UNDULATIONISM 2023 by Mori Yu Gallery

UNDULATIONISM 2023 by Mori Yu Gallery
会期:2023年6月27日(火)―7月16日(日)
時間:火-金 11:00–19:00/ 土・日 –17:00/ 月 休廊
会場:CADAN有楽町
出展作家:
小柳仁志、世良剛、浜崎亮太、河合政之、
瀧健太郎、花岡伸宏、黒田アキ、西山修平、片野まん

【ヴィデオアート上映 Video Art Screening】
2023年7月1日(土) 開場18:30、開演19:00 (終演 20:00)
July 1th, 2023, Open 18:30, Start 19:00
*開始時間が変更になりました。

入場無料/定員15名

MORI YU GALLERY 出品のヴィデオ・アーティストによる作品上映。
Video art works by artists presented by MORI YU GALLERY.

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この度、CADAN有楽町では、京都を拠点とするMORI YU GALLERYによるグループ展、「UNDULATIONISM 2023」を開催いたします。昨年6月にCADAN有楽町で開催した展覧会と同様のコンセプトで、各作家それぞれ新作で展覧いたします。

「UNDULATIONISM」は造語です。翻訳するとすれば、「波動」主義とでも訳せましょうか。「UNDULATION」とは、真っ平らでflatなものではなく、揺れており、起伏があり、それは「NOISE」から生まれてきたといえるでしょう。
「NOISE」という難解な言葉から始めましょう。「Noise(ノワーズ)」という言葉は、マーグ画廊の創業者であるエメ・マーグ(Aimé Maeght, 1906-1981)の死後、1985年に、デリエール・ル・ミロワール誌を引き継ぐ形で創刊されたマーグ画廊の新しい美術誌のタイトルとして使われていました。編集長には、マーグ画廊の黒田アキ(Kuroda Aki, 1944-)。「ノワーズ」は黒田の友人であるフランスの哲学者、ミッシェル・セール(Michel Serres,1930-)の「NOISE」論に依拠し、黒田自身が名付けました(1985年5月発行の創刊号から1994年の18/19合併号まで全17冊発行)。
さて、中沢新一氏によると、「ノワーズ、それは古いフランス語で「諍(いさか)い」をあらわしている。バルザックはこの古仏語の語感を利用して、「美しき諍い女 la belle noiseuse」という存在を創造した。しかし、ノワーズのさらに古い語感を探っていくと、異質領域から押し寄せてくる聴取不能な存在のざわめきのことを、言い当てようとしているのがわかる。不安な波音を発する海のしぶきとともに出現するヴィーナスの像などが、そのようなノワーズの典型だ。ヴィーナスは海の泡から生まれたとも言われるが、またいっぽうではその泡は男女の交合の場所にわきたつ泡だとも言われる。いずれにしても、それは世界の舞台裏からわきあがってくる不気味なざわめきにつながっている」 (中沢新一『精霊の王』-第五章 緑したたる金春禅竹-より)。
前置きが長くなりましたが、所謂ノイズと言われるものと全く「NOISE」(ノワーズ)は違うのです。そうした「NOISE」が変化したものを我々は「波動」、「UNDULATION」と名付けてみましょう。

例えば、今回出展する作家である河合政之は、アナログのシステムを駆使する映像作家です。デジタルでは有用なシグナルのみを用いるが故に、捨象されてしまうノイズをもフィードバックという運動で展開される閉回路に取り込み、シグナルとノイズという二元論を超越した「たんなる物質とは違うもの」へと見事に変換させてしまいます。河合はフィードバックという手法によって、モダニズム的な自己言及性では無く、内在と超越の両者を切断しつつも接続する「NOISE」という概念を体現している作家と言えるでしょう。アナログにしかなし得ない、非連続の連続とでもいえる可能性を初めて開いた思想を携えた作品群がART BASEL HONGKONGで高く評価されたことは記憶に新しい。「NOISE」は、存在論的には所謂シグナルとノイズとの間にあり、時に接続し、また時に切断されるのですが、その中で「NOISE」は違う状態へと超越するのです。それは主体と客体、個人と社会、過去と未来、シグナルとノイズといった両者を接続しつつ切断し、たんなる物質とは違う、先の例えのようなビーナスへと変容していきます。そして、それはまた日本の文化的特長とも言える空間的、時間的な余白、空白といった「間」(ま)の意味も纒うといえるでしょう。
また例えば、黒田アキ。彼は、日本では1993年には東京国立近代美術館にて個展を開催しました。彼は、1970年代後半、パリ・ビエンナーレにおいて発表された「conti/nuit/é」(連続の中の夜)という絵画において、モダニズムを超えていこうとする新しき絵画として評論家に評されました。キャンヴァス上において、描かれた黒い線がすっと伸びていくその先で、時に線が縺れ、その縺れた線があるかたち(figure)となって現れてきます。「連続するもの」(「conti/nuit/é」)という「間」(ま)にあって、フランス語は「夜」(「nuit」)を意味する言葉を含みます。連続する時間と線が、ふと縺れて「夜」というかたち(figure)になる。「夜」は一体いつから始まり、終わるのか判然とせぬまま、過去からも未来からも切断されつつ接続され、また時にそれは連続する時間から逃げ果せ、意味を輝かせるのでしょう。黒田の意味する「夜」は線の縺れから生じ、それはまさに「夜」という「NOISE」から生み出された「波動」、「UNDULATION」として、また「figure」(=人型)としてキャンヴァスに描かれています。後年、「連続する夜」(「conti/nuit/é」)というコンセプトは、シュルレアリスムに影響を受けたミノタウロスと繋がり、80年代から描かれてきたシャープで美しき人型ではなく、ミノタウロスと黒田アキの自画像とが綯い交ぜとなった顔として、激しい筆致により、キャンヴァスに描かれています。それはまさに「NOISE」から生み出された「UNDULATION」を語るに相応しい作品でしょう。
今回は、「UNDULATIONISM」という造語を掲げるに相応しいこの3人を中心に、小栁仁志、花岡伸宏、瀧健太郎、西山修平、世良剛、浜崎亮太、片野まんなどの作品を展示いたします。どうぞご高覧ください。

MORI YU GALLERY
森裕一

今井壽恵 「オフェリアその後」by The Third Gallery Aya

Top image ©︎ IMAI Hisae
会期|2023年6月8日(木)-25 日(日)
時間|火曜-金曜 11:00–19:00/ 土・日曜 11:00–17:00/ 月曜 休廊
会場|CADAN有楽町 (東京都千代田区有楽町1-10-1有楽町ビル1F)
協力|赤々舎

この度、CADAN有楽町では、大阪を拠点とするThe Third Gallery Ayaによる今井壽恵の個展を開催いたします。

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1950年代にデビューした今井壽恵は、「オフェリアその後」に代表される文学的な世界を構築し、前衛的なイメージで注目を集めました。
交通事故で失明の危険に晒されたことで、馬を被写体にした作品制作に移行し、次第に初期作品は知る人ぞ知るという状況になっていました。
今回は、昨年4月にThe Third Gallery Ayaで開催した展覧会の巡回展で、1956年の初個展「白昼夢」から1964年に始まった「エナジー」まで、今井の初期代表作を紹介致します。
The Third Gallery Ayaでは、日本の女性写真家の先駆のひとりである山沢栄子や、今井とも同時代でフォトコラージュ作品で知られる岡上淑子を紹介してきました。
歴史の中に埋もれてしまいがちな女性写真家の作品が再評価される一端を担えればと思っております。

トークイベント|戸田昌子(写真史家、『Hisae Imai』監修)

日にち:2023年6月17日(土)
時間:16:00–17:30
会場:CADAN有楽町
申込先:お申し込みフォーム
*トークイベント後にささやかなレセプションを開催いたします
*@cadan_insta より、インスタライブ配信あり
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今井壽恵|IMAI Hisae

1931年7月19日東京生まれ
1952年 文化学院美術科卒業
1962年 タクシー乗車中の衝突事故により、一命はとりとめたものの、数ヶ月視力を失う
2009年2月17日逝去

主な個展
1956年「白昼夢」松島ギャラリー、東京
1957年「心象的風景」富士フォトサロン、東京
1959年「ロバと王様とわたし」月光ギャラリー、東京
1959年「夏の記憶」富士フォトサロン、東京
1960年「オフェリアその後」日本写真批評家協会受賞記念展、小西六フォトギャラリー、東京
1961年「モデルと北風」月光ギャラリー、東京
1963年「今井壽惠写真展」富士フォトサロン、東京
1971年「馬に旅して」新宿ニコンサロン、東京
1975年「馬の世界を詩う」高島屋大阪店
1977年「Le monde enchanteur des chevaux(馬の世界を詩う)」ブリュッセル、パリ

主なグループ展
1958年「第一回女流写真家協会展」小西六フォトギャラリー、東京
1960年「現代写真展1960年」東京国立近代美術館、東京
1962年「NON」松島ギャラリー、東京
2021年「パリフォト2021」グラン・パレ・エフェメール、パリ

受賞
1959年 日本写真批評家協会新人賞
1960年 カメラ芸術・芸術賞
1969年 GREAT PRINT MAKERS OF TODAY賞
1971年 Society of Publication Designers 1971 Annual Award Show Silver Award
1978年 日本写真協会年度賞
2010年 2009年度JRA賞馬事文化賞功労賞

出版
1977年「通りすぎるとき―馬の世界を詩う―」駸駸堂出版
1980年「ザ・サラブレット」東出版
1985年「勝つことに憑かれた名馬 シンボリルドルフ」角川書店
1987年「サラブレッド讃歌」玄光社
1994年「夢を駆けるトウカイテイオー」角川書店
1995年「武豊 1000勝」角川書店
1999年「CHAMPION/Taiki Shuttle」ニューマーケット

コレクション
日本大学、ニューヨーク近代美術館、ジョージ・イーストマンハウス国際写真美術館、パリ国立図書館、ハンブルグ装飾美術館、川崎市市民ミュージアム、東京都写真美術館、清里フォトアートミュージアム

安部悠介 個展 by 4649

『安部悠介 個展』
会期:2023年5月18日(木) – 6月4日(日)
会場:CADAN有楽町
営業時間:火~金 11~19時 / 土・日 ~17時  / 定休日:月
企画:4649

●オープニングレセプション
5月18日(木) 18:00〜

●ギャラリートーク
6月4日(日) 15:00〜
出演:安部悠介(アーティスト)、田中耕太郎(インディペンデント・キュレーター)
進行:高見澤ゆう(4649)

この度、CADAN有楽町では、東京・巣鴨を拠点とする4649による安部悠介の個展を開催いたします。

これは安部による4649との二回目の展覧会であり、6月4日より4649で開催される個展と同時開催となります。

安部は2021年に、一部で評価されつつあったTCG(トレーディングカードゲーム)やビデオゲームのキャラクター、迷路のイラストなどがモチーフになった作品のシリーズと断絶を見せるような抽象性の高い作品群を4649で発表しました。それは彼が制作の中で生み出した極めて内面的な未分類な作品群を、一つの展覧会という形として立ち上げる、4649との会話の中で生まれた協働での試みでした。そこから2年を経て、豊かな絵画を作りたいという目標にむけてあらゆる試行錯誤を繰り返す彼の制作活動は、よりいっそう複雑になり、これまで以上に表向きの具象・抽象性の違いを超えたところで行われています。そのダイナミズムを見せるような展覧会として、本展は二箇所の会場を使って行われます。この機会にぜひご高覧ください。

安部悠介は1993年山形県生まれ、2018年に多摩美術大学大学院を修了。現在は埼玉県を拠点に活動中。主な展覧会にCON(東京、2023)、4649(東京、2021)、VOILLED(東京、2021 と2017)、Loko Gallery(東京、2018)、ラ・メゾン・ド・ランデブー(ブリュッセル、2019)等がある。

同時開催
『安部悠介 個展』
会場:4649 (東京都豊島区巣鴨2-13-4 B02 170-0002)
会期:5月28日(日) – 6月25日(日)
木金土曜 午後1-6時、日曜 午後1-5時 (月火水休廊)

安部悠介 Curbstone, 2023
Gesso, oil, acrylic, plastic board, wood, bond, tacker on canvas
194×130×6.3 cm
安部悠介, That was a rubber hose, 2023
Oil, gesso, wood, paper, bond on canvas
194×130×5.5cm

詫摩昭人「逃走の線 / Lines of Flight:”The battle is decided in an instant, but I seem to lose most of the time.”」by Yoshiaki Inoue Gallery

会期:2023年4月25日(火)~ 5月14日(日)
会場:CADAN有楽町 東京都千代田区有楽町1-10-1 有楽町ビル1F
営業時間:火~金 11~19時 / 土、日、祝 ~17時  / 定休日:月(祝日の場合は翌平日)
企画:Yoshiaki Inoue Gallery

○ギャラリートーク
4月25日(火)18:00よりトークを開催します。
出演:三上豊 (美術編集者)× 詫摩昭人
終了後はレセプションを行いますので、ぜひご参加ください。
*予約不要、@cadan_instaからインスタライブ配信あり
この度、CADAN有楽町では、大阪・心斎橋を拠点とするYoshiaki Inoue Galleryによる詫摩昭人の個展を開催いたします。

Lines of Flight op.628、145.5 x 112cm、Oil on canvas、2020

詫摩昭人(たくまあきひと)は1966年熊本生まれ。フランスの哲学者ジル・ドゥルーズ(Gilles Deleuze、1925-1995)の「逃走線」を引用して二項対立をすり抜けるコンセプトで絵画制作を続けています。油絵具の乾かぬうちに自作の長いブラシでキャンバス全体を天辺から一気に擦りおろし、現れた画面に対立軸をなだらかに混ざり合わせたと実感できた時のみ自身の作品は完成となります。一貫したコンセプトの中で砂漠、地平線、サクラ、都市などの風景や抽象的な様々なモチーフを白と黒で表現してきましたが、今回は昨年より発表を開始したカラー作品の新作を中心にご紹介します。
修正の利かない制作工程で一度限りの美を追求する作品をぜひご高覧下さい。

 

 

 

カラー作品について:
横幅2mの刷毛で一気に仕上げる油彩の作品「逃走の線」を開始して、18年が経とうとしています。これまでもカラーの作品は幾度となく試みましたが、今ひとつ納得のいくものができませんでした。しかし、今回、初めて皆さんにお見せできそうなものになったと思い、初めてのカラー作品の個展を開催することとなりました。
二項対立をすり抜けるというコンセプトは、私の作品の根底に流れるテーマです。そして、今回カラー作品を制作する上で、<有彩色と無彩色>の軸と、水面に映る風景からヒントを得た<虚像と実像>の軸の二つの方向性が存在します。
2020年からコロナ禍が始まり、2022年にはウクライナの緊張が起こり、現在もなお不穏な状況ではありますが、分断しない混ざり合う美があると考えます。
(2022年6月 詫摩 昭人)

Lines of Flight op.758、194 x 162cm、Oil on canvas、2022
Lines of Flight op.756、100 x 72.7cm、Oil on canvas、2022
Lines of Flight op.757、100 x 72.7cm、Oil on canvas、2022

 

 

フランシス真悟、篠田太郎、前田紗希 by MISA SHIN GALLERY

会期:2023年4月6日(木)–4月23日(日)
会場:CADAN有楽町 東京都千代田区有楽町1-10-1 有楽町ビル1F
営業時間:火~金 11~19時 / 土、日、祝 ~17時  / 定休日:月(祝日の場合は翌平日)
企画:MISA SHIN GALLERY

この度、CADAN有楽町では、東京・南麻布を拠点とするMISA SHIN GALLERYによるフランシス真悟、篠田太郎、前田紗希の抽象作品を軸にした3人展を開催いたします。

Francis Shingo, Ambience in Red, 2022, oil on canvas, 162 x 162 cm Photo: Keizo Kioku

フランシス真悟は、幾層にも重ねられたブルーの抽象画や、深い色彩のモノクローム作品によって、絵画における空間の広がりや精神性を探求し続けているアーティストです。近年の「Interference」シリーズは、特殊な素材が引き起こす光の干渉によって、絵の具の複数の層に光が通り、見る角度によってさまざまな色が立ち現れるペインティングです。鑑賞者の動きがもたらす視覚の効果は、そこでしか感じられない絵画への体験を誘発します。

Shinoda Taro, Katsura 07, 2020, oil on canvas, 120 x 95 x 8 cm Photo: Keizo Kioku

篠田太郎のペインティング作品「桂」は、油彩画の基本的な素材を用いて制作されていますが、私たちが見慣れたペインティングとは一風異なっています。麻布のキャンバス自体が大きな余白を作り、その余白は、端から中心部に向かって曲面を描きながら5センチほど窪んでいきます。中心部は平面となっており、抽象的な色の構成やグリッド状の線が、油絵の具によって描かれています。日本庭園の造園家としてキャリアをスタートさせた篠田は、西洋的な時空間の捉え方に違和感を持ちつつ、自分自身の時空間の捉え方をも、それがどのように獲得されたか疑ってかかります。ペインティングを鑑賞する距離ひとつ取ってみても、私たちの様々な共通認識やその延長線上にある生活、社会、文化に基づいた身体的なリアクションでもあると捉えます。篠田のペインティングは、それらを再考し、その前提となっているものを問い直すことから始まっています。

Maeda Saki, 23_1, 23_2 (Diptych), 2023, oil on canvas, 162 x 260cm

前田紗希は1993年生まれ、「時間の堆積と境界」をコンセプトに、ペインティングナイフのみで油絵具を何十層にも重ねた抽象画を制作しています。トライアングルを最小限の存在とし、何層にも塗り重ねられ堆積し、また削りとられては構築されていくその画面は、日常のあらゆる物事やその重なり、関係性などが幾何学的に表現されています。学生の時から一貫して抽象を追求してきた前田は、我々が認識する「境界」とは何かを問い続けています。

山下拓也「愛、嫉妬、別れ (ムンクやカニエをサンプリングして)」by TALION GALLERY

山下拓也「愛、嫉妬、別れ (ムンクやカニエをサンプリングして)」
会期:2023年3月15日(水)〜4月2日(日)
会場:CADAN有楽町 東京都千代田区有楽町1-10-1 有楽町ビル1F
営業時間:火~金 11~19時 / 土、日、祝 ~17時  / 定休日:月(祝日の場合は翌平日)
企画:TALION GALLERY

この度、CADAN有楽町では、東京・目白を拠点とするTALION GALLERYによる山下拓也個展「愛、嫉妬、別れ (ムンクやカニエをサンプリングして)」を開催いたします。

山下拓也は展示空間や素材の物理的・歴史的条件を利用しながら、帰属する共同体を喪失したマスコットなどをモチーフとして、立体や版画、写真、ドローイングなどの制作を行っています。存立の場を外的要因によって奪われてきたそれらの表象は、山下による空間と色相を極度に強調したインスタレーションのなかで、その境遇を反映した心理的状況とともに提示されます。
本展では、山下自身の手による木版画を用いた新作インスタレーションを発表いたします。

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本個展のテーマは「愛、嫉妬、別れ」です。ある期間のうちに私はこれらを激しく経験しました。
頭の中に現れたネガティブなイメージは、さらに同一のイメージを呼び寄せ、終わらない反復を生み出しました。母が過去に統合失調症を患っていたこともあり、そのような世界へ足を踏み入れてしまう恐怖感と、いくつかの強迫観念によって眠れない夜もありました。ギリギリのところで精神をキープできたのは、それら負のエネルギーを創作に転換させられる希望を保つことが出来たからです。
長らく私は版表現によって作品を制作してきました。版画を刷り続ける行為をパフォーマンスとして見せたり、刷られたイメージが増殖し展示空間を埋め尽くすのが自作の特徴ですが、そこには私の思考や認知のあり方が作用しているのかもしれません。
本個展では、頭の中で増殖して止まない特定のイメージ群を、過剰に版画に刷ることによって表出していきます。愛、嫉妬、別れをテーマにしたエドヴァルド・ムンクの版画や、内省的な世界観で楽曲制作するラッパーのカニエ・ウェスト、キッド・カディらのリリックを引用して制作します。そして漫画家の森田るりのイラストを使った新作も発表します。

山下拓也
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山下拓也
The Woodcut printings from the bedroom
2023

My Pick organized by CADAN

○会期   2023年2月28日(火)〜 3月12 日(日)
○営業時間:11:00-19:00、土日11:00-17:00 ○休廊:3月6日(月)
○会場:CADAN有楽町 (有楽町ビル1F)
○企画:CADAN(一般社団法人日本現代美術商協会)

○レセプション:3月9日(木)18:00-20:00
Supported by

CADAN有楽町では、毎年アートフェア東京のシーズンに合わせて「アートコレクション」をテーマにした展覧会を開催しています。
昨年は、主に個人の枠を超え、オフィスや店舗といった場所でアートを共有してコレクションを楽しんでいるコレクターにご協力いただきました。
第3回となる今回は、個人コレクションとはいえ多種多様な視点をもち、世代を超えて受け継がれていくようなコレクターの皆さんにフォーカスいたしました。どんな思いを込めて作品と向かい合っているのかを展示を通してご覧ください。規制概念を崩すような、新しい価値に出会えるかもしれません。

●My Pick Special Exhibition
コレクターが推薦するアーティストの作品を展示します。

<推薦者 – アーティスト> ※敬称略
桶田俊二・聖子 – 工藤麻紀子(小山登美夫ギャラリー)
佐野仁美 – Samak Kosem (nca | nichido contemporary art)
嶋津 充 – 須藤絢乃(MEM)
馬場栄傑 – 西村有(KAYOKOYUKI)
松田りな – 小林正人(シュウゴアーツ)

●”Art in an International Environment/アートフェア編”
CADANオリジナル動画の第三弾。CADANメンバーが世界のアートフェアをカレンダーでご紹介!
https://www.youtube.com/@cadanofficialyoutube9341

高橋尚愛展「Calendar for Year 3015」by MISAKO & ROSEN

高橋尚愛展「Calendar for Year 3015」by MISAKO & ROSEN
会期:2023年1月31日(火)~2月19日(日)
会場:CADAN有楽町 東京都千代田区有楽町1-10-1 有楽町ビル1F
営業時間:火~金 11~19時 / 土、日、祝 ~17時  / 定休日:月(祝日の場合は翌平日)
企画:MISAKO & ROSEN

この度、CADAN有楽町では、MISAKO & ROSENによる高橋尚愛展「Calendar for Year 3015」を開催いたします。

高橋尚愛は、1940年東京生まれ。現在はアメリカのバーモント州とパリを拠点にしています。60年代にヨーロッパに渡り、70年代よりニューヨークで活動してきました。2015年になり若手アーティスト奥村雄樹により、その活気にあふれたニューヨークのアートシーンの中で、高橋は数々のアーティストたちと交流し活動してきたことが明らかにされてきました。
今回発表されるカレンダーの作品は、近年MISAKO & ROSENが解き明かそうとしてきた高橋の活動への理解をさらに深めることとなるでしょう。

高橋尚愛/時間をめぐる覚え書き 2023年1月
《Calendar for Year 3015》(1972/2015)

未来に辿り着くこと/時間に追い抜かれること

未来を引き延ばすこと/ミレニアムをひとつ飛ばすこと
——

未来が現在に追い付いてしまったので1000年が追加されたカレンダー
——

その生涯、そしてアーティストとしての遍歴を通じて、高橋尚愛は時間の経過と手を取り合いながら──そしてまた、いわば時間の経過に立ち向かいながら──活動してきた。波乱に満ちた彼の人生の軌跡は、時間の経過によって形成されたのである。逆も然り。時間もまた、高橋と手を取り合い、そして高橋に立ち向かいつつ、その活動を続けてきた。

活動の最初期、まだ若い美大生だった高橋が手がけたのは、歴史ある戦艦を記念するコンクリート製の巨大モニュメントだった。それは今日、横須賀市沿岸の海底に横たわっている。邪魔になったのか、あるいは時代に求められなくなったのか、とにかく彫刻は海に沈められ、跡地は駐車場になった。深い海に飲み込まれ、摂り込まれたそれの捜索は、今日まで試みられていない。未来の情景──何百万年もの時を経て化石化した聖書が出現するさま──を描いたドローイング《Petrified Bible》と同じく、この沈んだ記念碑もまた、過ぎ去った時代を未来に対して証言する、高橋流のタイム・カプセルなのかもしれない。それが再び姿を現すには、数千年、いや数百万年の時間がかかるのだろう。

時間がバラバラの撚り糸で織り成されていることを示す事例がもうひとつある。かつて高橋は、画面全体が模様で覆われた絵画に取り組んでいたが、1960年代中頃にそれをイタリアで初めて発表したとき、注目を得ることはできなかった。ワイド・ホワイト・スペースというアントワープの画廊で数年後に開かれた個展においても、寄せられた関心は限られていた。そのあと一連の絵画は同画廊の倉庫に姿を消した。そこに身を隠し、忘れられ、40年に渡って留まりつづけた。後年、2013年になってようやく──奥村雄樹というアーティストのおかげで──それらは表舞台に再登場し、注目を受け、世界中に点在することになった。

ときに高橋は、時間の進展がもたらす遅延に応じて、その流れに調整を加える。1972年、彼は西暦2000年という遠い未来のカレンダーを作ろうと思い立ち、まずはその準備として、溶剤を介して様々な既製のカレンダーのインクを月ごとに12枚のワックス・ペーパーへ転写した。彼が念頭に置いていたのは、1972年の暦が次に使われるのは2000年である──どちらも閏年なのだ──という事実だった。しかし結局、計画は実現されなかった。カレンダーは作成されず、ゆえに使用もされないまま、当の西暦2000年が到来してしまった。高橋が12枚の紙を再び引っ張り出したのは、準備から40年もの月日が流れた2015年、アムステルダムのアネット・ゲリンク・ギャラリーにおける展覧会のためだった。ようやく当初の計画が完了したわけだが、とはいえ重大な改変が加えられていた。とっくの昔に西暦2000年が過ぎていたため、西暦3015年という更に遠い未来へとカレンダーの年数が移行されたのである。

《Calendar for Year 3015》に現出しているのは、循環的な時間との戯れである。そこでは、過去のアイディアが再活性化され、現在へと運び込まれ、未来へと指し向けられている。それは再利用の反復であり、過去の再活性化であり、そしてもしかしたら、過去になることへの拒絶である。

本作に見て取れるのは延々と循環を続ける時間という考え方だが、そこから私が想起したのは次の短い覚え書きだった。1976年にサイ・トゥオンブリがタイプライターで打ち込んだ、高橋宛の一節である──「自然の偏執性とアーティストの執念だけに見受けられるロマンティックな連続体」。

経年変化によって脆くなったその黄色い紙に遭遇したとき、私は手つかずのまま箱に詰められていたヒサチカ発/宛の書簡──個人的なハガキ、手紙、殴り書きのメモ──を調べていた。場所はラファイエット通り381番地、ラウシェンバーグ財団のアーカイヴである。それは、活気に溢れた1970年代ニューヨークのアートシーンと密接に関わりながら、ヒサチカが40年近い歳月を過ごした建物でもある。

トゥオンブリが言うようなロマンティックな連続体は、段階的に変化していく自然の循環性においてのみ見知られているものだが、彼の見方によればそれはアーティストへと転移するのだ。それはアーティストの本質主義的な偏執性と無条件の不屈性において現出する。アーティストとしての実践の探究には持久力が、何度でも最初からやりなおす意志が必要となるのだ。連続体というコンセプトは、高橋の仕事の何たるかを照射するようでもある。彼は繰り返し過去に手直しを加える──新旧を往来し、過去を未来へと投射しながら。高橋は過去、現在、未来の間に齟齬をもたらし、非同期的な時間の糸を紡ぐ。彼に誘われ、私たちはそれをひとつずつ辿り直していく。

ソフィー・ユグナン

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主な展覧会
2018「視覚芸術百態:19のテーマによる196の作品」国立国際美術館、大阪(グループ展)
2016「トーマス・デマンド: L’Image Volee」プラダ財団、ミラノ(グループ展)
「奥村雄樹による高橋尚愛」銀座メゾンフォーラム、東京(グループ展)
2015「Hisachika Takahashi Annotated by Yuki Okumura: Memory of Past and Future Memory」アネット・ゲリンクギャラリー、アムステルダム(2人展)
2013 プロジェクト・ルーム、ヴィールズ・コンテンポラリー・アート・センター、ブリュッセル(個展)
「フロム・メモリー:ドロー・ア・マップ・オブ・ユナイテッド・ステート」ショーン・ケリー・ギャラリー、ニューヨーク(個展)
「ヒサチカ・タカハシ:アントワープ 1967 / ブリュッセル 2013」エキシビション・リサーチ・センター、リバプール(個展)
1987「フロム・メモリー:ドロ ー・ア・マップ・オブ・ユナイテッド・ステート」タンパ美術館、タンパ、フロリダ(個展)
1967 ワイド・ホワイトスペース、アントワープ(個展)

刊行物
2015 高橋尚愛「From Memory Draw a Map of the United States」Hatje Cantz刊
ルーシーリパードによるエッセイ、マルシアE ヴェトロックによるインタービュー

パブリックコレクション
メニル財団、ヒューストン
ダラス美術館、ダラス
フォーリンデン美術館、ヴァッセナール
国立国際美術館、大阪

染谷聡 × 川人綾「となりの揺らぎ」 by imura art gallery

染谷聡 × 川人綾『となりの揺らぎ』 by imura art gallery
会期:2023年1月10日(火)~1月29日(日)
会場:CADAN有楽町 東京都千代田区有楽町1-10-1 有楽町ビル1F
時間:火~金 11~19時 / 土、日、祝 11~17時  定休日:月(祝日の場合は翌平日)
企画:imura art gallery

●トークイベント
2023年1月10日(火)18~19時 @CADAN有楽町
出演:染谷聡 川人綾 天野太郎(東京オペラシティアートギャラリー チーフ・キュレーター)
*@cadan_instaからインスタライブ配信もいたします。

この度、CADAN有楽町では、京都を拠点とする imura art galleryによる、染谷聡と川人綾による二人展「となりの揺らぎ」を開催いたします。

染谷聡《をどる桃》2021 撮影:来田猛 / KORODA takeru

染谷聡は、漆を素材に漆芸における装飾行為である「加飾」をテーマに制作し、工芸分野に留まらない作品を生み出しています。加飾の研究を重ねる中で、染谷は過去の漆作品の加飾に見られる微妙なズレに着目しました。このリサーチを自身の作品に昇華した作品が、近年制作している「ミストレーシング」シリーズです。過去の漆作品を、染谷なりにトレース(辿る/写す)することで、品物から垣間見えてくる物語と景色を作品化しています。

川人綾《CU C/U_dccxxx-dccxxx_(b)_XIII》2022 (参考画像) 撮影:大島拓也 / Takuya Oshima(Northern Studio)

一方、川人綾も染織という工芸分野から美術教育をスタートし、パリへの留学を経て、東京での大学院時代に織りのシステムを応用した「グリッド・ペインティング」を描くようになりました。神経科学者の父の影響を受け、幼い頃より脳を通して世界を把握しているということを強く意識していた川人は、グリッドの重なりによる錯視効果と、手作業による制御できないズレがもたらす意図しない美しさをテーマに制作しています。

初めてとなる二人展では、それぞれ自身のテーマに沿った新作を制作しつつ、お互いのコンセプトの重なる部分を意識しながら準備を進めました。同じ対象を見ていても、人それぞれ違う捉え方をしている面白さがある、と二人は言います。自分の目に見えている景色は、横にいる人のそれとは違うのかもしれない、という気づきを会場で感じていただければと思います。

==========

川人さんの「ズレ」に対する関心や工芸的な起点に興味があって、「ズレ」をテーマに一緒に展示ができたら面白そうだなと思っていました。一昨年越しに実現できて嬉しく思います。
僕は今回、土地に根付いた漆器の装飾を自分なりに辿り、写してゆく作品シリーズ、《ミストレーシング》を展示します。同時期に同シリーズを沖縄で展示中なので、その辺とも関連できればと思います。
せっかくの機会なので、いつもより自由にズレて、お互いのズレが良い揺らぎとなって空間に広がればなによりです。

染谷聡

染谷さんにこの2人展をご提案いただいたのは一昨年の秋頃だったが、とても嬉しかったのを覚えている。それまで染谷さんとお会いしたのは1度だけで、たしか数年前の京都のアートフェアだったと思う。その時に沖縄の染織の話になり、興味対象が似ているのかなと思っていた。
私の制作コンセプトは、一言にまとめると『制御とズレ』だが、同じものを見ていても、人それぞれ見えているものが異なるのではないか、という感覚を共有したいと思って作品をつくっている。それは染谷さんの制作にも共通していて、そのことが2人展開催のきっかけとなった。
今回の展示では、お互い肩の力を抜いて、少しいつもと違うことにトライする、というのが裏テーマだ。鑑賞者の方々にも、リラックスして楽しんでもらえたらと思う。

川人綾

<他会場での展覧会>
○川人綾
projectN 89
2023年1月18日(水)〜3月26日(日)
東京オペラシティアートギャラリー (初台)

○染谷聡
風景の宛先 | Beyond the Scene
2022年12月18日(日)〜2023年2月12日(日)
Gallery 9.5 NAHA (沖縄)

○染谷聡
ないじぇる芸術共創ラボ二人展「染谷聡×谷原菜摘子 わだかまる光陰」
2023年1月11日(水)〜17日(火)
文房堂ギャラリー (文房堂 神田本店3F)

伊勢克也+山本麻世「LESS THAN NATURE」by Sprout Curation

伊勢克也+山本麻世「LESS THAN NATURE」
2022年12月13日(火)〜1月8日(日)
会場:CADAN 有楽町
開廊時間:火〜金 11:00 – 19:00 / 土・日・祝 11:00 – 17:00
休廊日:月曜日 *年末年始休業:12/26 ~ 1/3
企画:Sprout Curation

○アーティストトーク
12月17日(土)11:00〜
会場:CADAN有楽町
出演:伊勢克也+山本麻世、ナビゲーション:志賀良和(Sprout Curation主宰)
伊勢克也が謎の形を探求するライフワーク「マカロニ」や、山本麻世の独特な寄生する彫刻などを巡って語り合います。
*CADANのインスタグラムアカウント(@cadan_insta)からライブ配信もいたします。

人間と自然が共振する、キモカッコイイ形態美!

自然と人間を繋ぐへその緒は完全に断ち切られることはない。伊勢克也はキクイムシのコロニーが生々しく残る倒木から、その痕跡を原寸で採取した描像と、ライフワークのブロンズ彫刻などを出品。山本麻世は代表作「へその緒シリーズ」、そして寄生するスポンテニアス・スカルプチャーなど、シャーマン・ライクな二人のアーティストの共演です。またそれぞれの新刊アーティストブックも限定販売いたします。

 

伊勢克也◎1960年盛岡市生まれ。東京芸術大学デザイン科卒業後、1984年大学院修士を修めるそのほぼ同時期に「日グラ」(日本グラフィック展@渋谷パルコ)の第5回大賞を受賞、一躍脚光を浴びます。「日グラ」は第3回の日比野克彦の受賞をきっかけに、ニュー・ペインティングに沸くファインアート界とコマーシャル・アート双方を巻き込み、80年代中盤に大きなムーヴメントとを作り出すことになります。それと同時期に没頭していたのが「マカロニ」シリーズです。「マカロニ」とは、フランス人考古学者アンリ・ブルイユがアルタミラ洞窟壁画を探索した際、狩猟採集や祭祀的な図像とは別に、無数に描かれていた謎の屈曲線を発見、それを「マカロニ」と呼んだことに因ります。スポンテニアスな線と、文字の中間のようなイメージ。爾来、伊勢克也は摩訶不思議な形象を自然から授かろうとするシャーマンのように、日本古来の多神教的な自然観と、近年はデジタルも駆使しながら、端緒から40年近く経った現在も「マカロニ」を探求し続けています。
東京タイポディレクターズクラブ(TDC)理事、女子美術短期大学の教授(現職)を歴任。2017年と19年にスプラウト・キュレーションで「マカロニ」シリーズの個展他、個展、グループ展多数。

 

山本麻世◎1980年東京生まれ。多摩美術大学大学院美術学部工芸科修了後、2005年から2008年までヘリットリートフェルト・アカデミー陶芸学科(アムステルダム)、2008年から2009年までサンドベルグ・インスティテュート、ファインアート学科(アムステルダム)に在籍。陶芸から現代アートへと指向が拡張する過程を経て、近年は構造物などに寄生する屋外彫刻を中心に活動。中でも標識テープをレリアン編みで作品化する「へその緒」シリーズはアイコニックな作品として注目されています。
主な個展に、2022年「交わると、生まれます」スプラウト・キュレーション/東京、2021年「イエティのまつ毛」アーティスト・ラン・スペース『オルタナティブ掘っ立て小屋:ナミイタ』/神奈川県・鶴川、2019年「母乳で育てた?それともミルク?」、2017年「川底でひるね」いずれもギャラリー川船/東京など。グループ展では2021年「平戸×オランダ海を越えた芸術祭」/長崎・平戸、「AHAPPYNEWWORLD」、2020年「UnrecognizedCreatures」ともにスプラウト・キュレーション/東京他多数。また2015年に新潟越後妻有トリエンナーレ「大地の芸術祭」、「ARTSEEDSHIRADO、2011年「六甲ミーツアート芸術散歩」で公募大賞特別賞、彫刻の森美術館賞受賞。同年おおさかカンバス推進事業(大阪)に参加。他、オランダ、韓国、フィリピンなどでアーティスト・イン・レジデンスに参加。

 

津上みゆき「さらさら、ゆく」 by ANOMALY

津上みゆき「さらさら、ゆく」 by ANOMALY
2022 年 11 月 22 日(火)〜12 月 11 日(日)
会場:CADAN 有楽町
開廊時間:火〜金 11:00 – 19:00 / 土・日・祝 11:00 – 17:00 / 休廊日:月曜日
企画:ANOMALY

○レセプション
11 月 25 日(金)18:30 より、作家を囲んでレセプションを開催いたします。是非お立ち寄りください。

この度CADAN有楽町では、東京・天王洲を拠点とするANOMALYによる津上みゆきの個展「さらさら、ゆく」を開催します。

津上みゆき 1973年東京に生まれ大阪に育つ。京都芸術大学大学院修了。2003年に VOCA賞を受賞、主な個展に、2005年「ARKO 津上みゆき」(大原美術館)、2013年「View−まなざしの軌跡、生まれくる風景」(一宮市三岸節子 記念美術館)、2015年「日本の風景、ウッカーマルクの風景」(ドミニカナ ークロスター・プレンツラウ/ドイツ)、2018年「時をみる」(上野の森美術館ギャラリー)、2019年「View−人の風景」(⻑崎県美術館)などがあり、国内外で数多くの作品を発表してきました。

津上は、1996年ニューヨークでの滞在制作の際に作品について再考する機会を得、帰国後独自の絵画を改めて探求し始めます。2005年大原美術館が行う滞在制作プログラムにおいて、日々のスケッチを元に風景画を描くという現在まで続く制作方法を確立しました。2013年五島文化財団 文化賞美術部門 新人賞受賞により、風景画誕生の地と言われるイギリスに滞在し制作するとともに、過去の風景画家とその作品についての研究と制作を行いました。

《View, A City, Time, 4:45pm 27 June 2022》のスケッチ(参考作品) 2022 ©︎Miyuki Tsugami

作品のタイトルに一貫して”View”という言葉を冠しているのは、目の前に存在する風景だけでなく、見方や考え方という広い意味を含んだ独自の風景画を追求していることに由来しています。津上の描く風景画はどのような風景が描かれているのか瞬時に判断できません。作品は見るものにある種忍耐を強いて存在しますが、津上のつくり出すみずみずしい色彩や豊かな筆致から生まれるかたちには、その土地やその場所が経験してきた出来事を紐解き、眼の前の風景を重ね合わせた、過去から現在までの流れる時間をもが表現されているのです。鑑賞者に作品の前で立ち止まり、色や形、構図や筆致を目で追い、作品を自分の風景として改めて開き、風景というもの、そのものの意味と共に向かい合うことを望む。それが津上みゆきの風景画です。

Left:《View, A City, Rain, 12:58pm 7 June 2022》 2022、 顔料、アクリル、その他、キャンバス、H50xW100cm Right: 《View, A City, Time, 4:45pm 27 June 2022》 2022、 顔料、アクリル、その他、キャンバス、H50xW100cm ©︎Miyuki Tsugami

本展では、三つの場所をスケッチし取材と思考を重ねた道の作品「View, Through the Doors, Morning 16 Jan 2022」、かつて海であった CADAN有楽町のある土地についての丁寧なリサーチに基づき生まれた大作など、新作約15点を展示します。せわしなく多くの人々が行き交う東京の中心、丸の内で、津上の風景画が流れるように過ぎ去る日常や記憶の中の場所に寄り添うきっかけとなれば幸いです。

この地上に棲まう無数の生き物たちが、己の命と共に、無数の場所の端々に、ひとひらとなり一陣となり姿を変えてさらさらとゆく。留まることを知らない水の摂理に小さな舟を浮かべ、今と昔の時を隔てて流るるが如く。

津上みゆき

同時開催となります NADiff a/p/a/r/t での個展は、会場近くを流れる都心の川の取材をもとに生まれた作品群が迫るように鑑賞者を取り囲みます。人の手でもたらされた古くは海であった多くの人々が行きかう都心のオフィス街と、人の住まう街に古くからある自然の水脈の今の姿。今を生きる私たちそれぞれの風景と重ね合わせながら、展示空間と作品との関係性をも踏まえた両展を、どうぞご高覧ください。

○同時開催:津上みゆき 個展
囁く如く (In a Whispering Way)
2022年11月23日 (水)−12月18日 (日)
NADiff a/p/a/r/t 、東京
アーティストトーク:2022年12月9日 (金)19:00- 20:30

津上みゆき http://miyukitsugami.jp

TOP画像:《View, Through the Doors, Morning 16 Jan 2022》2022、顔料、アクリル、その他、キャンバス、H146xW276.5 ©︎Miyuki Tsugami

南依岐「藝核一如」by rin art association

南依岐「藝核一如」by rin art association
Ibuki Minami “Art-Core-Oneness”

2022年11月1日(火)− 11月20日(日)
会場:CADAN 有楽町 (東京都千代田区有楽町 1-10-1 有楽町ビル 1F)
営業時間:火-金 11:00-19:00 / 土・日・祝 11:00-17:00
定休日:月曜日、11月13日(日)
企画:rin art association

●トークイベント
作家の南依岐氏のトークイベントを開催いたします。南依岐氏と哲学研究者の野村将揮氏をお招きし、rin art association のオーナー原田崇人氏をナビゲーターに展覧会のテーマや作品の根幹にあるものを探っていきます。展覧会と併せてぜひご高覧ください。
日時:11月3日(木)17:00-18:00
出演:南依岐、野村将揮(哲学研究者)、原田崇人(rin art association オーナー)
会場:CADAN有楽町
参加無料

CADAN 有楽町では、群馬、高崎を拠点にするrin art associationの 企画による南依岐個展「藝核一如」を開催いたします。

アルゴリズムの回路図をもとにした絵画シリーズで知られる南依岐。2020年のデビュー展以来、瞬く間に高い評価を獲得してきました。
南の絵画は、データの流れが分岐し、互いに関連する様子を描いたグラフアルゴリズムのドローイングに始まります。マーカーで記された数字やアルファベットなどの構成要素は、特定の色やトーンに関連付けられ、その上に描かれる絵画の指示書として機能しています。
こうしたグラフ構造にみられる多様な展開と色調は、さらにインパストの筆使いとリズミカルな構図によって強調されることになります。長方形や円形、点の配列など、異なる形状とテクスチャーをもつ幾何学的パターンが、互いに重なり合い、指向性をもつラインに繋がれ、ネットワーク化した世界の設計図を構成するのです。こうした絵画を成り立たせる複雑な関係性の解釈によって、南の絵画はよりコンセプチュアルな次元へと導かれていきます。
自身の作品制作を説明するために、南は「アートコア」という言葉を用いています。アートコアは、いわば美術を成立させるあらゆるソースコードの格納庫であり、生命においてDNAが果たす役割のように、絵画という行為を通じてそれが物質的、概念的、あるいは精神的に展開されるとも考えられます。科学、芸術、哲学の境界線はなく、すべてが不可分であり、人間の生命に不可欠なものであると考える作家は、「アートコア」という言葉に、未分化で未知なるこの領域の核心を託しているのです。

南依岐は1995年生まれ。アカデミー・オブ・アート大学(サンフランシスコ)で学士号を取得。現在は、東京を拠点に活動しています。

(TOP画像/撮影:木暮伸也)

「M・THERESIA・D・G・R・IMP・HU・BO・REG・ARCHID・AVST・DUX・BURG・CO・TYR・1780・X」by Satoko Oe Contemporary × TALION GALLERY

展覧会期間:10月11日(火)〜10月30日(日)
会場:CADAN有楽町
営業時間:火-金 11.00-19.00/土・日 11.00-17.00
定休日:月曜日
企画:Satoko Oe Contemporary × TALION GALLERY

参加アーティスト:大岩雄典、平田尚也、髙柳恵里、White Waters [玉山拓郎、C2D]

展覧会タイトルの文字列は、かつてオーストリアで発行され、奇妙なことに東アフリカとアラビア半島の一部で広く流通し、コーヒー豆の取引などに1970年代まで使用されることになったマリアテレジア銀貨と呼ばれる硬貨に刻印されていたものです。この銀貨は、貨幣が貨幣として流通するために、価値を裏付ける物質や政治体制は必ずしも必要がないということを示す一例とされています。

本展は、2020年にCADAN有楽町で開催された「形式と形状」展での髙柳恵里の作品《裏返し》にまつわる出来事がきっかけとなって企画されました。会期中に訪れた観客の一人から、これは木彫なのかと問われ、会場に居合わせた「形式と形状」展の企画者は驚きました。

観客はなぜ《裏返し》を木彫だろうと思ったのか、また、企画者はなぜその質問に驚愕したのか。このエピソードから様々な問いや解釈を導くことが可能ですが、ここですでに明らかなことの一つは、現代美術において、一人のアーティストが制作にどのような素材や形式を選択するかは、およそ不確定であるということです。

絵画や彫刻といったジャンルの棲み分けが明瞭であった状況と比較すると、そうした共通の参照体系に基づく制作と鑑賞の安定的な場は、現代美術においては久しく存在しないとも言えます。つまり、髙柳恵里も木彫による作品を制作することは十分に有り得るが、それにも関わらず、なぜ《裏返し》は木彫であるはずがないと言えるのかという、新たな問いに私たちは直面することになります。

マリアテレジア銀貨の刻印とともに、本展では、こうした領域的なジャンルに対する脱領域的な作家性の対比を端緒として、目的論的な必然に対する、時間を含み込んだ蓋然性をテーマとするために、貨幣と芸術のアナロジーを梃子として提示されます。貨幣と芸術は、ともに人工物であり価値を保存するとされているにも関わらず、再帰的な性質をもつという点で非常に似通っているとも言えます。つまり、芸術も貨幣も、それがどのようなものであるかは、個別具体的な通用例を見ることでしか分かりません。

言い換えると、経済学が貨幣をつくるのではなく貨幣が経済学をつくるのであり、これと同様に、美学が美術作品をつくるのではなく美術作品が美学を生んでいます。ここではもちろん、貨幣と芸術がどのように異なるのかということも重要な視点となります。商品とお金を交換するとき、貨幣は(芸術が及ぶべくもないほどの)透明な価値の媒体となっています。貨幣はアイコニックな対象として、美術の歴史においても繰り返し制作のモチーフとなってきましたが、本展が主題とする価値の蓋然性は、この種のシンボリズムとはまったく異なるものです。

出展アーティストのメディアは、インスタレーションや彫刻、映像など多様です。髙柳恵里は《裏返し》を再び展示し、インスタレーションとフィクションについて制作・研究する大岩雄典は「可能な行為の空間」を感覚するカードゲームなどを提示します。バーチャルな造形操作を用いる平田尚也は、新たな秩序の中で彫刻を問い直し、玉山拓郎とC2DによるWhite Watersは概念上の支持体として、社会的な二分法の間隙を縫う作品を発表します。

商業の中心地であり、また街作りの一環として国際的な銀行や証券などの金融機関を誘致した歴史をもつ丸ノ内仲通りに面したCADAN有楽町のスペースで、交換と価値の蓋然性を問う本展「M・THERESIA・D・G・R・IMP・HU・BO・REG・ARCHID・AVST・DUX・BURG・CO・TYR・1780・X」は開催されます。どうぞご期待ください。

大岩雄典「無闇」2021, TALION GALLERYでの展示風景, 撮影:屋上

大岩雄典
1993年埼玉県生まれ。東京藝術大学大学院映像研究科博士後期課程在籍。
インスタレーションとフィクションについて制作・研究。時空間とその経験のもつ形を考え、作品やテクストとして提示する。
近年の主な展覧会に「渦中のP」十和田市現代美術館サテライト会場 space (2022/青森)、「margin reception」渋谷スクランブルスクエア プラスアートギャラリー (2021/東京)、「見逃し配信|Catchup」The 5th Floor (2021/東京)、「無闇」TALION GALLERY(2021/東京)、「バカンス」トーキョーアーツアンドスペース本郷 (2020/東京)などがある。

髙柳恵里, 「αMプロジェクト2022 判断の尺度 vol. 1 髙柳恵里|比較、区別、類似点」2022, gallery αMでの展示風景, 撮影:守屋友樹

髙柳恵里
1962年神奈川県生まれ。1988年多摩美術大学大学院美術研究科修了。多摩美術大学絵画学科教授。
事物や状況と結びついた認識のテクスチュアリティを重視する態度により、インスタレーション、写真、ドローイングなどの制作を行う。
近年の主な展覧会に「判断の尺度 vol.1 髙柳恵里|比較、区別、類似点」gallery αM (2022/東京)、「デモンストレーション」TALION GALLERY (2021/東京)、 「コレクション現代日本の美意識」国立国際美術館 (2020/大阪)、「それは、正確であるか」See Saw gallery + hibit (2019/愛知)、「百年の編み手たちー流動する日本の近現代美術」東京都現代美術館 (2019/東京)などがある。

平田尚也, 「さかしま」2021, Satoko Oe Contemporaryでの展示風景

平田尚也
1991年長野県生まれ。2014年武蔵野美術大学彫刻学科卒業。空間、時間、物理性をテーマにネット空間から収集してきた既成の3Dモデルや画像などを素材とし、主にアッサンブラージュ(寄せ集め)の手法でpcのバーチャルスペースに構築した仮想の彫刻作品を発表する。仮像を用いることによって新たな秩序の中で存在するもう一つのリアリティを体現し、ありえるかもしれない世界の別バージョンをいくつも試すことによって現実の事物間の関係性を問い直し、彫刻史の現代的な解釈を考察する。主な展覧会に「メディウムとディメンション:Liminal」柿の木荘(2022/東京)、「VOCA展2022」上野の森美術館(2022/東京)、「さかしま」Satoko Oe Contemporary(2021/東京)、「TAMPA」The 5th Floor(2021/東京)、「∃, Parallels, Invulnerability」トーキョーアーツアンドスペース本郷(2018/東京)などがある。

White Waters [玉山拓郎、C2D],「I ALONE CAN FIX IT」2021, ANOMALYでの展示風景
White Waters [玉山拓郎、C2D]
玉山拓郎と C2D(シー・ツー・ディー)によるユニット。社会的・言語的な二分法のあいだや透き間に入り込み、 その両側に浸潤していくコンセプチュアル・サポートとして活動する。近年の主な展覧会に「I ALONE CAN FIX IT」ANOMALY(2021/東京)などがある。
玉山拓郎は1990年岐阜県生まれ。2013年愛知県立芸術大学美術学部油画専攻卒業。2015年東京藝術大学大学院美術研究科絵画専攻油画研究分野修了。近年の主な展覧会に「Static Lights : Unfamiliar Presences」Sony Park Mini (2022/東京)、「Anything will slip off / If cut diagonally」ANOMALY (2021/東京)、「開館25周年記念コレクション展 “VISION Part 1 光について / 光をともして”」豊田市美術館 (2020/愛知)、「VOCA展 2020」上野の森美術館 (2020/東京)などがある。
C2Dは1981年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒業。2011年頃より、多数のアーティストとの会話や共同作業を重ね、作家や作品などの固有名を表象・代理することについての考察・研究を行う。「一番良い考えが浮かぶとき」TALION GALLERY (2020/東京)においてコラボレーション参加。

入江早耶「東京大悪祭 ~Happy Akuma Festival~」by 東京画廊+BTAP

《青面金剛困籠奈ダスト》 (2020) 薬箱、薬袋、消しゴムのカス、樹脂 40×25×21 cm

入江早耶「東京大悪祭 ~Happy Akuma Festival~」by 東京画廊+BTAP
2022年9月22日(木)− 10月9日(日)
会場:CADAN 有楽町 (東京都千代田区有楽町 1-10-1 有楽町ビル 1F)
営業時間:火-金 11:00-19:00 / 土・日・祝 11:00-17:00
定休日:月曜日
企画:東京画廊+BTAP|東京

●トークイベント
9 月 22 日(木) 18:00~18:30
出演: 入江早耶(アーティスト)、山本豊津(東京画廊+BTAP 代表)
参加無料、予約優先(15 名)
ご予約はこちらから:https://cadanarttalktokyogallery.peatix.com/view

●レセプション
9 月 22 日(木) トーク終了後〜20:00まで

CADAN 有楽町では、東京、銀座を拠点にする東京画廊+BTAPの 企画による入江早耶個展『東京大悪祭 ~Happy Akuma Festival~』を開催いたします。

入江は 1983 年岡山県生まれ。2009 年に広島市立大学大学院芸術学研究科博士前期課程を修了し、現在広 島を拠点に活動しています。2009 年に岡本太郎現代芸術賞に入選、2012 年には第 6 回 shiseido art egg 賞を受賞しました。主な近年の個展に「純真遺跡 〜愛のラビリンス〜」(2019 年、兵庫県立美術館)、 「大悪祭」(2021 年、広島芸術センター)があります。平成 31 年度ポーラ美術振興財団在外研究助成を 得て、今年ニューヨークの ISCP レジデンスプログラムに参加しました。本展は帰国後の初個展となりま す。

入江は印刷物などの日用品に描かれたイメージを消しゴムで消し、その消しカスを用いて彫像を制作する アーティストです。掛け軸の中から消えた観音像が現実の空間に立体として立ち上げられ、紙幣を用いた 作品では肖像画が胸像となって目の前に現れます。イメージとして流通し、日常的な存在となっている図 像を自らの手で一旦消し去り、二次元の情報を三次元の物体に再構築する入江の作品は、我々と表象の関 わりを巡る現代的な問題をユーモラスに提起しています。

超立身出世 Super Cult of Success (Ed.1/30) 2021 / 33 x 45 cm / フレーム: 39.3 x 50.8 cm 和紙、消しゴム版画、彩色
Japanese washi paper, acrylic

本展ではコロナ禍への応答として、近年入江が取り組んでいる神話や民間信仰にまつわる新作を展示いた します。江戸時代における神仏と祈りに関する伝承からインスピレーションを得た《青面金剛困籠奈ダス ト》は、疫病を払うとして祀られてきた青面金剛に由来します。本来は病を撒き散らす悪鬼をあえてまつ ることで、病の拡散を防ごうとした独特な風習に着目し、消した薬箱などから現代版・青面金剛を導き出 しました。彫像の手には、感染予防用のマスクや消毒液がモチーフとして取り入れられ、足元には邪鬼と なったウイルスが懲らしめられています。

その他、古い薬袋を用いた《薬魔地蔵ダスト》や消しゴム版画による護符の絵画など、いずれもユニーク な手法で制作された作品群が一挙に展示されます。また《地獄みくじ》や、過去の作品を掲載した部数限 定のカタログなど、さまざまなグッズも販売いたします。皆様のご来場を心よりお待ち申し上げます。

Shigeru Nishikawa – Sealed Temples – by Taguchi Fine Art

"Sealed House 147 -金峯山寺蔵王堂-" (2022) 油彩・グラファイト・金属粉・キャンバス・パネル、oil, graphite and metal powder on canvas, panel, 91.0 x 91.0 cm

Shigeru Nishikawa – Sealed Temples –
2022年8月30日(火)- 9月18日(日)
会場:CADAN有楽町
営業時間:火-金 11:00-19:00 / 土・日 11:00-17:00 定休日:月曜日
企画:田口ファインアート

初日にレセプションとアーティストトークを催します。是非お立ち寄りください。
8月30日(火)18:00-20:00 レセプション / 18:30-19:00 アーティストトーク

このたびCADAN有楽町では、東京、日本橋本町を拠点とする田口ファインアートによる西川茂個展「Sealed Temples」(覆われた寺院)を開催いたします。

西川茂(にしかわしげる)は1977年岐阜県生まれ。1997年に近畿大学理工 学部土木工学科環境デザインコースを中途退学、2002年大阪芸術大学附属大阪 美術専門学校芸術研究科絵画コースを修了。2007年から1年間アメリカ・ ニューヨーク州の障がい者と健常者の共同生活体「トライフォーム・キャンプ ヒル・コミュニティ」に滞在、絵画コースでアシスタントを務めました。これまでに奈良、京都、東京で個展を重ね、現在は奈良市と京都木津川市を拠点に活動しています。

西川は近年、都市に突然出現する布状のシート、仮囲いに覆われた、建設中、改築中、あるいは解体中の建築物や構造物を題材に、抽象的表現を試みています。シートの向こう側では、短期間のうちに建築物が出現したり、更地に戻されたりと風景が一変します。私たちはそれにより、眼に見えている総ては堅固に安定したものではなく常に変化している、ということに気付かされま す。西川の「シールド・ハウス」の作品は、「万物の流動性」や、「生成と消 滅」、「時間」を表現しようとする試みであり、写実性、再現性から離れ、テー マに相応しい動きのある大胆な筆触で描かれます。

今回は「シールド・ハウス」の作品のなかから、改修工事中の寺社仏閣を描 いた作品を中心に、CADAN有楽町の空間を展示構成致します。西川の活動拠点である奈良や京都には多くの寺社仏閣があり、それらを構成する建築物、伽藍は千年の時を超えて私たちの暮らしを見守ってきました。この場合には変化 するのはシートの内側よりもむしろ外側の世界であるということが、他の 「シールド・ハウス」の作品からの逆転であり、興味深いところです。

CADAN有楽町では、先日のアート大阪で初めて発表された清水寺本堂、法隆寺中門を描いた作品に加え、金峯山寺仁王門、金峯山寺蔵王堂、さらには最新作の薬師寺東塔を描いた作品が展示されます。また、お釈迦さまを表わすとともに宗教的空間を象徴する五色幕をモチーフとする、カーテンを取り扱う新しい展開も見られます。ぜひご高覧ください。

http://www.taguchifineart.com/artists.html