利部志穂 ⾔霊のさきわう地 − 天照、へリオス、カーネの夢

Top image: 《水平考》2021, Aluminium, helium, ribbon, dimensions variable photo Hayato Wakabayashi


会期:2024年6月25日(火)〜7月14日(日)
企画:KAYOKOYUKI

会場:CADAN有楽町 Space L
住所:東京都千代田区丸の内3-1-1 国際ビル1階
営業時間:火〜金 11-19時 土、日、祝 11-17時
定休日:月(祝日の場合は翌平日)

レセプション・パーティー 6月25日(火)17:00-19:00

同時開催:
池崎拓也「シーマップ:レシーブアンドリリース」by Satoko Oe Contemporay
ズザナ・バルトシェック ‘Show Room’ curated by Tenko Presents (KAYOKOYUKIゲスト企画)

この度6月25日(火)よりCADAN有楽町にて、利部志穂(かがぶ・しほ)による個展「言霊のさきわう地 −天照、へリオス、カーネの夢」を開催いたします。

利部は、壊れた拾得物や、建築資材など、様々なモノを使用して彫刻作品を制作しています。作品においては、それらのモノが有する日常的な意味や機能は解体され、組み合わされることによって新たな関係性が形成され、空間の中に置かれていきます。「人間が定義したルールは疑うけれど、地球的・宇宙的なルールを信じる」と言う利部は、モノに近づき、モノが発する声を聞きながら、その一部となって、自然の摂理とも言える生成や循環を展示空間に構築します。

本展では、アルミニウムと風船の作品を、形を変えながら展示していきます。タイトルは、万葉集の「言霊の幸わう国」という言葉から引用されており、元来美しい言葉、言霊の力に溢れた幸わせな国と読まれた日本のように、豊かな地をつくり、世界に広がっていくように。という作者の願いから付けられています。また副題に古事記やギリシャ神話、ハワイ神話においての太陽にまつわる神々をあげています。作品の中でバランスを重要視する利部は、3.11をきっかけに地震を始めとする天災への 関心と、出産や子育ての経験から身体性を含む自然としての認識を高めました。以前からの「時間」と「変化」への関心に加え、比較神話学や地形の共通点から地球を考える。ということを、日常の料理や散歩、旅や生活の中から、この十数年に渡り行なってきました。実際に利部は、火山地帯の日本の海と山や、イタリア、ハワイ、最近はギリシャのクレタ島、サントリーニ島に足を運び、歩いて、泳いで、木の実を口にすることで、水の違いや気候、風土や文化に触れながら、時間を考え、時にイメージや物語の有効性も感じていきます。彫刻という作品の創作を考えながら、様々な物のやり取りや、環境の変化、物理的な条件などとの共通言語を探っていきます。

言霊のさきわう地
―天照、へリオス、カーネの夢

Splash of Sunlight
透明な海の波間に落ちた太陽の光の輝き、土から吸い上げた水が葉の裏側から雫になって連なる塊、
アスファルトに沈んだ影と視界を覆う砂埃と。

ダルダロスの知恵を借りて、家を捨てテセウスを逃がし、用が済んだら途中の島に捨てられ
置いて行かれた悲しいアリアドネ。固めた羽根で脱出したダルダロスと、息子イカロスの顛末。

地球上の様々な風土や風景の中から、古来各地で共通する神話や民話が語り継がれてきた。
多くの闘いの神と、知恵や技術を司どる神々と動植物のアイコン。自然の恵みへの感謝と脅威からの供儀と祭り。
道徳心などおおよそ無視された、欲望のまま突き進むわがままな神々の振る舞いに憧れすら感じる現代人の
閉塞感の打破と、今とこれから、未来へ向けての、笑いと思考のヒントを渡してくれる。

度々、言霊の存在について考えます。
あらゆる願いや祈りとしての言葉が書かれ、語られ、投げかけられて、
道具として機能させるのではなく、実体のようなもの。誰かの名前を呼ぶ時、大切に発声して贈り出します。
殆どの場合は適切な詞が思いついても、すぐには相手に(人間に限らず)うまく届けることができない。
相互から発せられる熱量や時間と色の波形によって、上手く発語することはできず、
独り言のようなおしゃべりの傍ら、落ちて地面に固まっていきます。

時に、お気に入りの美しい歌が浮かび、心を鎮めて、誰にでもなく、
光の美しさを喜ぶように、細やかな祈りとして唄います。
目の前の些細な方法で、物理的にある限界に羽を折られながら、様々なものに手を触れて動かすことで、
この今、という現実で目撃し、体感することが、今は創作の意味のように感じています。
見て、触れて、歌い、祈ること。

消えかけた魂が、怒りではなくて、火を灯し湧き上がるエネルギーとなるように。
波をかき分けて触れる指や手の感触や、小石を岩に投げて観察するように、
浮力と重力に触れて、地球上の動力や大気を考え、宇宙の中の存在についてやりとりする。
言葉の魂があふれる幸せな地が広がって、
種としての命の選択が行われた人類は、限りある生を実感し、燃やすことが出来るだろうか。

2024.05.14 利部志穂

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「言霊の幸はふ国」『万葉集』(巻 5-894) 山上臣憶良
「磯城島の大和の国は 言霊の助くる国ぞ ま幸くありこそ」
「この日本の国は ことばの魂が人を助ける国であるよ。無事であってほしい。」 『万葉集』(巻 13-3254) 柿本人麻呂

プロフィール
利部志穂 Shiho Kagabu

1981年神奈川県生まれ。文化女子大学立体造形コース卒業後、多摩美術大学大学院美術研究科彫刻専攻修了。2017年より文化庁新進芸術家海外研修制度の助成を得て、2年間ミラノを拠点に活動。現在は東京都在住。
個展「水平考 ぼくは、空飛ぶ、夢をみる。ホシが、泪が、流れない。」多摩美術大学彫刻棟ギャラリー(東京、2021)、「DOMANI・明日展 2021」国立新美術館(東京、2021)、「メイド・イン・フチュウ 公開制作の20年」府中市美術館(東京、2020)、個展「マントルプルーム ― イザナミ、ペレの怒り。」KAYOKOYUKI(東京、2019)、個展「Dipende」Tempio del Futuro Perduto(ミラノ、イタリア、2018)、 個展「クリティカルポイント-critical point-」gallery21yo-j(東京、2017)、「所沢ビエンナーレ “引込線2015”」旧所沢市立第2学校給食センター(埼玉、2015)、「KAKEHASHI Project」Japan Society(ニューヨーク、2014)、「アーティスト・ファイル2013ー現代の作家たち」国立新美術館(東京、2013)、「発信 //板橋//2011 けしきをいきる」板橋区立美術館(東京、2011)、「VOCA展2010」上野の森美術館(東京、2010)、個展「返る 見る 彼は、川を渡り、仕事へ向かう公開制作51」府中市美術館(東京、2010)、「back to the drawing board]”もう一度始めから再構築する”」geh8 Kunstraum und Ateliers e.V.(ドイツ、2010)など。

http://www.kagabu.com/

水平考 2021 Aluminium, helium, ribbon, dimensions variable photo Hayato Wakabayashi

Remaining Fragments: Yasutake Iwana, Yasuko Hirano, and Naoko Matsumoto

この度、CADAN有楽町新スペースにて、岩名泰岳(いわなやすたけ)、平野泰子(ひらのやすこ)、松本奈央子(まつもとなおこ)による展覧会「Remaining Fragments: Yasutake Iwana, Yasuko Hirano, and Naoko Matsumoto」を開催いたします。
今展で紹介する3名の画家は、それぞれが異なる起点から導き出した独自の手法で絵画制作に取り組んでいます。岩名は三重県伊賀市島ヶ原(旧島ヶ原村)という山間集落に今も残る土地の記憶やそこに生きる(生きた)人々の営みを描き残し、平野は自身の根底にある「風景」を起点に、3原色の絵の具を塗り重ねる行為とそこから立ち上がるイメージや形を画面に繋ぎ止め、松本は手掛かりとなるモチーフを描画していく過程の中で作家の琴線に触れた色彩と形を抽出するかのように描き切ります。今展は、3人が対話を重ねていく中で浮かび上がった「記憶の断片(残余)」という共通認識のもと構成されます。是非、この機会にご高覧賜りますようお願い申し上げます。

開催概要
「Remaining Fragments: Yasutake Iwana, Yasuko Hirano, and Naoko Matsumoto」
会期:2024年6月4日(火)~6月23日(日)

出展作家:
岩名泰岳 | Yasutake Iwana
平野泰子 | Yasuko Hirano
松本奈央子 | Naoko Matsumoto

企画:タグチファインアート(東京)、KOKI ARTS(東京)、TEZUKAYAMA GALLERY(大阪)

◉6月4日(火)トークイベント&レセプションパーティー
18:00-19:00 トークイベント 
登壇者:市原研太郎(美術批評家)、岩名泰岳、平野泰子、松本奈央子
市原研太郎氏をお招きし、出展アーティストによるギャラリートークを開催します。
参加方法:当日会場に直接お越しください。席数に限りがあり(20席)立ち見になる可能性もありますことをご了承ください。
19:00-20:00 レセプションパーティー 

会場:CADAN有楽町
住所:東京都千代田区丸の内3-1-1国際ビル1階
営業時間:火〜金 11-19時 土、日、祝 11-17時
定休日:月(祝日の場合は翌平日)

作家プロフィール

岩名泰岳 Yasutake Iwana
1987年三重県生まれ。三重県在住。成安造形大学造形学部造形美術科洋画クラスを卒業。2010年〜2012年までデュッセルドルフ芸術アカデミー(ドイツ)で絵画を学ぶ。岩名は過疎化によって消滅した集落で育ち、そこに生きる人々の生活や残された古い信仰の断片などを拾い集め、それらの手触りのようなものを形にした絵画を制作している。
主な個展に「みちつくり」 (タグチファインアート / 2023)、「みんなでこわしたもの」 (タグチファインアート / 2021)、「<七ツノ華>より」 (ギャラリーあしやシューレ / 2017)、「オイテケボリノキミニキセキヲ」(ギャラリーほそかわ / 2016)、「観音山」(MA2 Gallery / 2015)など。
主なグループ展に「VOCA展 2023」(上野の森美術館 / 2023)、「ほんせん/元永定正 岩名泰岳」(MA2 Gallery / 2022)、「ステイミュージアム」(三重県立美術館 / 2020)、「青森EARTH2019: いのち耕す場所−農業がひらくアートの未来」(青森県立美術館 / 2019)など。

岩名泰岳《あたらしい家》 2022年 油彩、砂、キャンバス、227.3 × 162.0 cm、撮影:上野則宏

平野泰子 Yasuko Hirano
1985年富山県生まれ、神奈川県在住。京都精華大学芸術学部造形学科洋画専攻を卒業。 作品の根底には「風景」があるが、絵の具を幾層にも塗り重ねる行為によって生まれる空間や現象に注目するようになる。制作の中から生まれる眼差しや不確かなものに強度を持たせるために制作している。 主な個展に「Gesture」 (ARTDYNE / 2024)、「山では無く頂が平面であること」 (TEZUKAYAMA GALLERY /2023)、「Yasuko Hirano: Unfold Room」(Gallery stoop / 2020)、「不確かな地図」 (CALM&PUNK GALLERY/ 2018)、「呼びかけられる」(Gallery PARC / 2018)。主なグループ展に「La Promesse d’Avril – 4月の萌」(MtK Contemporary Art / 2024)、「New Positions 2021」(taguchi fine art / 2021)、「VOCA 展 2015」(上野の森美術館 / 2015)など。

平野泰子 《Sending》2024年、1167×910mm、木製パネルにキャンバス、膠、石膏、油彩
Private Collection
Courtesy of TEZUKAYAMA GALLERY

松本奈央子 Naoko Matsumoto
1987年栃木県生まれ、埼玉県在住。多摩美術大学美術学部絵画学科油画専攻卒業(2012年)、 文化庁新進芸術家海外研修員1年派遣、ドイツ、ミュンスター芸術大学(2017-2018年)。
主な個展に「“Memoria! Fantasia.”」 (KOKI ARTS / 2022)、「petal/stair/day」 (クンストフェラインシャルシュタット[ドイツ バーデン=ヴュルテンベルク州] / 2021)。主なグループ展に「ドローイング・ショウ」(あをば荘 / 2023)、「しかくのなかのリアリティ あざみ野コンテンポラリーVol.10」(横浜市民ギャラリーあざみ野 / 2019)など。

松本奈央子 《Violet》2022年、426mm×458m、油絵具、膠、キャンバス

CADAN有楽町 移転記念展 by 青山|目黒 & ANOMALY

この度、一般社団法人日本現代美術商協会(CADAN)は、一般財団法人カルチャー・ヴィジョン・ジャパンおよび三菱地所株式会社のご協力をいただき、丸の内仲通りに面した国際ビルにて「CADAN有楽町」を再始動する運びとなりました。3週間ごとの期間で、丸の内仲通りに面した2スペースと、ビル内のショウウィンドウで、メンバーギャラリーによる企画展を開催いたします。どうぞご期待ください。

新スペースでの記念すべき第一回目の展覧会は、青山|目黒とANOMALYによる共同企画、金田実生、小林耕平、森田浩彰、ハビマ・フックスの4人展です。双方のギャラリーより主に近く個展予定の作家を選抜し、未発表作、新作等にて構成いたします。

開催概要
「CADAN有楽町 移転記念展 by 青山|目黒 & ANOMALY」
出展作家:金田実生、小林耕平、森田浩彰、ハビマ・フックス
2024年5月14日(火)- 6月2日(日)

オープニングレセプション:5月14日(火)18:00-20:00
*ハビマ・フックス以外の3名の作家が同席し、18:30ごろより各作家による作品解説をいたします。

会場:CADAN有楽町
住所:東京都千代田区丸の内3-1-1国際ビル1階(MAP
営業時間:火〜金 11-19時 土、日、祝 11-17時
定休日:月(祝日の場合は翌平日)

[作家プロフィール]
金田実生 Mio Kaneda
1963年東京都生まれ。1988年多摩美術大学大学院修了。2005年文化庁新進芸術家国内研修員。主に紙とキャンバスに油彩画を制作。見えないけれど確かに存在するもの、存在が可視できるもの、そして絵の中にだけ存在するものを考え絵画へと昇華させている。主な展覧会に、「アーティスト・ファイル2009―現代の作家たち」(国立新美術館、東京)、「クインテット―五つ星の作家たち」(損保ジャパン東郷青児美術館、東京 2014)、公開制作73「金田実生 青空と月」(府中市美術館、東京、2018)、「みつめる―見ることの不思議と向き合う作家たち―」(群馬県立館林美術館、2019)、「眼差しに熱がこぼれる」(東京都美術館、2022)、「つくりかけラボ11 | 線の王国」(千葉市美術館、2023)など。府中市美術館、群馬県立館林美術館、文化庁、広島市現代美術館、徳島県立近代美術館などに作品が収蔵されている。本展では、日々の身近な情景にある気配やエネルギーをあらわした作品など未発表作品も含めて展示します。

金田実生《夜がつくりだすかたち》2023、紙に油彩、H145xW151.5cm
Courtesy of ANOMALY Photo by Hideto Nagatsuka *参考画像

小林耕平 Kohei Kobayashi
1974年東京都生まれ。愛知県立芸術大学美術学部油画科卒業。
オブジェクトやドローイング、テキストが相互に影響し合う軽妙なインスタレーションと、パフォーマンスや対話の様子を記録した映像作品を構成し、会場全体を通して能動的な鑑賞を誘う作品で知られる。近年では黒部美術館での個展、金沢21世紀美術館や国立近代美術館での展覧会に参加。パブリックコレクションに、東京国立近代美術館、豊田市美術館、韓国国立現代美術館がある。今回の展示では、新しい平面作品のシリーズを発表、ユーモラスに絵画を問う。

小林耕平 《Open #7》2024、キャンバスにアクリル、インスタントヌードルの蓋、H53xW53cm、Courtesy of ANOMALY Photo by Osamu Sakamoto *参考画像

森田浩彰 Hiroaki Morita
1973年福井県生まれ。1998年Bゼミスクール修了。2002年ロンドン大学ゴールドスミスカレッジMAファインアート修了。生活の中で当たり前に存在しているが特に意識されない物事に注意を向け、それらの中に折り重なっているコンテクストや関係性を可視化させる作品を制作している。主な展覧会に「Triple Point of Matter」(Fondation Fiminco,パリ,2017年)、「Something to Something else」青山|目黒、東京、2016年)等がある。今展ではコロナ禍で制作した100点以上のコラージュ作品の中から数点を初発表します。

森田浩彰 《Untitled (Collage)》 2020、雑誌の切り抜きをコラージュ、255mm×160mm

ハビマ・フックス Habima Fuchs
1977年生まれ。チャスラフ(チェコ共和国)在住。
様々な文化からモチーフやシンボルを分析し、キリスト教の図像と、特に仏教から得た東洋の宗教的イメージを自由に組み合わせている。ここ数年は陶芸の原初的な側面に惹かれ、乾燥植物、小枝、竹の棒などの自然物と組み合わせたり、つなげたりしている。今展では象徴的なドローイング作品と竹に描いたペインティングを展示予定です。

Habima Fuchs 《The Great Ocean Continuously Creating》 2019、ink and colored pencil on canvas、 297 x 210 mm (each)

CADAN有楽町(有楽町ビル)は閉廊いたしました

CADAN有楽町は、有楽町ビルの解体工事に伴い、2023年10月29日をもって閉廊いたしました。2020 年7月のオープン依頼、約3年間3週間ごとに入れ替わりながら、50を超える展覧会を開催いたしました。これまでお力添えいただいた皆様、そして各回ご来廊くださった皆様には心から感謝申し上げます。

今後もCADANは日本の現代美術の進行に寄与すべく活動を続けて参りますので、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

“MEMORIES 03” selected by Hozu Yamamoto

橋本聡「円グラフ:全てと他」 Pie Charts: Everything and Others, 2014 / 2016, Anodized printing on aluminum plates, ф30 cm x 0.2 cm (each) Ed.2, Photo: 藤川琢史, Courtesy of Aoyamma Meguro

CADAN有楽町ラスト展シリーズ
“MEMORIES 03” selected by Hozu Yamamoto
2023年10月11日(水)-10月29日(日)
開廊時間:火 – 金 11:00 – 19:00 / 土・日 – 17:00 / 休廊日:月

○レセプション&CADAN有楽町クロージングパーティ
10月18日(水)18:00〜20:00

CADAN有楽町最後のささやかなパーティを行います。ぜひご参加ください。

この度、有楽町ビルの閉館に伴い、10月末をもってCADAN有楽町は3年間の活動に幕を下ろすこととなりました。

2020年のオープンの際は、ミッドキャリアの4名のメンバー(芦川朋子[WAITINGROOM]、大柄聡子[Satoko Oe Contemporary]、 COBRA[XYZ collective]、志賀良和[Sprout Curation])によるキュレーション展”Show Case”シリーズでスタートいたしました。それから3週間ごとに入れ替わりながら、50を超える展覧会を開催いたしました。これまでお力添えいただいた皆様、そして各回ご来廊くださった皆様には心から感謝申し上げます。

最後の3回は、シニアキャリアのメンバー(井上佳昭[Yoshiaki Inoue Gallery]、小山登美夫[小山登美夫ギャラリー]、山本豊津[東京画廊+BTAP])によるセレクション展で締めくくります。メンバーギャラリーから1名ずつ、アーティストもギャラリーも若手から大御所までが参加するCADANらしい展覧会となります。CADAN有楽町の思い出と共にお楽しみいただけましたら幸いです。

「ものからことばへ」
アートを見ることは、まず見る人が5つの感覚器官を介してもの(物質)である作品を体感することから始まり、体感して得た情報をことば(アートの歴史)として認識できた時に鑑賞という形而上的な体験に至る出来事です。このたびの私のセレクションでは、ものとことばのバランスが私の心にしっくりと受けとめられた作品を選びました。

-山本豊津(東京画廊+BTAP )

“MEMORIES 03” selected by Hozu Yamamoto
安部悠介 Yusuke Abe (4649)
リオネル・エステーヴ Lionel Estève (PERROTIN)
大庭大介 Daisuke Ohba (SCAI THE BATHHOUSE)
北川宏人 Hiroto Kitagawa (Yoshiaki Inoue Gallery)
杉浦邦恵 Kunié Sugiura (Taka Ishii Gallery)
鈴木基真 Motomasa Suzuki (Takuro Someya Contemporary Art)
髙畠依子 Yoriko Takabatake (ShugoArts)
竹崎和征 Kazuyuki Takezaki (MISAKO & ROSEN )
田中和人 Kazuhito Tanaka (KANA KAWANISHI GALLERY)
寺田真由美  Mayumi Terada (Gallery OUT of PLACE)
中井波花 Namika Nakai(TARO NASU)
ノリ服部 Nori Hattori (Sprout Curation)
橋本聡 Satoshi Hashimoto (Aoyama Meguro)
早川祐太 Yuta Hayakawa (HAGIWARA PROJECTS)
益永梢子 Shoko Masunaga (Maki Fine Arts)
ヴェロニカ・ライアン Veronica Ryan (Galerie Saint Guillaume )*特別会員

“MEMORIES 02” selected by Tomio Koyama

Top image: 川井雄仁《デザイナー》(英: Yukari Ichijo) 2023, ceramic, H43.5 W32 D32 (cm) courtesy of KOTARO NUKAGA

CADAN有楽町ラスト展シリーズ
“MEMORIES 02” selected by Tomio Koyama
2023年9月20日(水) – 10月8日 (日)
開廊時間:火 – 金 11:00 – 19:00 / 土・日 – 17:00 / 休廊日:月

○レセプションパーティ
9月26日(火)18:00〜

ささやかなパーティを行います。ぜひご参加ください。

この度、有楽町ビルの閉館に伴い、10月末をもってCADAN有楽町は3年間の活動に幕を下ろすこととなりました。

2020年のオープンの際は、ミッドキャリアの4名のメンバー(芦川朋子[WAITINGROOM]、大柄聡子[Satoko Oe Contemporary]、 COBRA[XYZ collective]、志賀良和[Sprout Curation])によるキュレーション展”Show Case”シリーズでスタートいたしました。それから3週間ごとに入れ替わりながら、50を超える展覧会を開催いたしました。これまでお力添えいただいた皆様、そして各回ご来廊くださった皆様には心から感謝申し上げます。

最後の3回は、シニアキャリアのメンバー(井上佳昭[Yoshiaki Inoue Gallery]、小山登美夫[小山登美夫ギャラリー]、山本豊津[東京画廊+BTAP])によるセレクション展で締めくくります。メンバーギャラリーから1名ずつ、アーティストもギャラリーも若手から大御所までが参加するCADANらしい展覧会となります。CADAN有楽町の思い出と共にお楽しみいただけましたら幸いです。

“MEMORIES 02” selected by Tomio Koyama

今回、CADAN有楽町の最後の展示として、シニアのギャラリーのオーナーがCADANのギャラリーのアーティストから選んで展示をする!という企画が持ち上がりました。四半世紀前はチビッコギャラリーと呼ばれていた私もその一人として、選ぶ立場になってしまいました。CADANのギャラリーからギャラリーを選択するのは理事のMisako Rosenさんがしてくださり、選ばれた18軒のギャラリーから1人、アーティストを選ぶという仕事で、大変面白くさせてもらいました。当たり前ですが、それぞれのギャラリーのアーティストは重ならず、それぞれが自分たちのギャラリーを形作っていて、最終的にサイトから選ぶことになったのですが、ほんとに様々な形があるのだなとつくづく思い知った次第です。
私が選ぶ基準は、こんな感じです。アーティストの名前は敬称略で申し訳ありません。自分がコレクションしているアーティスト(藤原康博、八木良太、田中秀介、黄品玲、デイヴィッド・シュリグリー)、ずっと見続けて尊敬しているアーティスト(秋山陽、寺崎百合子、北山善夫、吉本作次)、まだそんなに見ているわけではないのですが、気になるアーティスト(樂雅臣、植松永次、鈴木親、川井雄仁、李鎮雨)、若い頃に審査で会ったことがあるアーティスト(水谷昌人、後藤靖香)、そして、亡くなってしまった想像力豊かな2人のアーティスト(池田龍雄、設楽知昭)となります。

– 小山登美夫

秋山陽 Yo Akiyama(アートコートギャラリー)
池田龍雄 Tatsuo Ikeda(Fergus McCaffrey Tokyo)
植松永次 Eiji Uematu(Gallery 38)
北山善夫 Yoshio Kitayama(MEM)
川井雄仁 Kazuhito Kawai(KOTARO NUKAGA)
後藤靖香 Yasuka Goto(帝塚山ギャラリー)
設楽知昭 Tomoaki Shitara(Standing Pine)
デイヴィッド・シュリグリー David Shrigley(Yumiko Chiba Associates)
鈴木親 Chikashi Suzuki (KOSAKU KANECHIKA)
田中秀介 Shusuke Tanaka(LEESAYA)
寺崎百合子 Yuriko Terazaki (ギャラリー小柳)
藤原康博 Yasuhiro Fujiwara(モリユウギャラリー)
黃品玲 Pin-Ling Huang(nca nichido contemporary art)
水谷昌人 Masato Mizutani(Finch Arts)
八木良太 Lyota Yagi(無人島プロダクション)
吉本作次 Sakuji Yoshimoto(KENJI TAKI GALLERY)
樂雅臣 Masaomi Raku(イムラアートギャラリー)
李鎮雨 Lee JinWoo(東京画廊)

“MEMORIES 01” selected by Yoshiaki Inoue

三瓶玲奈 “色を編む Weaving the color”, 2022, Oil on canvas, 31.8 x 41 cm (c) the artist, Courtesy of Yutaka Kikutake Gallery

CADAN有楽町ラスト展シリーズ
“MEMORIES 01” selected by Yoshiaki Inoue
2023年8月30日(水) – 9月17日 (日)
開廊時間:火 – 金 11:00 – 19:00 / 土・日 – 17:00 / 休廊日:月

この度、有楽町ビルの閉館に伴い、10月末をもってCADAN有楽町は3年間の活動に幕を下ろすこととなりました。

2020年のオープンの際は、ミッドキャリアの4名のメンバー(芦川朋子[WAITINGROOM]、大柄聡子[Satoko Oe Contemporary]、 COBRA[XYZ collective]、志賀良和[Sprout Curation])によるキュレーション展”Show Case”シリーズでスタートいたしました。それから3週間ごとに入れ替わりながら、50を超える展覧会を開催いたしました。これまでお力添えいただいた皆様、そして各回ご来廊くださった皆様には心から感謝申し上げます。

最後の3回は、シニアキャリアのメンバー(井上佳昭[Yoshiaki Inoue Gallery]、小山登美夫[小山登美夫ギャラリー]、山本豊津[東京画廊+BTAP])によるセレクション展で締めくくります。メンバーギャラリーから1名ずつ、アーティストもギャラリーも若手から大御所までが参加するCADANらしい展覧会となります。CADAN有楽町の思い出と共にお楽しみいただけましたら幸いです。

“MEMORIES 01” selected by Yoshiaki Inoue

世界的に女性アーティストの再評価が行われるなか、本展では『多様性と共感』をテーマに、各ギャラリーの女性アーティストたちがそれぞれの視点から表現した作品を展示します。絵画、彫刻、写真など、様々なメディアを含め、多岐にわたるアート作品をご覧ください。– 井上佳昭

石内都 Ishiuchi Miyako (The Third Gallery Aya)
伊庭靖子 Yasuko Iba (MISA SHIN GALLERY)
大野綾子 Ayako Ono (KAYOKOYUKI)
大野晶 Hikari Ohno (XYZ Collective)
工藤麻紀子 Makiko Kudo (小山登美夫ギャラリー)
篠崎裕美子 Yumiko Shinozaki (SNOW contemporary)
鈴木のぞみ Nozomi Suzuki (rin art association)
高柳恵里 Eri Takayanagi (TALION Gallery)
できやよい Yayoi Deki (ANOMALY)
真島明子 Akiko Mashima (KOKI ARTS)
升谷真木子 Makiko Masutani(Satoko Oe Contemporary)
三瓶玲奈 Reina Mikame (Yutaka Kikutake Gallery)
三島喜美代 Kimiyo Mishima (Yamaki Fine Art)
三宅砂織 Saori Miyake (WAITINGROOM)
山口はるみ Harumi Yamaguchi (NANZUKA)
クリスティアーネ・レーア Christiane Löhr (Taguchi Fine Art)

今後の予定
“MEMORIES 02” selected by Tomio Koyama
2023年9月20日-10月8日

“MEMORIES 03” selected by Hozu Yamamoto
2023年10月11日-10月29日

高橋大輔「アシャン」 by ANOMALY

Top image: 高橋大輔《アシャン》2023 パネルに油彩、合成樹脂、アクリル

開催期間:2023年8月8日(火)〜27日(日)
開廊時間:火〜金 11:00 – 19:00 / 土・日・祝 (11日・金) 11:00 -17:00 / 休廊日:月曜日
会場:CADAN有楽町

◎オープニングレセプション
8月8日(火)18:00〜

◎トークイベント
8月23日(水)19:00〜20:30
出演:長谷川新(インディペンデントキュレーター)、五月女哲平(アーティスト)、高橋大輔(アーティスト)
@cadan_insta からインスタライブ配信あり

この度CADAN有楽町では、東京・天王洲を拠点とするANOMALYによる高橋大輔の個展「アシャン」を開催します。

高橋大輔は1980年埼玉県生まれ。2005年に東京造形大学造形学部美術学科絵画専攻領域を卒業、現在は埼玉県を拠点に活動しています。東京都美術館や埼玉県立近代美術館、東京オペラシティアートギャラリー、太田市美術館などでの展覧会に参加するなど、高橋の一貫した「絵画」における表現の探求は広く高い評価を受けてきました。

高橋はこれまで、絵の具をチューブから直接出しながら画面構成を行う、いわゆる厚塗り絵画を長年制作してきました。それらの作品群は、絵画が二次元上でのイリュージョンの世界であると同時に、支持体と絵の具という物質による、あくまでも三次元空間に存在する「もの」による現実であり、その意味で我々鑑賞者と高橋の作品との間には、身近に感じられると同時に近寄りがたい、といった緊張関係がありました。高橋の絵画は、イリュージョン世界と実体のある世界との中間者として存在していたのです。

高橋大輔《アシャン》2022 キャンバスに油彩、天然樹脂

この度の個展「アシャン」では、そういったこれまでの高橋の絵画シリーズとは大きく異なる作品が揃います。端的に言えばこのシリーズにより、「もの」から「イメージの世界」へと高橋の仕事の位相が移動したのです。

ここで気になる「アシャン」とは、高橋がたまに利用する近所のコンビニで働いていた、スタッフの方の名前です。高橋は手際よく仕事をこなし、心地よい接客をするアシャンさんに好感を持っていましたが、ふと彼のことを何も知らないことに気がつきました。同時にその瞬間アシャンさんの存在は、高橋にとって新たな創作活動の引き金となりました。高橋は「アシャン」制作を通じて、アシャンという実際の人物と、何も知らないがゆえに高橋によって形成されるイメージのアシャンとの間を往き来していくのです。それはこれまでの即物的な高橋の仕事には見られなかった、より精神性の強い創作であることが分かります。

そんな「アシャン」シリーズで使用される色は非常に限定されており、基本的にはブルー一色。その理由はアシャンさんが某コンビニの店員で、ブルーとホワイトの縞の制服を着ているからという至極単純な理由や、アシャンさんが空を越え、海を越え、はるかなるこの地で高橋と出会った、という高橋の想像からふと浮かんだイメージが彼に選択させています。
また同シリーズでは、高橋が繰り返し行なってきたかつての厚塗りの要素はなく、キャンバスに筆を置くという反復や、線を伸び伸びと引くという行為の結果となっています。その仕事はまるで音楽的です。音を繰り返し奏でることで、抽象度の高い、精神性に富んだ作品が生まれるように、しかし高橋のそれは、まるでサビもなければエンディングもない楽曲のような姿をしています。

「アシャン」シリーズが壁に掛かっている高橋のアトリエの様子

描くことで彼がアシャンを理解することはできないでしょう。しかしだからこそこの作品群は魅力的なのです。核心に迫るのではなく(そもそも核心なんてものがあるのか)、画面からも中心軸や作家による任意の消失点が消えているように、あくまでも周縁をなぞるようにして生まれる「アシャン」シリーズは、鑑賞者に観て考えるだけの余白を与え、心地よい鑑賞体験を許します。

まだまだ厳しい夏の暑さが続きますが、ブルーとホワイトで構成された高橋の最新作と共に、こころ(精神)から涼んで頂ければ幸いです。

同時開催:
高橋大輔 個展
アシャン (Ashan)
2023年8月23日 ~ 9月10日
Art Center Ongoing、吉祥寺
https://www.ongoing.jp/upcoming/ashan/

お問い合わせ先:
ANOMALY
〒140-0002 東京都品川区東品川1-33-10 Terrada Art Complex 4F
tel & fax 03-6433-2988
info@anomalytokyo.com

油野愛子 顧剣亨  「HOW TO RECORD THE PAST, HOW TO LET GO THE PAST? どうやって過去を手放そうか。」 by Tomio Koyama Gallery

CADAN有楽町は、小山登美夫ギャラリーによる油野愛子、顧剣亨の二人展 「HOW TO RECORD THE PAST, HOW TO LET GO THE PAST? どうやって過去を手放そうか。」を開催いたします。油野愛子による立体作品とペインティング、顧剣亨による写真作品で構成されます。どうぞご高覧ください。

油野愛子 顧剣亨 
「HOW TO RECORD THE PAST, HOW TO LET GO THE PAST? どうやって過去を手放そうか。」
by Tomio Koyama Gallery
2023年7月18日(火)—8月6日 (日)
企画: 小山登美夫ギャラリー
協力: Yumiko Chiba Associates
営業時間:火−金 11時−19時 / 土、日、祝 −17時
定休日:月(祝日の場合は翌平日)

アーティスト・トーク(モデレーター 山本浩貴氏)
7月18日(火)18:00〜
*予約不要、@cadan_instaからインスタライブ配信あり

【展覧会について】

今回の展覧会「HOW TO RECORD THE PAST, HOW TO LET GO THE PAST? どうやって過去を手放そうか。」は、油野愛子、 顧剣亨による2人展。

油野が一緒に展示をしたいアーティストとして、同世代であり、学生の頃から共に作家人生を歩んできた仲間である、顧剣亨との展覧会を考え、実現しました。

今回の展覧会タイトルは、油野が書きためている言葉の中から一言を選んでおり、それをその場にいた友人が英語で発音した時に、「let go」 を「record」と聞き間違えたところから始まっています。このタイトルに付属された日本語「どうやって過去を手放そうか」は、時間を追うごとにリアリティを失っていきながらも、いかに私たちを縛りつけ、私たちの存在を明確に築いてきたのか、過去が少しずつ、しかし確実に未来で変化し続けているということについて、改めて見つめるきっかけとなるでしょう。

顧にとって作品制作は「record(記録)」するという行為からはじまっています。彼は様々な場所を訪れ、膨大なピクセルの中に時間を取り込み、デジタルウィービングという独自の手法でピクセルを編み込んでいく。この複数の景色を重ねた高解像度の一画面を作り出すことで、鑑賞者は作品に没入し、普遍的な自然と対峙します。油野は、自身の内に蓄積された他者との関係、また子どもから大人へと成長していく過程での変化や違和感といったことに焦点を当て、時間の経過や記憶の断片、そして過去と現在の交錯する瞬間を描き出す様に、立体、絵画、インスタレーションと展開をしています。

同時代に共に作家として成長してきた2人の制作を通して、鑑賞者は自身の内なる記憶や感情に触れ、内面とのつながりを再び確かめ、過去を探求し、解放するための深い内省と対話を促されるでしょう。

UNDULATIONISM 2023 by Mori Yu Gallery

UNDULATIONISM 2023 by Mori Yu Gallery
会期:2023年6月27日(火)―7月16日(日)
時間:火-金 11:00–19:00/ 土・日 –17:00/ 月 休廊
会場:CADAN有楽町
出展作家:
小柳仁志、世良剛、浜崎亮太、河合政之、
瀧健太郎、花岡伸宏、黒田アキ、西山修平、片野まん

【ヴィデオアート上映 Video Art Screening】
2023年7月1日(土) 開場18:30、開演19:00 (終演 20:00)
July 1th, 2023, Open 18:30, Start 19:00
*開始時間が変更になりました。

入場無料/定員15名

MORI YU GALLERY 出品のヴィデオ・アーティストによる作品上映。
Video art works by artists presented by MORI YU GALLERY.

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この度、CADAN有楽町では、京都を拠点とするMORI YU GALLERYによるグループ展、「UNDULATIONISM 2023」を開催いたします。昨年6月にCADAN有楽町で開催した展覧会と同様のコンセプトで、各作家それぞれ新作で展覧いたします。

「UNDULATIONISM」は造語です。翻訳するとすれば、「波動」主義とでも訳せましょうか。「UNDULATION」とは、真っ平らでflatなものではなく、揺れており、起伏があり、それは「NOISE」から生まれてきたといえるでしょう。
「NOISE」という難解な言葉から始めましょう。「Noise(ノワーズ)」という言葉は、マーグ画廊の創業者であるエメ・マーグ(Aimé Maeght, 1906-1981)の死後、1985年に、デリエール・ル・ミロワール誌を引き継ぐ形で創刊されたマーグ画廊の新しい美術誌のタイトルとして使われていました。編集長には、マーグ画廊の黒田アキ(Kuroda Aki, 1944-)。「ノワーズ」は黒田の友人であるフランスの哲学者、ミッシェル・セール(Michel Serres,1930-)の「NOISE」論に依拠し、黒田自身が名付けました(1985年5月発行の創刊号から1994年の18/19合併号まで全17冊発行)。
さて、中沢新一氏によると、「ノワーズ、それは古いフランス語で「諍(いさか)い」をあらわしている。バルザックはこの古仏語の語感を利用して、「美しき諍い女 la belle noiseuse」という存在を創造した。しかし、ノワーズのさらに古い語感を探っていくと、異質領域から押し寄せてくる聴取不能な存在のざわめきのことを、言い当てようとしているのがわかる。不安な波音を発する海のしぶきとともに出現するヴィーナスの像などが、そのようなノワーズの典型だ。ヴィーナスは海の泡から生まれたとも言われるが、またいっぽうではその泡は男女の交合の場所にわきたつ泡だとも言われる。いずれにしても、それは世界の舞台裏からわきあがってくる不気味なざわめきにつながっている」 (中沢新一『精霊の王』-第五章 緑したたる金春禅竹-より)。
前置きが長くなりましたが、所謂ノイズと言われるものと全く「NOISE」(ノワーズ)は違うのです。そうした「NOISE」が変化したものを我々は「波動」、「UNDULATION」と名付けてみましょう。

例えば、今回出展する作家である河合政之は、アナログのシステムを駆使する映像作家です。デジタルでは有用なシグナルのみを用いるが故に、捨象されてしまうノイズをもフィードバックという運動で展開される閉回路に取り込み、シグナルとノイズという二元論を超越した「たんなる物質とは違うもの」へと見事に変換させてしまいます。河合はフィードバックという手法によって、モダニズム的な自己言及性では無く、内在と超越の両者を切断しつつも接続する「NOISE」という概念を体現している作家と言えるでしょう。アナログにしかなし得ない、非連続の連続とでもいえる可能性を初めて開いた思想を携えた作品群がART BASEL HONGKONGで高く評価されたことは記憶に新しい。「NOISE」は、存在論的には所謂シグナルとノイズとの間にあり、時に接続し、また時に切断されるのですが、その中で「NOISE」は違う状態へと超越するのです。それは主体と客体、個人と社会、過去と未来、シグナルとノイズといった両者を接続しつつ切断し、たんなる物質とは違う、先の例えのようなビーナスへと変容していきます。そして、それはまた日本の文化的特長とも言える空間的、時間的な余白、空白といった「間」(ま)の意味も纒うといえるでしょう。
また例えば、黒田アキ。彼は、日本では1993年には東京国立近代美術館にて個展を開催しました。彼は、1970年代後半、パリ・ビエンナーレにおいて発表された「conti/nuit/é」(連続の中の夜)という絵画において、モダニズムを超えていこうとする新しき絵画として評論家に評されました。キャンヴァス上において、描かれた黒い線がすっと伸びていくその先で、時に線が縺れ、その縺れた線があるかたち(figure)となって現れてきます。「連続するもの」(「conti/nuit/é」)という「間」(ま)にあって、フランス語は「夜」(「nuit」)を意味する言葉を含みます。連続する時間と線が、ふと縺れて「夜」というかたち(figure)になる。「夜」は一体いつから始まり、終わるのか判然とせぬまま、過去からも未来からも切断されつつ接続され、また時にそれは連続する時間から逃げ果せ、意味を輝かせるのでしょう。黒田の意味する「夜」は線の縺れから生じ、それはまさに「夜」という「NOISE」から生み出された「波動」、「UNDULATION」として、また「figure」(=人型)としてキャンヴァスに描かれています。後年、「連続する夜」(「conti/nuit/é」)というコンセプトは、シュルレアリスムに影響を受けたミノタウロスと繋がり、80年代から描かれてきたシャープで美しき人型ではなく、ミノタウロスと黒田アキの自画像とが綯い交ぜとなった顔として、激しい筆致により、キャンヴァスに描かれています。それはまさに「NOISE」から生み出された「UNDULATION」を語るに相応しい作品でしょう。
今回は、「UNDULATIONISM」という造語を掲げるに相応しいこの3人を中心に、小栁仁志、花岡伸宏、瀧健太郎、西山修平、世良剛、浜崎亮太、片野まんなどの作品を展示いたします。どうぞご高覧ください。

MORI YU GALLERY
森裕一

今井壽恵 「オフェリアその後」by The Third Gallery Aya

Top image ©︎ IMAI Hisae
会期|2023年6月8日(木)-25 日(日)
時間|火曜-金曜 11:00–19:00/ 土・日曜 11:00–17:00/ 月曜 休廊
会場|CADAN有楽町 (東京都千代田区有楽町1-10-1有楽町ビル1F)
協力|赤々舎

この度、CADAN有楽町では、大阪を拠点とするThe Third Gallery Ayaによる今井壽恵の個展を開催いたします。

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1950年代にデビューした今井壽恵は、「オフェリアその後」に代表される文学的な世界を構築し、前衛的なイメージで注目を集めました。
交通事故で失明の危険に晒されたことで、馬を被写体にした作品制作に移行し、次第に初期作品は知る人ぞ知るという状況になっていました。
今回は、昨年4月にThe Third Gallery Ayaで開催した展覧会の巡回展で、1956年の初個展「白昼夢」から1964年に始まった「エナジー」まで、今井の初期代表作を紹介致します。
The Third Gallery Ayaでは、日本の女性写真家の先駆のひとりである山沢栄子や、今井とも同時代でフォトコラージュ作品で知られる岡上淑子を紹介してきました。
歴史の中に埋もれてしまいがちな女性写真家の作品が再評価される一端を担えればと思っております。

トークイベント|戸田昌子(写真史家、『Hisae Imai』監修)

日にち:2023年6月17日(土)
時間:16:00–17:30
会場:CADAN有楽町
申込先:お申し込みフォーム
*トークイベント後にささやかなレセプションを開催いたします
*@cadan_insta より、インスタライブ配信あり
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今井壽恵|IMAI Hisae

1931年7月19日東京生まれ
1952年 文化学院美術科卒業
1962年 タクシー乗車中の衝突事故により、一命はとりとめたものの、数ヶ月視力を失う
2009年2月17日逝去

主な個展
1956年「白昼夢」松島ギャラリー、東京
1957年「心象的風景」富士フォトサロン、東京
1959年「ロバと王様とわたし」月光ギャラリー、東京
1959年「夏の記憶」富士フォトサロン、東京
1960年「オフェリアその後」日本写真批評家協会受賞記念展、小西六フォトギャラリー、東京
1961年「モデルと北風」月光ギャラリー、東京
1963年「今井壽惠写真展」富士フォトサロン、東京
1971年「馬に旅して」新宿ニコンサロン、東京
1975年「馬の世界を詩う」高島屋大阪店
1977年「Le monde enchanteur des chevaux(馬の世界を詩う)」ブリュッセル、パリ

主なグループ展
1958年「第一回女流写真家協会展」小西六フォトギャラリー、東京
1960年「現代写真展1960年」東京国立近代美術館、東京
1962年「NON」松島ギャラリー、東京
2021年「パリフォト2021」グラン・パレ・エフェメール、パリ

受賞
1959年 日本写真批評家協会新人賞
1960年 カメラ芸術・芸術賞
1969年 GREAT PRINT MAKERS OF TODAY賞
1971年 Society of Publication Designers 1971 Annual Award Show Silver Award
1978年 日本写真協会年度賞
2010年 2009年度JRA賞馬事文化賞功労賞

出版
1977年「通りすぎるとき―馬の世界を詩う―」駸駸堂出版
1980年「ザ・サラブレット」東出版
1985年「勝つことに憑かれた名馬 シンボリルドルフ」角川書店
1987年「サラブレッド讃歌」玄光社
1994年「夢を駆けるトウカイテイオー」角川書店
1995年「武豊 1000勝」角川書店
1999年「CHAMPION/Taiki Shuttle」ニューマーケット

コレクション
日本大学、ニューヨーク近代美術館、ジョージ・イーストマンハウス国際写真美術館、パリ国立図書館、ハンブルグ装飾美術館、川崎市市民ミュージアム、東京都写真美術館、清里フォトアートミュージアム

安部悠介 個展 by 4649

『安部悠介 個展』
会期:2023年5月18日(木) – 6月4日(日)
会場:CADAN有楽町
営業時間:火~金 11~19時 / 土・日 ~17時  / 定休日:月
企画:4649

●オープニングレセプション
5月18日(木) 18:00〜

●ギャラリートーク
6月4日(日) 15:00〜
出演:安部悠介(アーティスト)、田中耕太郎(インディペンデント・キュレーター)
進行:高見澤ゆう(4649)

この度、CADAN有楽町では、東京・巣鴨を拠点とする4649による安部悠介の個展を開催いたします。

これは安部による4649との二回目の展覧会であり、6月4日より4649で開催される個展と同時開催となります。

安部は2021年に、一部で評価されつつあったTCG(トレーディングカードゲーム)やビデオゲームのキャラクター、迷路のイラストなどがモチーフになった作品のシリーズと断絶を見せるような抽象性の高い作品群を4649で発表しました。それは彼が制作の中で生み出した極めて内面的な未分類な作品群を、一つの展覧会という形として立ち上げる、4649との会話の中で生まれた協働での試みでした。そこから2年を経て、豊かな絵画を作りたいという目標にむけてあらゆる試行錯誤を繰り返す彼の制作活動は、よりいっそう複雑になり、これまで以上に表向きの具象・抽象性の違いを超えたところで行われています。そのダイナミズムを見せるような展覧会として、本展は二箇所の会場を使って行われます。この機会にぜひご高覧ください。

安部悠介は1993年山形県生まれ、2018年に多摩美術大学大学院を修了。現在は埼玉県を拠点に活動中。主な展覧会にCON(東京、2023)、4649(東京、2021)、VOILLED(東京、2021 と2017)、Loko Gallery(東京、2018)、ラ・メゾン・ド・ランデブー(ブリュッセル、2019)等がある。

同時開催
『安部悠介 個展』
会場:4649 (東京都豊島区巣鴨2-13-4 B02 170-0002)
会期:5月28日(日) – 6月25日(日)
木金土曜 午後1-6時、日曜 午後1-5時 (月火水休廊)

安部悠介 Curbstone, 2023
Gesso, oil, acrylic, plastic board, wood, bond, tacker on canvas
194×130×6.3 cm
安部悠介, That was a rubber hose, 2023
Oil, gesso, wood, paper, bond on canvas
194×130×5.5cm

詫摩昭人「逃走の線 / Lines of Flight:”The battle is decided in an instant, but I seem to lose most of the time.”」by Yoshiaki Inoue Gallery

会期:2023年4月25日(火)~ 5月14日(日)
会場:CADAN有楽町 東京都千代田区有楽町1-10-1 有楽町ビル1F
営業時間:火~金 11~19時 / 土、日、祝 ~17時  / 定休日:月(祝日の場合は翌平日)
企画:Yoshiaki Inoue Gallery

○ギャラリートーク
4月25日(火)18:00よりトークを開催します。
出演:三上豊 (美術編集者)× 詫摩昭人
終了後はレセプションを行いますので、ぜひご参加ください。
*予約不要、@cadan_instaからインスタライブ配信あり
この度、CADAN有楽町では、大阪・心斎橋を拠点とするYoshiaki Inoue Galleryによる詫摩昭人の個展を開催いたします。

Lines of Flight op.628、145.5 x 112cm、Oil on canvas、2020

詫摩昭人(たくまあきひと)は1966年熊本生まれ。フランスの哲学者ジル・ドゥルーズ(Gilles Deleuze、1925-1995)の「逃走線」を引用して二項対立をすり抜けるコンセプトで絵画制作を続けています。油絵具の乾かぬうちに自作の長いブラシでキャンバス全体を天辺から一気に擦りおろし、現れた画面に対立軸をなだらかに混ざり合わせたと実感できた時のみ自身の作品は完成となります。一貫したコンセプトの中で砂漠、地平線、サクラ、都市などの風景や抽象的な様々なモチーフを白と黒で表現してきましたが、今回は昨年より発表を開始したカラー作品の新作を中心にご紹介します。
修正の利かない制作工程で一度限りの美を追求する作品をぜひご高覧下さい。

 

 

 

カラー作品について:
横幅2mの刷毛で一気に仕上げる油彩の作品「逃走の線」を開始して、18年が経とうとしています。これまでもカラーの作品は幾度となく試みましたが、今ひとつ納得のいくものができませんでした。しかし、今回、初めて皆さんにお見せできそうなものになったと思い、初めてのカラー作品の個展を開催することとなりました。
二項対立をすり抜けるというコンセプトは、私の作品の根底に流れるテーマです。そして、今回カラー作品を制作する上で、<有彩色と無彩色>の軸と、水面に映る風景からヒントを得た<虚像と実像>の軸の二つの方向性が存在します。
2020年からコロナ禍が始まり、2022年にはウクライナの緊張が起こり、現在もなお不穏な状況ではありますが、分断しない混ざり合う美があると考えます。
(2022年6月 詫摩 昭人)

Lines of Flight op.758、194 x 162cm、Oil on canvas、2022
Lines of Flight op.756、100 x 72.7cm、Oil on canvas、2022
Lines of Flight op.757、100 x 72.7cm、Oil on canvas、2022

 

 

フランシス真悟、篠田太郎、前田紗希 by MISA SHIN GALLERY

会期:2023年4月6日(木)–4月23日(日)
会場:CADAN有楽町 東京都千代田区有楽町1-10-1 有楽町ビル1F
営業時間:火~金 11~19時 / 土、日、祝 ~17時  / 定休日:月(祝日の場合は翌平日)
企画:MISA SHIN GALLERY

この度、CADAN有楽町では、東京・南麻布を拠点とするMISA SHIN GALLERYによるフランシス真悟、篠田太郎、前田紗希の抽象作品を軸にした3人展を開催いたします。

Francis Shingo, Ambience in Red, 2022, oil on canvas, 162 x 162 cm Photo: Keizo Kioku

フランシス真悟は、幾層にも重ねられたブルーの抽象画や、深い色彩のモノクローム作品によって、絵画における空間の広がりや精神性を探求し続けているアーティストです。近年の「Interference」シリーズは、特殊な素材が引き起こす光の干渉によって、絵の具の複数の層に光が通り、見る角度によってさまざまな色が立ち現れるペインティングです。鑑賞者の動きがもたらす視覚の効果は、そこでしか感じられない絵画への体験を誘発します。

Shinoda Taro, Katsura 07, 2020, oil on canvas, 120 x 95 x 8 cm Photo: Keizo Kioku

篠田太郎のペインティング作品「桂」は、油彩画の基本的な素材を用いて制作されていますが、私たちが見慣れたペインティングとは一風異なっています。麻布のキャンバス自体が大きな余白を作り、その余白は、端から中心部に向かって曲面を描きながら5センチほど窪んでいきます。中心部は平面となっており、抽象的な色の構成やグリッド状の線が、油絵の具によって描かれています。日本庭園の造園家としてキャリアをスタートさせた篠田は、西洋的な時空間の捉え方に違和感を持ちつつ、自分自身の時空間の捉え方をも、それがどのように獲得されたか疑ってかかります。ペインティングを鑑賞する距離ひとつ取ってみても、私たちの様々な共通認識やその延長線上にある生活、社会、文化に基づいた身体的なリアクションでもあると捉えます。篠田のペインティングは、それらを再考し、その前提となっているものを問い直すことから始まっています。

Maeda Saki, 23_1, 23_2 (Diptych), 2023, oil on canvas, 162 x 260cm

前田紗希は1993年生まれ、「時間の堆積と境界」をコンセプトに、ペインティングナイフのみで油絵具を何十層にも重ねた抽象画を制作しています。トライアングルを最小限の存在とし、何層にも塗り重ねられ堆積し、また削りとられては構築されていくその画面は、日常のあらゆる物事やその重なり、関係性などが幾何学的に表現されています。学生の時から一貫して抽象を追求してきた前田は、我々が認識する「境界」とは何かを問い続けています。