高橋大輔「アシャン」 by ANOMALY

Top image: 高橋大輔《アシャン》2023 パネルに油彩、合成樹脂、アクリル

開催期間:2023年8月8日(火)〜27日(日)
開廊時間:火〜金 11:00 – 19:00 / 土・日・祝 (11日・金) 11:00 -17:00 / 休廊日:月曜日
会場:CADAN有楽町

◎オープニングレセプション
8月8日(火)18:00〜

◎トークイベント
8月23日(水)19:00〜20:30
出演:長谷川新(インディペンデントキュレーター)、五月女哲平(アーティスト)、高橋大輔(アーティスト)
@cadan_insta からインスタライブ配信あり

この度CADAN有楽町では、東京・天王洲を拠点とするANOMALYによる高橋大輔の個展「アシャン」を開催します。

高橋大輔は1980年埼玉県生まれ。2005年に東京造形大学造形学部美術学科絵画専攻領域を卒業、現在は埼玉県を拠点に活動しています。東京都美術館や埼玉県立近代美術館、東京オペラシティアートギャラリー、太田市美術館などでの展覧会に参加するなど、高橋の一貫した「絵画」における表現の探求は広く高い評価を受けてきました。

高橋はこれまで、絵の具をチューブから直接出しながら画面構成を行う、いわゆる厚塗り絵画を長年制作してきました。それらの作品群は、絵画が二次元上でのイリュージョンの世界であると同時に、支持体と絵の具という物質による、あくまでも三次元空間に存在する「もの」による現実であり、その意味で我々鑑賞者と高橋の作品との間には、身近に感じられると同時に近寄りがたい、といった緊張関係がありました。高橋の絵画は、イリュージョン世界と実体のある世界との中間者として存在していたのです。

高橋大輔《アシャン》2022 キャンバスに油彩、天然樹脂

この度の個展「アシャン」では、そういったこれまでの高橋の絵画シリーズとは大きく異なる作品が揃います。端的に言えばこのシリーズにより、「もの」から「イメージの世界」へと高橋の仕事の位相が移動したのです。

ここで気になる「アシャン」とは、高橋がたまに利用する近所のコンビニで働いていた、スタッフの方の名前です。高橋は手際よく仕事をこなし、心地よい接客をするアシャンさんに好感を持っていましたが、ふと彼のことを何も知らないことに気がつきました。同時にその瞬間アシャンさんの存在は、高橋にとって新たな創作活動の引き金となりました。高橋は「アシャン」制作を通じて、アシャンという実際の人物と、何も知らないがゆえに高橋によって形成されるイメージのアシャンとの間を往き来していくのです。それはこれまでの即物的な高橋の仕事には見られなかった、より精神性の強い創作であることが分かります。

そんな「アシャン」シリーズで使用される色は非常に限定されており、基本的にはブルー一色。その理由はアシャンさんが某コンビニの店員で、ブルーとホワイトの縞の制服を着ているからという至極単純な理由や、アシャンさんが空を越え、海を越え、はるかなるこの地で高橋と出会った、という高橋の想像からふと浮かんだイメージが彼に選択させています。
また同シリーズでは、高橋が繰り返し行なってきたかつての厚塗りの要素はなく、キャンバスに筆を置くという反復や、線を伸び伸びと引くという行為の結果となっています。その仕事はまるで音楽的です。音を繰り返し奏でることで、抽象度の高い、精神性に富んだ作品が生まれるように、しかし高橋のそれは、まるでサビもなければエンディングもない楽曲のような姿をしています。

「アシャン」シリーズが壁に掛かっている高橋のアトリエの様子

描くことで彼がアシャンを理解することはできないでしょう。しかしだからこそこの作品群は魅力的なのです。核心に迫るのではなく(そもそも核心なんてものがあるのか)、画面からも中心軸や作家による任意の消失点が消えているように、あくまでも周縁をなぞるようにして生まれる「アシャン」シリーズは、鑑賞者に観て考えるだけの余白を与え、心地よい鑑賞体験を許します。

まだまだ厳しい夏の暑さが続きますが、ブルーとホワイトで構成された高橋の最新作と共に、こころ(精神)から涼んで頂ければ幸いです。

同時開催:
高橋大輔 個展
アシャン (Ashan)
2023年8月23日 ~ 9月10日
Art Center Ongoing、吉祥寺
https://www.ongoing.jp/upcoming/ashan/

お問い合わせ先:
ANOMALY
〒140-0002 東京都品川区東品川1-33-10 Terrada Art Complex 4F
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