というかたち(figure)になる。「夜」は一体いつから始まり、終わるのか判然とせぬまま、過去からも未来からも切断されつつ接続され、また時にそれは連続する時間から逃げ果せ、意味を輝かせるのでしょう。黒田の意味する「夜」は線の縺れから生じ、それはまさに「夜」という「NOISE」から生み出された「波動」、「UNDULATION」として「figure」=人型としてキャンヴァスに描かれています。後年、「連続する夜」(「conti/nuit/é」)というコンセプトは、シュルレアリスムに影響を受けたミノタウロスと繋がり、80年代から描かれてきたシャープで美しき人型ではなく、ミノタウロスと黒田アキの自画像とが綯い交ぜとなった顔として、激しい筆致により、キャンヴァスに描かれています。それはまさに「NOISE」から生み出された「UNDULATION」を語るに相応しい作品でしょう。

今回は、「UNDULATIONISM」という造語を掲げるに相応しいこの3人を中心に、小栁仁志、西山修平、世良剛、浜崎亮太、AKI LUMIなどの作品を展示いたします。どうぞご高覧ください。

MORI YU GALLERY
森裕一

KATHLEEN JACOBS by Fergus McCaffrey Tokyo

2022年5月17日(火)-6月5日(日)
会場:CADAN有楽町
営業時間:火-金曜日 11:00-19:00 / 土曜日・日曜日 11:00-17:00 定休日:月曜日
企画:ファーガス・マカフリー 東京

同時開催:
2022年5月21日(土)– 7月16日(土)
オープニング・レセプション 2022年5月21日(土)5 – 7pm
会場:ファーガス・マカフリー 東京

Kathleen Jacobs, Clearing 72, 2011, Oil on linen

この度、CADAN有楽町では、NYを本拠地とし東京・表参道にスペースを構えるファーガス・マカフリー東京によるキャスリーン・ジェイコブスの個展を開催いたします。

木の幹にキャンバスを巻き、その樹皮の模様を写しこむ独特の方法で制作されるジェイコブスの作品は、対象の樹木が生息する自然環境、そしてその変化の経緯を布地に取り込むことで生み出されます。平面作品の枠を超える彼女のコンセプチュアルな絵画作品は世界中で注目を集め、30年以上にわたる作家活動を通し、ジェイコブスはアメリカ国内外の様々な会場で作品を発表してきました。

中国の明代初期の秋冬の山水画を連想させ、余白の多いミニマルな画面に途方もなく広がる距離を感じさせる彼女の絵画空間は、1984年から88年にかけ元義父であり中国の人間国宝と言われる画家、黄永玉(ホアン・ヨンギュ)と暮らし中国伝統美術を学んだ経験に根付いており、彼女は「14世紀から16世紀の絵画や漢詩の途方もないスケールの捉え方に触発された」と語っています。わずかな筆墨と線で多くを表現する簡素な視覚言語、また石に刻まれた古代文字の拓本を手本に書を学習した経験は、独自の樹木を用いるフロッタージュ技法へとつながって行きます。

彼女にとって初となるアジアでの展覧会はファーガス・マカフリー東京、CADAN有楽町の2会場開催となります。ファーガス・マカフリーでは主に絵画の大作、CADANスペースでは比較的サイズの小さな絵画作品および2012年制作の立体作品展示を予定しています。

Kathleen Jacobs, Clearing 2, 2011, Oil on linen

●キャスリーン・ジェイコブス Kathleen JACOBS
キャスリーン・ジェイコブスは1958年緑豊かなアメリカ・コロラド州に生まれる。ボストンのパイン・マナー・カレッジで学んだのち、1980年イタリア・ミラノに渡りグラフィックデザインを学ぶ。その後、中国と香港に移住。4年間の滞在中、義理の父、また著名な画家でもあった黄永玉に習い、書道の学習を通して、様々な素材と技法を使用し点や線を通して模様を生み出す「マーク・メイキング」に没頭する。1988年世界各地での経験を踏襲し、その後ライフワークとなる木を題材とした作品の制作を始め、89年にアメリカに帰国。

当初、故郷コロラドの森に群生するヤマナラシを描いていた彼女は、「視覚」というフィルターを超え、より奥深く「面白い」方法で目の前の環境を制作に取り込むことはできないのか、と考えたという。そして樹木に直接、触覚的にアプローチする、独特で革新的な方法を初めて試みることになる。木の幹にペイントを塗ったキャンバス、麻布を巻きつけ、その上から何層もオイル・スティックや絵の具を塗り込み、そして雨風に晒す。それを数日から、長い時には数年に渡り繰り返す。その結果、キャンバスには二つとして同じもののない樹皮の模様が何層にも刻み込まれ、木が立つ空間と時間が染み込み、まるでその自然環境を触覚で感じ取れるような多層的な模様が生まれる。

 

Kathleen Jacobs, Clearing 118, 2011, Oil on linen

野外で老熟したキャンバスをジェイコブスはスタジオに持ち帰り、四角のストレッチャーに貼り直したのち、仕上げを施していく。色彩、模様、表面のテクスチャーは強い物質としての存在感を持ちながらも、とらえどころのない曖昧さも漂わせる。鑑賞者に理解を委ねる彼女の大型の作品は瞑想的な風景画のようにも、水面をとらえているようにも見える。

CADAN×ISETAN MEN’S : New Essential

伊勢丹新宿店メンズ館とCADAN(一般社団法人日本現代美術商協会)は、2022年のコラボレーションプロジェクト「New Essential」を開催いたします。

「CADAN×ISETAN MEN’S : New Essential」

開催期間:3月29日(火)~5月31日(火)
設置場所:伊勢丹新宿店メンズ館1階・2階・4階・6階

1階 エントランス、メンズアクセサリー・・・木村 剛士(Tezukayama Gallery)
2階 メンズクリエーターズ・・・マーガレット・リー(MISAKO&ROSEN)
4階 メンズラグジュアリー・・・篠田 守男(KOKI ARTS)
6階 メンズコンテンポラリー・・・大野 晶(XYZ collective)

主催:伊勢丹新宿店メンズ館
協力:一般社団法人日本現代美術商協会

1F 木村 剛士(Tezukayama Gallery)

木村剛士「live log」(2022年) 鉄、ブロンズ、砂 (自転車) H100 × W150 × D60cm、(ブランクーシレプリカ) H60 × W13 × D13cm ©Takeshi Kimura / Photo: Keisuke Kitanishi / Courtesy of TEZUKAYAMA GALLERY

木村剛士は一つの素材に特化せず、様々な素材を用いてアイディアを具現化させることを得意とする作家です。本作は、ルーマニア出身の彫刻家、コンスタンティン・ブランクーシ(1876年生まれ)の無限柱から着想を得た新作です。ブランクーシの無限柱は天に向かって無限に伸びていますが、木村は現代の時代性に合わせ横に水平に広がり続ける彫刻はないかと模索した結果、《live log》 の制作に至りました。以前より車輪に興味があった木村はコロナ禍において人々が自転車で移動することが増えたことに着目し、自転車のタイヤにブランクーシの彫刻を彫り、走行された地面が水平方向に無限に広がる彫刻作品となるというのがコンセプトとなっています。 様々な場所で展示することで、その車輪の軌跡を広げていきたいと考えています。

◯木村 剛士(きむらたけし)
1980年東京生まれ。
主な展覧会:2017「IN CONCRETE」FEI ART MUSEUM、横浜(個展)「N.E.blood 21 vol.60」リア スアーク美術館、宮城(個展) 2022「Directors’ Selection – FOCUS」TEZUKAYAMA GALLERY(グループ展) 2020「新鋭作家 展 < ざらざらの実話 >」 川口市立アートギャラリー・アトリア、川口(グループ展)2020「六甲ミーツアート芸術散歩」六甲山 (グループ展)2019「ART MIYAGI 2019」宮城県美術館(グループ展)2016「あきたの美術 2016」秋田県立美術館、秋田(グループ展)、2015「大地の芸術祭 KAMIKOANI PROJECT AKITA2015」 秋田県上小阿仁村(グループ展)。

2F マーガレット・リー(MISAKO&ROSEN)

Margaret Lee「This is what I expected」(2017年)polished stainless steel 40 x 48 x 30.5cm ©the artist

マーガレット・リーは、常に女性ならではの目線で世俗的な問題から異性関係やセクシャルな問題までを軽やかなタッチで捉えています。男性社会?女性上位時代?この問いかけは現代社会において、いままさに皆が共有する問題です。男性であること、女性であること、その境界線をなくすことを意識的に問題視しようとする世界においても、いまだシンボリックで強調的なビジュアルは存在します。その曖昧な世界を描くマーガレット・リーの作品は、どこか可愛らしさを秘めています。また鑑賞者への圧倒的な想像力をかき立てるビジュアルが特徴です。

◯Margaret LEE(マーガレット・リー)
1980年ニューヨーク生まれ。現在もニューヨークを拠点に活動。
主な展覧会:2022年「(as) hard as (it) gets」MISAKO & ROSEN、東京(個展)、2020年「For a Dreamer of Houses」ダラス美術館、テキサス(グループ展)、 2020年「I.C.W.U.M」ラ・メゾン・デ・ランデヴー、ブリュッセル(個展)、2013年「リヨン・ビエンナーレ 2013」(グループ展)、「New Pictures of Common Objects (企画:クリストファー・ルー)」MoMA PS1、ニューヨーク(グループ展)。

 

4F 篠田 守男(KOKI ARTS)

Morio Shinoda「TC8612」(2017年) Stone, stainless, brass 32 x 20 x 20cm ©the artist

鋼鉄線の張力と圧力で金属塊を中空に固定させるTC(Tension and Compression)シリーズで知られる篠田は、線を用いて空間と緊張を表現し続け、スケール感のある奇妙で不思議な世界を繰り広げています。

◯篠田 守男(しのだもりお)
1931年東京生まれ。茨城県在住。
主な展覧会:2014年「WALL」KOKI ARTS、東京(個展)、1966年「ベネチアビエンナーレ」ヴェネチア、1983年「現代美術の動向2 1960年代多様化への出発」 東京都美術館、東京(グループ展)、「現代日本美術の展望立体造形」 | 富山県立近代美術館 、富山(グループ展)。

 

6F 大野 晶(XYZ collective)

大野晶「Object for Painting No.48」(2020年)clay H13.2 x W15.0 x D3.5cm ©the artist

大野晶の近年のシリーズ「オブジェクトフォーペインティング」は、抽象絵画と彫刻の間を行き来しています。作品の主な素材は粘土で、油絵具や水彩絵の具は一切使わず、様々な種類の粘土の自然な色を使い制作されます。日本的な工芸・陶芸の文脈と、西洋的な抽象絵画の文脈の両方を取り入れています。

◯大野 晶(おおのひかり)

1990年ドイツ・リューネブルク生まれ。現在は東京を拠点に活動。
主な展覧会:La Boîte-en-Valise オフィスバロック、ベルギー(2020年、グループ展)、”Object For Painting” XYZcollective 、東京(2020年、個展)、「五月女哲平×大野晶」車屋美術館、栃木県(2019年、グループ展)、「大野晶 at ザ・ステーキハウスDOSKOI」ザ・ステーキハウスDOSKOI、東京(2017年、個展)。

[FIGUR] 土肥 美穂 / ガブリエル・ハートリー / 寺内 曜子 by HAGIWARA PROJECTS

[FIGUR]
土肥美穂 / ガブリエル・ハートリー / 寺内曜子
Miho Dohi / Gabriel Hartley / Yoko Terauchi
2022年4月28日(木)- 5月15日(日)
April 28 (Thu) – May 15 (Sun), 2022
場所:CADAN有楽町
営業時間:火-金 11:00-19:00 / 土・日・祝 11:00-17:00 定休日:月曜日

■ART TALK supported by CVJ
2022年5月6日(金) 18:30- 約30分
出演: 寺内曜子(アーティスト)
進行: 萩原ゆかり(HAGIWARA PROJECTS)
会場:CADAN有楽町
参加無料、予約優先(15名)
Peatixからご予約ください。https://cadanarttalkhagiwaraprojects.peatix.com/
*@CADANのインスタアカウント(@cadan_insta)からもライブ配信します。

この度CADAN有楽町では、東京・森下を拠点とするHAGIWARA PROJECTSの企画による土肥美穂、ガブリエル・ハートリー、寺内曜子の3名による展覧会[FIGUR]を開催します。

土肥美穂は、様々な素材を組み合わせた彫刻作品を制作します。異なる種類の素材が調和と反発のバランスを絶妙に保ち、有機的な存在感を持つ作品です。土肥は素材一つ一つの形や質感、色がお互いに及ぼす作用を、あらゆる角度から見て検証しながら丁寧にすくい上げ、未知のものを作る可能性を探求します。本展では、「視ること」をテーマにしたドローイング作品を初披露します。

ガブリエル・ハートリーは、日々描き止めるスケッチや、写真を元に絵画を描きます。街並みや動植物の形は、画面上で抽象度を増し、さらに様々な技法で描かれた色とテクスチャーのレイヤーが、光や時間帯によって鑑賞者が知覚するイメージに変化を及ぼします。本展では、近作の色鮮やかな絵画を展示いたします。

寺内曜子は、当たり前と見なされている裏と表、内と外、善と悪といった対立概念への疑いを元に、彫刻作品を制作しています。今回展示する作品は全て、一枚の紙や鉛板に、何も足さず、何も引かずに、裏表の対立は無いことを、造形するのではなく、素材自身が必然的に成る形で証明し、「世界に対立関係はない」という自身の考えを伝えます。本展では、鉛を使った彫刻の中から、日本では未発表の2作品を含んで展示します。

三者の作品の形のあり方はそれぞれですが、現れている形を視ることで、その視覚体験が知覚を刺激し、豊かな鑑賞体験に広がることをぜひ体感してください。

土肥 美穂 “untitled” 2020、板、アクリル絵の具 (参考作品)
©Miho Dohi, Courtesy of HAGIWARA PROJECTS

●土肥 美穂 (どひ みほ)
2002年東京造形大学大学院彫刻科研究生修了。主な個展に、HAGIWARA PROJECTS (2021, 東京)、Gordon Robichaux (2021, ニューヨーク, 米国)、The Renaissance Society at the University of Chicago(online) (2020, シカゴ, 米国)、Crèvecœur (2020, パリ, フランス)、 「ショーケースギャラリー 土肥美穂」 横浜市民ギャラリーあざみ野(2020, 横浜)、Nonaka-Hill (2018, ロサンゼルス, 米国)、Lulu (2017, メキシコシティー, メキシコ)、 HAGIWARA PROJECTS (2016, 東京) など。 主なグループ展に、「Sweet Home」 (2021, CPM Gallery, ボルチモア, 米国)、 「Miho Dohi / Josh Brand」 (2020, La Maison de Rendez-Vous, ブリュッセル, ベルギー)、 「City Prince/sses」 Palais de Tokyo (2019, パリ, フランス)、 「Natsu no Tobira – curated by Jeffrey Rosen」 Shane Campbell Gallery (2017, シカゴ, 米国)など

 

ガブリエル・ハートリー 2022
©Gabriel Hartley

●ガブリエル・ハートリー (Gabriel Hartley)
1981年、イギリス・ロンドン生まれ。チェルシー・カレッジ・オブ・アート・アンド・デザイン(ロンドン)で美術の学士号を取得。ロイヤル・アカデミー・スクールズ(ロンドン)を修了。近年の展覧会に「Postcards」imlabor (2021, 東京)、「OF」Seventeen (2020, ロンドン)、「Waterwood」 Foxy Production (2019/2020, ニューヨーク) 、「The Sleeping Procession」CASS Projects, Cass Sculpture Foundation (2018, サセックス、イギリス)、「Landscapes」 Seventeen (2018, ロンドン)、「Reliefs」Foxy Production (2016, ニューヨーク)、「A Rose Without a ‘why’, It blooms because it blooms」Carl Freedman Gallery (2016, ロンドン)など

 

寺内 曜子 “WHIRLPOOL (No. 3 of a series of 3 pieces)” 1991、鉛、7 x 13 x 10 cm
©Yoko Terauchi, Courtesy of Kanransha

●寺内 曜子 (てらうち ようこ)
1979-81年、セント・マ−ティンス美術大学(ロンドン) 彫刻科アドヴァンストコースに学ぶ。1979ー98年、ロンドン在住で作家活動。1999年以降、 東京在住。近年の個展に、「寺内曜子 パンゲア」 豊田市美術館(2021, 愛知県)、「寺内曜子展 満ち潮 引き潮」ふじ・紙のアートミュージアム (2021, 富士市, 静岡)、「スタンディング・ポイント1 寺内曜子」 慶應義塾大学アートセンター(2017, 東京)、「寺内曜子の赤と青」かんらん舎(2017, 東京)、「空中楼閣2010」愛知県立芸術大学サテライトギャラリー(2010, 名古屋, 愛知)など。近年のグループ展に、「15th edition triannual of sculpture」Campo & Campo (2022, アントワープ, ベルギー)、「空間の中のフォルムーアルベルト・ジャコメッティから桑山忠明まで」 神奈川県立近代美術館(2021, 葉山市, 神奈川)、「einblicke」 edition & galerie Hoffmann (2021, Friedberg, ドイツ)、「引込線/放射線」第19北斗ビル(2019, 所沢)、「MOT コレクション:ただいま/はじめまして」東京都現代美術館 (2019,東京)、 「MOMAT コレクション」東京国立近代美術館(2019, 東京)、 「From the Kitchen Table : Drew Gallery Projects 1984-90」Herbert Reid Gallery, UCA Canterbury (2018, 英国)、「Re:コレクションⅠ 美術館を(一足早く)解体する」愛知県美術館(2017, 愛知)など。

大野 綾子「みどりは草の色カマキリの色」by KAYOKOYUKI

大野綾子「みどりは草の色カマキリの色」by KAYOKO YUKI
2022.4.5 (火) – 24 (日)
会場:CADAN有楽町
営業時間:火-金曜日 11:00-19:00 / 土曜日・日曜日 11:00-17:00 定休日:月曜日
主催・企画:KAYOKOYUKI

この度、CADAN有楽町では、東京・駒込を拠点とするKAYOKOYUKIによる、石彫作家、大野綾子(おおの・あやこ)の個展「みどりは草の色カマキリの色」を開催いたします。

大野綾子はこれまで一貫して石を扱い、彫刻作品を制作してきました。植物や自然の風景、日常の行為などから着想を得たイメージは、石という物質を媒体として独特の「かたち」を獲得していきます。それは、石という素材にこだわり石彫の可能性を模索し続けてきた作家が見出した世界の「かたち」の認識に他なりません。

新作「みどりは草の色カマキリの色」は大野の3才になる子供の言葉に端を発しているといいます。草むらに潜むカマキリやそこから飛び出してくるカマキリは、子供の目を通して、さらには、子供だった頃の過去の記憶から表象された図像のように思われます。「シンプルな出来事から見たことのない新しい世界が広がる」という大野の言葉の通り、硬くて重い石でありながら軽快さを併せ持つカマキリは、重力や時間といった束縛を解放し、まるで未知のものに遭遇したかのような感覚にわたしたちを誘います。

しかしながら、木の破片や鉱物が混入した深岩石から彫り出された草やカマキリ、無垢のステンレスから削り出されたカマキリの痕跡は、気が遠くなるほどの長い時間と強固な物質性を思い出させ、否応なくわたしたちの前に立ちはだかります。軽さと重さ、自由と束縛、立体性と平面性などの相反するイメージの共生という特徴を持つ大野の作品は、無数のシンプルな事象が複雑に交錯しているこの世界の成り立ちに接続する扉のひとつとなり得るのではないでしょうか。

大野 綾子(おおの・あやこ)
1983年埼玉県生まれ、同県在住。女子美術大学芸術学部立体アート学科卒業後、東京芸術大学大学院美術研究科彫刻専攻修士課程修了。
主な展覧会に、個展「ショーケースギャラリー 大野綾子展」横浜市民ギャラリーあざみ野(神奈川、2020)、「タイムライン —時間に触れるためのいくつかの方法」京都大学総合博物館(京都、2019)、個展「さかなのような人」KAYOKOYUKI(東京、2018)、「所沢ビエンナーレ[引込線]2017」旧所沢市立第2学校給食センター(埼玉、2017)、「Reborn-Art Festival 2017 -Do sculptors Dream of electric car (TOYOTA prius) XYZ collectiveキュレーション」GALVANIZE gallery(宮城、2017)、「leave」秋山画廊(東京、2017)など。「第7回大黒屋現代アート公募展」大賞受賞(2012)、個展「さかなとして浸かる」板室温泉大黒屋 (栃木、2013)を開催。美術講座「暮らしの中にみるかたち」練馬区立美術館 (2014、東京)にてワークショップを開催。小豆島 千軒海岸(香川)、相模原公園(神奈川)、翠ヶ丘公園・須賀川(福島)などに作品設置。
http://ohnoayako.com/

建築のヴィジュアリティ Architectural Visuality by 5 artists (Gallery OUT of PLACE)

CADAN有楽町は、奈良を拠点とするGallery OUT of PLACEの企画による展覧会「建築のヴィジュアリティ Architectural Visuality by 5 artists」を開催いたします。

●開催概要
タイトル:「建築のヴィジュアリティ Architectural Visuality by 5 artists」
作家:ルシアン・エルヴェ、上須元徳、嶋田ケンジ、寺田真由美鷲津民子

会期:2022年3月15日(火) – 4月3日(日)
会場:CADAN 有楽町 (東京都千代田区有楽町1-10-1 有楽町ビル1F)
営業時間:火~金 11時~19時 / 土、日、祝 11時~17時
定休日:3月22日(火)、28日(月)
企画: Gallery OUT of PLACE

いわゆる建築家が、実際の地球上のある場所に建てる(建てた)構造物を、仮に「実存建築」と名付けるとしよう。
その一方で、ならば美術家を魅了し彼らが想像し描き出す構造物は「仮想建築」となるのかもしれない。
その間にあるのが写真家によって実際の建造物から切り取られた(トリミングされた)表象で、それらは「写真建築」と呼べるのかもしれない。

あらかじめ断っておくが、「実存建築」「仮想建築」「写真建築」は筆者の造語であり、
「実存建築」は実在する建築を意味しないし、「仮想建築」とは言っても空間を持たないわけではない。
そして当然ながら「写真建築」は「建築写真」とは全く違う概念である。

住めない建築、不条理な仮想空間などをキーワードに、
ル・コルビュジエの建築を多く撮り、独自のトリミングを施し発表し続けたルシアン・エルヴェ、
実在のドーム建築を抽象化し、銀塩写真の独特の階調を絵画に持ち込む上須元徳、
建造物の重厚で荒々しいテクスチャーと複雑な構造を陶で表現する嶋田ケンジ、
自作のミニチュアを写真に撮り、虚実が交錯する空間を表現する寺田真由美、
「飛ぶ家」をテーマに3Dと2Dの間を行き来するmixed mediaの鷲津民子、
以上の5作家の秀作、逸品を紹介いたします。

どうかこの機に、5作家による建築的異空間をお楽しみください。

■ART TALK supported by CVJ
「2000-2022 東京とNYの間で」
2022年4月2日(土) 11:30- 約40分
出演:寺田真田美 Mayumi Terada (美術家)、ケビン・バテルミ Kevin Bartelme(小説家)
司会:野村ヨシノリ(Gallery OUT of PLACE)
*@cadan_instaからインスタライブ配信

Gallery OUT of PLACE ディレクターの野村ヨシノリ氏がCADAN有楽町からNY在住のアーティスト寺田真田美氏を繋いでライブ配信します。
80年代に東京で立体作家として活動を開始し、2000年以降にNYに拠点を移し写真作品を発表している寺田氏の制作や、東京とNYのアートシーンについてお話しいただきます。また寺田氏のパートナーで小説家のバテルミ氏にもご登場いただき、近年のコロナ禍でのNYの生活や制作についてお聞きします。

鷲津民子 “Washizu Drawing no.12” 36x41x12cm, mixed media
Lucien Hervé / ルシアン・エルヴェ Chandigarh (Inde) La Haute-Cour #2 51x41cm photography
Kenji SHIMADA / 嶋田ケンジ “TS細胞の再構築” H37 x W22 x D21 cm 陶,炭化焼成
Mayumi TERADA/寺田真由美, “kitchen 011201″24 x 20 inch photography
Motonori UWASU/上須元徳, Dome, 2010, 130x194cm, acrylic on canvas

CADAN×ISETAN MEN’S : Seasonal Cohabit ~Winter & Spring~

伊勢丹新宿店メンズ館とCADAN(一般社団法人日本現代美術商協会)は、2021年のコラボレーションプロジェクトの第3弾「Seasonal Cohabit~Winter & Spring~」を開催いたします。

「Seasonal Cohabit」とは、違う者同士が、平和に一緒に過ごす、暮らす持続可能な多様性を尊重する社会を想う造語です。伊勢丹新宿店メンズ館の4フロアに設置された立方体の展示空間SI(ストアアイデンティティ)に、CADANがキュレーションしたスペシャルインスタレーションを展示します。ぜひご高覧ください。

「CADAN×ISETAN MEN’S : Seasonal Cohabit~Winter & Spring~」
開催期間:12月1日(水)~2022年3月28日(月)
設置場所:伊勢丹新宿店メンズ館1階・2階・4階・6階

1階 エントランス、メンズアクセサリー・・・鈴木基真(Takuro Someya Contemporary Art)
2階 メンズクリエーターズ・・・飯沼英樹 (SNOW Contemporary)
4階 メンズラグジュアリー・・・川田知志 (ARTCOURT Gallery)
6階 メンズコンテンポラリー・・・大田黒衣美(KAYOKOYUKI)

主催:伊勢丹新宿店メンズ館
協力:一般社団法人日本現代美術商協会

1F 鈴木基真(Takuro Someya Contemporary Art)

鈴木基真「World is Yours」(2010年)

鈴木は、沢山の木箱、何かの看板、どこかで見たような、知っているような知らない景色の一部を構成、再構築していきます。鈴木が扱う題材は、私たちが日常にあるものだと理解していながら、実際は感覚ででしか理解していないものです。 無限にあるイメージを容易にインターネット上のクラウドから手に入れられる時代、ひとつずつ作家自身の目で選別して、スローペースに木彫へと変容させていく制作のなかで、鈴木自身、限界を感じながらその殻を破りさらに限りない世界へと広げて行きます。

◯鈴木 基真/すずきもとまさ
1981年静岡生まれ。2004年武蔵野美術大学彫刻科を卒業。木彫を中心に、そこから展開させたライトボックスの写真作品も制作している。2017年に「VOCA賞2017」で VOCA奨励賞を受賞。美術評論家の清水敏男氏監修による個展「クリエイションの未来展 第13回 鈴木基真展 MOD」が2017年にLIXIL Gallery(東京)にて開催された。2018年には青森公立大学国際芸術センター青森(ACAC)にて開催されたアーティスト・イン・レジデンス・ショー「未完の庭、満ちる動き」に参加。TSCAでは2016年に個展「wall, roof, window」を開催した。

2F 飯沼英樹 (SNOW Contemporary)

左上から)”walk bleu”, “black line”, “Crepe”, “red skin”, “contrast” 各2021

一木造りで掘りおこした飯沼の彫刻は木肌が見えるほどのラフな外形を持ちながらも、 現代の消費社会のただ中に身を置く女性たちのリアルな「今」が感じられます。

◯飯沼 英樹/いいぬまひでき
彫刻家。1975年 長野県生まれ。東京都在住。2003年フランス国立ナント美術大学卒業。主な展覧会に、2019年「デジタルに変換された彼女がまさかの天然木変換」キヤノンデジタルハウス銀座(東京)、2016年「闘ウ女神タチ」松本市美術館(長野)、2005年エルンスト・パルラッハ賞展覧会(ドイツ)。

 

4F 川田知志 (ARTCOURT Gallery)

川田知志「夏の○×△」(2015年)インスタレーション、木材、金網、漆喰、顔料ほか/サイズ可変、
京都芸術センター南ギャラリー前廊下での展示風景/撮影:松見拓也

学生の頃、ときどき百貨店で催事場入れ替え のアルバイトをしていました。店内では、訪れたお客さんを誘惑する華やかな空間演出がなされる一方で、 我々はバックヤードを移動しました。そこは、どこに行っても同じ景色の素っ気ない空間で、気が遠くなるような感覚になったのを覚えています。当たり前ですが、荷物を置いて通り過ぎるためだけの効率化された空間に華やかさは必要ではありません。そこで今回は、当時の感覚を確かめながら、表のモチーフに華やかさを託し、裏は基礎として仮壁面の構成で作り、そんな日々の誘惑と素っ気なさを表現したインスタレーションを発表します。

◯川田 知志/かわたさとし
1987年大阪府生まれ。伝統的な絵画技法に現代の造形材料を織り交ぜた独自の制作方法を探求し、地域社会での出来事や暮らしにおける環境変化の中からモチーフを集め、日常生活と建築、都市の関わりあいを壁画、絵画、インスタレーションにより提示する。2013年京都市立芸術大学大学院美術研究科絵画専 攻(油画)修了。2019年平成30年度京都市芸術新人賞。主な展覧会に「Slow Culture」(京都市立芸術大 学ギャラリー@KCUA、京都、2021)、「TOKYO MIDTOWN AWARD 2020」(東京ミッドタウン プラザ B1、東京)、「セレブレーション-日本ポーランド現代美術展-」(京都・ポズナン・シュチェチン、2019)、 「街と、その不確かな壁と…。」(あまらぶアートラボ、兵庫、2019)、「拆(倒)」(A4 Art Museum、成都、 中国、2018)、個展「Open Room」(アートコートギャラリー、大阪、2018)など。

 

6F 大田黒衣美(KAYOKOYUKI)

こちらの彫刻はセラミック、すなわち土からできている。自然からできたマテリアで人工物のガムというモチーフをもう一度制作するという行為は、自然と人類、世界の矛盾と共存という 同一線上にある最も遠くてかなり近い2点の関係性を表す一つのアイデアでもある。今回の展示は、セラミックの作品を複数組み合わせて、正方形の展示台に平面的なコンポジションを取ったインスタレーションとして発表する。

◯大田 黒衣美/おおたぐろえみ
1980年福岡県生まれ。東京造形大学美術学科絵画科専攻概念表現研究課程卒業後、東京藝術大学大学院修士課程油画科修了。2019年3月より、文化庁新進芸術家海外研修制度を受けベルリンを拠点に活動。現在は愛知県在住。主な展覧会に2021年「DOMANI・明日展 2021」国立新美術館(東京)、2020年個展「MESA」クンストラーハウス・ベタニアン(ドイツ・ベルリン)、2020年「MAT, Nagoya Studio Project vol. 6」Minatomachi POTLUCK BUILDING(愛知)、2017年個展「spot」KAYOKOYUKI(東京)、2016年「THE ECHO」高崎シティギャラリー(群馬)、2014年個展「project N 55」オペラシティ・アートギャラリー(東京)など。「ALLOTMENT トラベルアワード 2016」、「アートアワードトーキョー2008」にてグランプリ受賞など。

“My Pick” organized in association with CaM by Muuseo

アートフェア東京のシーズンに合わせて「アートコレクション」をテーマにした展覧会の第二弾を開催いたします。昨年は、主に自宅など個人的な場でコレクションを楽しんでいるコレクターにご協力いただきました。今回は、個人コレクションの枠を超え、オフィスや店舗といった場でアートを共有している5名のコレクターにご推薦いただいたアーティストの作品を各ギャラリーから出品し、展示いたします。

○会期   2022年3月4日(金) ‒ 13 日(日)
○営業時間:11:00-19:00、土日11:00-17:00 ○休廊:3月7日(月)
○会場:CADAN有楽町 (有楽町ビル1F)
○企画:CADAN(一般社団法人日本現代美術商協会)
○企画協力:CaM by Muuseo ○アドバイザー:深野一朗
○音声ガイド協力:ArtSticker

●My Pick Special Exhibition
コレクターが推薦するアーティストの作品を展示します。
<推薦者 – アーティスト>
阿部好世 (プティローブノアー、デザイナー) – Richard Aldrich (MISAKO & ROSEN)
大八木翼 (SIX INC.パートナー/bascule執行役員) – 鈴木理策 (タカ・イシイギャラリー)
竹内真 (ビジョナル株式会社 取締役 CTO) – 小西紀行 (ANOMALY)
成松淳 (ミューゼオ株式会社 代表取締役社長) – ミカ・タジマ (TARO NASU)
皆川伸一郎 (株式会社 ビーズインターナショナル代表取締役会長) – 空山基 (NANZUKA)
※敬称略

●”Art in a Domestic Environment/フレーム編”
CADANオリジナル動画「Art in a Domestic Environment」第二弾。フレームと一口に言ってもさまざまな種類があります。作品に適したフレームについてCADANメンバーがご案内します。
https://youtu.be/21D48zZf6GM

●CaM OVR(Online Viewing Room)
https://cam.muuseo.com/events/mypick2022

●音声ガイド
ArtStickerで本展作品について音声ガイドを公開中。

Richard Aldrich Untitled 2021 Oil and wax on panel 50.8x33cm ©the artist, courtesy of Misako & Rosen
鈴木理策 “16,4-22” 2016 Chromogenic print ©the artist, courtesy of Taka Ishii Gallery
ミカ・タジマ “Negative Entropy (Digital Ocean, NYC3, Server Rack Installation Technicians, Two-Tone Magenta, Single)” 2019 Cotton, polyester, nylon, rayon, wool acoustic baffling felt and wood ©Mika Tajima Courtesy of TARO NASU, Photo by Charles Benton, Private Collection
空山基 Sexy Robot _1/3 scale model_B 2016 Fiberglass reinforced plastics, iron, silver plating-tone air brush paint, cultured marble, ©the artist, courtesy of NANZUKA
小西紀行 “無題” 2021 Oil on canvas ©the artist, courtesy of ANOMALY

小松千倫、NAZE、西太志 -シらないともだち- by FINCH ARTS

CADAN有楽町は、京都を拠点とするFINCH ARTSの企画による小松千倫、NAZE、西太志の展覧会「小松千倫、NAZE、西太志 -シらないともだち-」を開催いたします。
本展では、芸術家・音楽家としてあらゆる感覚にアプローチする小松、ストリート的な手法を用い他者の中にある記憶を喚起するNAZE、社会的な事象に私的な想像力を重ね合わせた絵画・陶器を制作する西、3名の作品から想像力によって拡張する友愛の可能性を見たいと思います。知ることではなく知る可能性があることによる友愛を、心を通わせることが不可能な他者との共存を、いつか出会うシらないともだちの、過去に生きたものこれから生きるものについての想像力を。どうぞご高覧ください。

「小松千倫、NAZE、西太志 -シらないともだち-」by FINRCH ARTS
2022年2月8日(火)―2月27日(日)
営業時間:火~金 11時~19時 / 土、日、祝 11時~17時
月曜日休廊
作家:小松千倫、NAZE、西太志
企画:FINCH ARTS

■ART TALK supported by CVJ
FINCH ARTS ディレクターの櫻岡聡氏がCADAN有楽町から各作家を繋いでアーティストトークをライブ配信します。
2月18日(金)18:30-19:00
出演:小松千倫、NAZE、西太志
*@cadan_instaからインスタライブ配信

 

小松千倫《Endless Summer》2021, サイズ可変, 流木、LED、麻紐、16chサウンド
撮影:竹久直樹

小松千倫|Kazumichi Komatsu
1992年高知県生まれ。音楽家、美術家、DJ。情報環境下における身体の痕跡と記録、伝承について光や音といった媒体を用いて制作・研究している。主な展覧会に『Silent Category 沈黙のカテゴリー』(CCO、大阪、2021)、『Standing Ovation|四肢の向かう先』(旧ホテルニューアカオ、静岡、2021)。パフォーマンスに「SonarSound Tokyo 2013」(STUDIO COAST、東京、2013)、「ZEN 55」 (SALA VOL、バルセロナ、2018)、「Untitled」 (Silencio、パリ、2018)、PUGMENT 「Purple Plant 」(東京都現代美術館、2019)などがある。

NAZE《NAZE》

NAZE
1989年茨城県生まれ。グラフィティカルチャーをベースに、触覚的な筆致で描かれるドローイング、スプレーやコラージュを用いたペインティングや、廃棄物を使ったオブジェ、テキスタイルワークなどの作品を制作。Contact Gonzoとしても活動する。近年の主な個展に「URAGAESHI NO KURIKAESHI」ANB Tokyo(東京/2021)、「Flowers」FINCH ARTS(京都/2020)、グループ展に「Slow Culture」京都市立芸術大学ギャラリーKCUA(京都/2021)、「minus tempo」PoL gallery(大阪/2020)などがある。

西太志《Head series-金の舌-》2021, 陶土、釉薬、金彩 撮影:前端紗季

西太志|Taishi Nishi
1983年大阪府生まれ。2015年京都市立芸術大学大学院美術研究科絵画専攻油画 修了。静岡県在住。虚構と現実の境界や匿名性をテーマに、木炭によるドローイングから発展した絵画と、黒い陶土による陶作品や衣類に泥を塗り込み、焼成した立体作品を制作している。主な展覧会に、「第14回 shiseido art egg 西太志展〈GHOST DEMO〉」資生堂ギャラリー(東京/2020)、「月の裏側を見る」FINCH ARTS(京都/2020)、「西太志+矢野洋輔 〈居心地の良さの棘〉」8/ART GALLERY TOMIO KOYAMA GALLERY(東京/2017-18)などがある。