利部志穂 ⾔霊のさきわう地 − 天照、へリオス、カーネの夢

Top image: 《水平考》2021、アルミニウム、リボン、ヘリウムガス他、サイズ可変 Photo 若林勇人


会期:2024年6月25日(火)〜7月14日(日)
企画:KAYOKOYUKI

会場:CADAN有楽町 Space L
住所:東京都千代田区丸の内3-1-1 国際ビル1階
営業時間:火〜金 11-19時 土、日、祝 11-17時
定休日:月(祝日の場合は翌平日)

レセプション・パーティー 6月25日(火)17:00-19:00

同時開催:
池崎拓也「シーマップ:レシーブアンドリリース」by Satoko Oe Contemporay
ズザナ・バルトシェック ‘Show Room’ by Tenko Presents

利部は、壊れた拾得物や、建築資材など、様々なモノを使用して彫刻作品を制作しています。作品においては、それらのモノが有する日常的な意味や機能は解体され、組み合わされることによって新たな 関係性が形成され、空間の中に置かれていきます。「人間が定義したルールは疑うけれど、地球的・宇宙的なルールを信じる」と言う利部は、モノに近づき、モノが発する声を聞きながら、その一部となって、自然の摂理とも言える生成や循環を展示空間に構築します。

本展では、アルミニウムと風船の作品を、形を変えながら展示していきます。タイトルは、万葉集の 「言霊の幸わう国」という言葉から引用されており、元来美しい言葉、言霊の力に溢れた幸わせな国と読まれた日本のように、豊かな地をつくり、世界に広がっていくように。という作者の願いから付けられています。また副題に古事記やギリシャ神話、ハワイ神話においての太陽にまつわる神々をあげています。作品の中でバランスを重要視する利部は、3.11をきっかけに地震を始めとする天災への関心と、出産や子育ての経験から身体性を含む自然としての認識を高めました。以前からの「時間」 と「変化」への関心に加え、比較神話学や地形の共通点から地球を考える。ということを、日常の料理や散歩、旅や生活の中から、この十数年に渡り行なってきました。実際に利部は、火山地帯の日本の海と山や、イタリア、ハワイ、最近はギリシャのクレタ島、サントリーニ島に足を運び、歩いて、泳いで、木の実を口にすることで、水の違いや気候、風土や文化に触れながら、時間を考え、時にイメージや物語の有効性も感じていきます。彫刻という作品の創作を考えながら、様々な物のやり取りや、環境の変化、物理的な条件などとの共通言語を探っていきます。

conditions.
⾔霊のさきわう地
―天照、へリオス、カーネの夢
Splash of Sunlight
透明な海の波間に落ちた太陽の光の輝き、⼟から吸い上げた⽔が葉の裏側から雫になって連なる塊、 アスファルトに沈んだ影と視界を覆う砂埃と。
ダルダロスの知恵を借りて、家を捨てテセウスを逃がし、⽤が済んだら途中の島に捨てられ置いて⾏かれた悲しいアリアドネ。固めた⽻根で脱出したダルダロスと、息⼦イカロスの顛末。
地球上の様々な⾵⼟や⾵景の中から、古来各地で共通する神話や⺠話が語り継がれてきた。多くの闘いの神と、知恵や技術を司どる神々と動植物のアイコン。⾃然の恵みへの感謝と脅威からの供儀と祭り。
道徳⼼などおおよそ無視された、欲望のまま突き進むわがままな神々の振る舞いに憧れすら感じる現代⼈の閉塞感の打破と、今とこれから、未来へ向けての、笑いと思考のヒントを渡してくれる。
度々、⾔霊の存在について考える。あらゆる願いや祈りとしての⾔葉が書かれ、語られ、投げかけられて、道具として機能させるのではなく、実体のようなもの。
誰かの名前を呼ぶ時、⼤切に発声して贈り出します。
殆どの場合は適切な詞が思いついても、すぐには相⼿に(⼈間に限らず)うまく届けることができない。相互から発せられる熱量や時間と⾊の波形によって、上⼿く発語することはできず、独り⾔のようなおしゃべりの傍ら、落ちて、固まっていきます。
時に、お気に⼊りの美しい歌が浮かび、⼼を鎮めて、誰にでもなく、光の美しさを喜ぶように、細やかな祈りとして唄います。⽬の前の些細な⽅法で、物理的にある限界に⽻を折られながら、 様々なものに⼿を触れて動かすことで、この今という現実で⽬撃し体感することが、今は創作の意味のように感じています。
⾒て、触れて、歌い、祈ること。
消えかけた魂が、怒りではなくて、⽕を灯し湧き上がるエネルギーとなるように。
波をかき分けて触れる指や⼿の感触や、⼩⽯を岩に投げて観察するように、浮⼒と重⼒に触れて、地球上の動⼒や⼤気を考え、宇宙の中の存在についてやりとりする。
種としての命の選択が⾏われた⼈類は、限りある⽣を実感し、燃やすことが出来るだろうか。

2024.05.14 利部志穂

プロフィール
利部志穂 Shiho Kagabu
1981年神奈川県生まれ。文化女子大学立体造形コース卒業後、多摩美術大学大学院美術研究科 彫刻専攻修了。2017年より文化庁新進芸術家海外研修制度の助成を得て、2年間ミラノを拠点に活動。現在は東京都在住。
個展「水平考 ぼくは、空飛ぶ、夢をみる。ホシが、泪が、流れない。」多摩美術大学彫刻棟ギャ ラリー(東京、2021)、「DOMANI・明日展 2021」国立新美術館(東京、2021)、「メイド・イ ン・フチュウ 公開制作の20年」府中市美術館(東京、2020)、個展「マントルプルーム ― イザナ ミ、ペレの怒り。」KAYOKOYUKI(東京、2019)、個展「Dipende」Tempio del Futuro Perduto(ミラノ、イタリア、2018)、 個展「クリティカルポイント-critical point-」 gallery21yo-j(東京、 2017)、「所沢ビエンナーレ “引込線2015”」旧所沢市立第2学校給食 センター(埼玉、2015)、「KAKEHASHI Project」Japan Society(ニューヨーク、2014)、 「アーティスト・ファイル2013ー現代の作家たち」国立新美術館(東京、2013)、「発信 //板 橋//2011 けしきをいきる」板橋区立美術館(東京、2011)、「VOCA展2010」上野の森美術 館(東京、2010)、個展「返る 見る 彼は、川を渡り、仕事へ向かう公開制作51」府中市美術館 (東京、2010)、「back to the drawing board]”もう一度始めから再構築する”」geh8 Kunstraum und Ateliers e.V.(ドイツ、2010)など。

《水平考》 2021、アルミニウム、リボン、ヘリウムガス、他、サイズ可変 photo 若林勇人